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【神の名を騙る島──南海の隠された禁風俗と、神官戦争編】
第80話『夢魔イゼリア、欲望の支配魔術!』
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「ようこそ、わたくしの愛と欲望の楽園へ──勇者、常盤流星」
その声が響いた瞬間、世界は反転した。
風が止み、音が消え、色が溶けていく。
重力が曖昧になり、足元が浮くような感覚の中で──
流星は、まるで眠るように瞼を閉じた。
次に目を開けたとき、彼はすでに“精神世界”の中にいた。
◆
そこは、まさしく“理想の風俗館”だった。
黄金に輝く回廊、羽毛のようなベッド、甘やかすような香の漂う空気。
そして、四方を囲むのは──かつて心を奪われた“伝説の風俗嬢”たち。
「お帰りなさい、流星さま♡」
「あなたを癒すために、私たちはここにいるのよ」
「今日は、どのサービスにしますか? 特別メニュー、揃ってます♡」
しなやかな身体、美しすぎる曲線、完璧な笑顔。
彼の過去の記憶に刻まれた「理想の女性たち」が、実体を持ってそこにいた。
「う、うおお……これは……!」
煩悩が爆発しかけた。
流星の頭の中は、理性と欲望がせめぎ合う戦場と化す。
“このまま流されてもいいのでは”──そんな甘い囁きが、耳の奥で響く。
しかし。
──お前の煩悩こそ、私の糧。
その声だけは、甘さを含んでいなかった。
氷のように冷たく、深淵のように黒い声。
流星の周囲に現れたのは、夢魔・イゼリアの“真の姿”。
「この空間は、あなたの欲望を反映する世界。
その欲望が膨れ上がれば膨れ上がるほど、私は満たされるの」
艶やかな指が、空中で舞う。
瞬間、風俗嬢たちがさらに露出を増し、ベッドが揺れ始める。
「煩悩に忠実な男よ。あなたこそ、最も上質な“供物”なの」
流星は膝をついた。
呼吸が荒れ、頭がぼうっとして、目の前の“理想”に視界が曇る。
(ダメだ……これは……抗えない……)
そのときだった。
──「流星、聞こえる!? お願い、目を覚ましてッ!!」
かすかに、現実の声が届いた。
それは──リリアの声。
すぐに、アリシア、ヴァネッサ、ミレーユの声も重なる。
「しっかりして! あんた、そんな軽い男じゃないでしょ!」
「誘惑に負けるあなたは、見たくないの!」
「帰ってきなさい……! 煩悩王でも、あたしたちの仲間でしょ!」
「あなたの剣は、ただの欲望じゃない。現実を守る力よ……!」
その声が、空間を貫いた。
風が吹いた。
イゼリアの笑顔が、わずかに歪む。
「なんてこと……この空間は完全な“快楽封印陣”のはず……!」
流星の目が開かれる。
瞳の奥に、確かな光が戻る。
「はっ……はああああっ……!!」
両手で顔を叩く。
幻の風俗嬢たちが悲しげに手を伸ばすが──その幻は、彼の意志で霧のように消えていった。
「たしかに……オレは風俗が大好きだ。癒しも快楽も、めちゃくちゃ好きだ!」
流星が立ち上がる。
「でも……!」
バッと手を前に突き出すと、幻のベッドが砕け散る。
「本当に好きなのは、俺が選んだ風俗で! 俺が決めた相手と! 現実の中で生きて感じる“愛”と“快楽”なんだよ!!」
その叫びに、空間が揺れる。
天井が崩れ、床が裂け、全ての“理想”が灰のように崩壊していく。
◆
現実世界──神殿の中心。
祭壇の上で、流星の身体がピクリと動いた。
「戻ってきた……!」
リリアの叫びとともに、彼の瞼が開かれる。
「──ただいま……」
流星が起き上がると同時に、イゼリアが呻き声をあげた。
「この私が……心の世界で……敗れた……!?」
「悪いな……“理想”ってのは、自分で築くもんなんだよ……!」
流星が剣を構える。
後方からリリアたちも駆け寄り、神殿はついに最終戦へと突入する──!
