豊臣ハーレム❤『豊臣秀吉、愛と政の合間にて──天下を取ったらハーレムがついてきた件』

本能寺から始める常陸之介寛浩

文字の大きさ
85 / 170
第9章『雲は西へ、風は城下へ』

第八十四話『お濃、夜の屋根で告白未遂』

しおりを挟む
 視察旅の帰路、山間の宿場町に泊まった一行。

 昼の視察と夜の温泉騒動の疲れが重なり、ねねは早々に布団に潜り込んで「明日こそ寝不足ちゃうで」と宣言。
 千鶴は「夜間警備」と称して物見櫓に向かっていた。

 そして秀吉はというと──
 宿の屋根に登って、夜風に当たっていた。

 「……今日は静かやなあ」

 星が澄んでいる。
 墨俣の喧騒とは違う、旅先の夜のしんとした空気。

 そこへ、そっと屋根瓦を踏んで近づく影。

 「……殿下」

 声の主は、お濃だった。

 「なんや、寝たんちゃうんか?」

 「はい。……でも、寝つけませんでした」

 「珍しいな。あんた、意外とよう寝るやん」

 「“よう寝る”と言われたのは初めてです」

 ふたりの笑い声が、夜の屋根に広がる。

 「今日の視察、お見事でした。
 殿下の質問、的確でしたし、記録に残しておくべき技術も押さえていました」

 「おおきにな。……まあ、おかげさんで“混浴記録”も一部あるけどな」

 お濃はくすっと笑って、顔を伏せた。

 「──殿下」

 「ん?」

 「私が、こうして傍にいるのは」

 「ん?」

 「……忠義、だけではありません」

 夜風がふわりと、ふたりの間を撫でた。

 「私は、殿下の笑う顔が好きです。
 殿下が民と話す時の優しさ、政を語る時の真剣さ……それを、ずっと見ていたいと思うんです」

 「お、お濃……?」

 「ですから私、殿下に“仕えたい”のは、忠義だけやない。
 ……それ以上の、想いがあるからで──」

 「殿下ああああああああああ!!!」

 「うわっ、なんや!?」

 突然、下から女中が叫びながら駆け上がってくる。

 「殿下ぁぁぁ! 湯の火が強すぎて、浴槽が沸騰し始めてますぅぅぅ!!!」

 「ま、またかい!? なんでわしの視察旅、毎回“風呂トラブル”あんねん!?」

 「うちのおしの様が“ちょっと熱いくらいのほうが恋も盛り上がります♡”とか……」

 「おしのぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 ◆ ◆ ◆

 再び屋根に戻った時、そこにお濃の姿はなかった。

 代わりに、置き去りにされた髪紐が、夜風に揺れていた。

 「……あいつ、言いかけてたな」

 想いは届きかけて、遮られた。

 “忠義だけやない”

 その続きが、どうしても気になる。

 でも──

 「わし、まだ……答え、出せへんのや」

 それでも確かに。
 誰かの想いを、ひとつずつ、受け止め始めている。

 そう、秀吉はそっと、髪紐を懐にしまった。

 ──風はまだ吹いていた。
 墨俣の男を、また少しだけ、強くするように。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記

糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。 それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。 かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。 ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。 ※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。

米国戦艦大和        太平洋の天使となれ

みにみ
歴史・時代
1945年4月 天一号作戦は作戦の成功見込みが零に等しいとして中止 大和はそのまま柱島沖に係留され8月の終戦を迎える 米国は大和を研究対象として本土に移動 そこで大和の性能に感心するもスクラップ処分することとなる しかし、朝鮮戦争が勃発 大和は合衆国海軍戦艦大和として運用されることとなる

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

処理中です...