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本能寺から始める常陸之介寛浩

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6月/初夏/修学旅行 in 鴨川沿い/夜、カップルが等間隔に座っている土手

ヤンデレ系 「今日だけは隣にいられるね?ううん、大丈夫、最後の日になるなんて思ってないよ。ぜんっぜん」

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 タイトル:『今日だけは隣にいられるね?ううん、大丈夫、最後の日になるなんて思ってないよ。ぜんっぜん』
(舞台:6月/初夏/修学旅行 in 鴨川沿い/夜、カップルが等間隔に座っている土手)

 ねぇ、ほら見て。
 あっちのカップル、手、つないでる。
 ふふ……やっぱり、こういうのって風景になるんだね。
 等間隔で並ぶ鴨川のカップルたち──その一つに、あたしたちも“なれた”んだね。

 ……やっと。

(風が通り抜ける音)

 ううん、別に何もしてないよ?
 ちょっと、班の移動順を変えただけ。
 先生に「○○くん、昨日ちょっと体調悪そうだったんで」って言ったら、信じてくれた。

 だから、あたしたち、偶然じゃなくて──必然なの。
 この場所に、こうして“並んでる”のは。

 ……ねぇ、手、冷たいね。
 あはっ、やっぱ緊張してるのかな?
 大丈夫。今日は、怒らないよ。泣かないし、叫ばない。

 ……ふつうに、隣にいるだけ。
 ただそれだけでいいの。

(間)

 あのね、ずっと夢見てたんだ。
 こうして夜の河原で、制服のままで、あんたの隣にいられるって。

 ほら、髪、濡れてるよ? 湿気のせいかな。
 それとも、さっきのあの子と一緒に歩いてたせい?

 ……ああ、あの子っていうのは、
 今日、あんたのこと呼び出してた女の子。
 “耳元でなにか言ってた”よね。
 あれ、あたし、ちゃんと見てた。

 ううん、大丈夫。
 怒ってないから。

 ──まだは。

(風、やや強くなる)

 ねぇ、覚えてる?
 中一のとき、初めて名前呼ばれた日。
 あんたがうっかりプリント忘れて、後ろから私に「それ見せて」って言ってきた。

 その瞬間──
 私の中で、時間が止まった。

 心臓が、鴨川の流れと反対に逆流して、
 喉がきゅってなって、
 このまま声を出したら──なんか壊れそうで、ずっと黙ってた。

 ねぇ、“あの日から全部”始まったの。

 でも、あんたは気づいてない。
 ずっと、誰かと笑ってて、
 誰にでも優しくて、
 でも私には、当たり前の顔で「おはよう」って言って──
 それが一番、地獄だったんだから。

 ……ううん、今日は怒らないよ?
 言ったでしょ。
 今日は、私にとって──特別な日だから。

 だって、修学旅行ってさ。
 “思い出”になるためにあるんだよね。

 だったら、私のこの気持ちも──
 ちゃんと“思い出”にしなきゃ。

 ……あは、変な話だよね。
 思い出って、ふたりで作るものでしょ?

 でもあたし、
 “片想いのままの修学旅行”なんて、絶対にいやだもん。

 だから、こうして手を繋いで、
 あたしだけじゃない“ふたりの記憶”を作るの。

 あの子が泣いてても、
 明日からの教室が冷たくても、
 そんなの関係ないの。

 今夜、あたしは“彼女”になるの。
 ね? いいでしょ?

 ……なに、その顔。
 え、ちょ、なんで引くの?
 もしかして──怖がってる? 私のこと?

 やだなぁ、冗談でしょ。
 私、こんなに優しくしてるのに。

 ……でも、わかるよ。
 怖いよね、知らない感情ぶつけられたら。
 でもそれ、ずっと“あたしが感じてたこと”なんだよ?

 あんたが、誰かの名前呼ぶたびに、
 誰かと笑うたびに、
 私は、心が裂けそうだった。

 でも、黙ってたの。
 ずっと黙ってたの。
「友達」っていう檻の中で、叫ばないように、我慢してた。

 でも、今日だけは──今日だけは、許して。
 せめて今夜くらい、“好き”って言わせてよ。

 ねぇ、聞いて?
 ──好き。
 だいすき。
 ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、
 誰にも負けないくらい、狂おしいほど、好きだった。

 ねぇ、どうしたら、この想い、伝わるかな。
 手を握って、頬に触れて、それでも足りなかったら──

 キス、してもいい?

(間)

 ……嘘だよ、冗談。
 そんなことしないよ。
 あんたが泣くの、見たくないから。

 ただ、言ってみたかっただけ。
 一度でいいから、恋人みたいな言葉、吐いてみたかっただけ。

(沈黙)

 ねぇ、寒くなってきたね。
 あたし、カーディガン持ってきてるから、貸してあげる。
 あんたは、風邪ひいちゃダメだから。

 ……最後の日になるなんて、思ってないよ。
 ぜんっぜん。

 あした、また隣の席で、あんたはいつも通り「おはよう」って言う。
 私も、笑って「おはよう」って返す。

 だけどその裏側で、
 あたしの心が壊れてても、
 あたしの手首に傷が増えてても、
 あんたは気づかない。

 でも、それでいいの。

 この夜だけが、
 あたしにとっての“現実”だったから。

 ──ありがとう。

 今夜、あんたは、
 あたしの“いちばんの嘘”に付き合ってくれた。

 それだけで、
 明日、ちょっとだけ、生きられる気がするよ。
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