(つづく)
その声が響いた瞬間、世界は反転した。
風が止み、音が消え、色が溶けていく。
重力が曖昧になり、足元が浮くような感覚の中で──
流星は、まるで眠るように瞼を閉じた。
次に目を開けたとき、彼はすでに“精神世界”の中にいた。
◆
そこは、まさしく“理想の風俗館”だった。
黄金に輝く回廊、羽毛のようなベッド、甘やかすような香の漂う空気。
そして、四方を囲むのは──かつて心を奪われた“伝説の風俗嬢”たち。
「お帰りなさい、流星さま♡」
「あなたを癒すために、私たちはここにいるのよ」
「今日は、どのサービスにしますか? 特別メニュー、揃ってます♡」
しなやかな身体、美しすぎる曲線、完璧な笑顔。
彼の過去の記憶に刻まれた「理想の女性たち」が、実体を持ってそこにいた。
「う、うおお……これは……!」
煩悩が爆発しかけた。
流星の頭の中は、理性と欲望がせめぎ合う戦場と化す。
“このまま流されてもいいのでは”──そんな甘い囁きが、耳の奥で響く。
しかし。
──お前の煩悩こそ、私の糧。
その声だけは、甘さを含んでいなかった。
氷のように冷たく、深淵のように黒い声。
流星の周囲に現れたのは、夢魔・イゼリアの“真の姿”。
「この空間は、あなたの欲望を反映する世界。
その欲望が膨れ上がれば膨れ上がるほど、私は満たされるの」
艶やかな指が、空中で舞う。
瞬間、風俗嬢たちがさらに露出を増し、ベッドが揺れ始める。
「煩悩に忠実な男よ。あなたこそ、最も上質な“供物”なの」
流星は膝をついた。
呼吸が荒れ、頭がぼうっとして、目の前の“理想”に視界が曇る。
(ダメだ……これは……抗えない……)
そのときだった。
──「流星、聞こえる!? お願い、目を覚ましてッ!!」
かすかに、現実の声が届いた。
それは──リリアの声。
すぐに、アリシア、ヴァネッサ、ミレーユの声も重なる。
「しっかりして! あんた、そんな軽い男じゃないでしょ!」
「誘惑に負けるあなたは、見たくないの!」
「帰ってきなさい……! 煩悩王でも、あたしたちの仲間でしょ!」
「あなたの剣は、ただの欲望じゃない。現実を守る力よ……!」
その声が、空間を貫いた。
風が吹いた。
イゼリアの笑顔が、わずかに歪む。
「なんてこと……この空間は完全な“快楽封印陣”のはず……!」
流星の目が開かれる。
瞳の奥に、確かな光が戻る。
「はっ……はああああっ……!!」
両手で顔を叩く。
幻の風俗嬢たちが悲しげに手を伸ばすが──その幻は、彼の意志で霧のように消えていった。
「たしかに……オレは風俗が大好きだ。癒しも快楽も、めちゃくちゃ好きだ!」
流星が立ち上がる。
「でも……!」
バッと手を前に突き出すと、幻のベッドが砕け散る。
「本当に好きなのは、俺が選んだ風俗で! 俺が決めた相手と! 現実の中で生きて感じる“愛”と“快楽”なんだよ!!」
その叫びに、空間が揺れる。
天井が崩れ、床が裂け、全ての“理想”が灰のように崩壊していく。
◆
現実世界──神殿の中心。
祭壇の上で、流星の身体がピクリと動いた。
「戻ってきた……!」
リリアの叫びとともに、彼の瞼が開かれる。
「──ただいま……」
流星が起き上がると同時に、イゼリアが呻き声をあげた。
「この私が……心の世界で……敗れた……!?」
「悪いな……“理想”ってのは、自分で築くもんなんだよ……!」
流星が剣を構える。
後方からリリアたちも駆け寄り、神殿はついに最終戦へと突入する──!
(つづく)
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