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『癒しとは──膀胱との闘いの果てにあるもの』
第164話『地獄の渋滞、到来』
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「ん~~、ビール美味かったー!」
レイナがご機嫌で座席に背中を預け、空になった缶をテーブルに置く。
「うん……最高だった……今のところは……」
ナナがどこか遠い目でつぶやいた。
バスはすでに高速道路に入っていた。
──そして、動いていなかった。
『前方で発生した交通事故の影響により、通行車両が30kmにわたり滞留しております──』
車内のテレビモニターから流れたテロップが、ヒロインたちの心を凍らせる。
「さ、さんじゅっキロ……」
「なにそれ……そんなの、もはや距離じゃなくて、祈りの長さじゃん……!」
誰かがそう叫ぶのと同時に、車内の空気が張り詰める。
「う……」
「ちょ、ちょっと……なんか……」
「やばい……かも……」
静かに、確実に、あの“敵”がやってきていた。
そう──尿意である。
ハルカは、こっそり膝を閉じた。
ミキはストローの先を見つめながら、「吸ったら負けな気がする……」とつぶやく。
サバナは、窓を見ながら「草むらあるじゃん、あそこ行けば……」とボソッと言って、全員に首を掴まれる。
「だめ! 大人だから! ここ日本だから!」
「文明のルールを学んで!!」
「お願いだから、野生に還らないで!!」
「えー? おしっこは自然の循環だってパパが──」
「パパ黙ってて!!!」
悲鳴まじりの総ツッコミにより、なんとかサバナは落ち着いた。が。
「……あー、やっべぇ……」
ミキがジワッと汗をにじませながら言う。
「アタシ、ビールに加えて炭酸水も飲んだわ……」
「え、なにそれ自爆?」
「いや、冷えてて美味しそうだったから……」
「やめてよ! 人柱みたいなこと言わないでよ!」
レイナは膝を抱え、座席で上下に揺れている。
「しかもこのバス、トイレついてないの超絶ミステイク~~~!!」
「そこはさぁ! 旅行会社さぁ!! つけておこうよぉ!!」
「いや、バス会社だろ!!」
そんな中、エミリは静かにスマホを操作していた。
「現在の車速、時速5km。おそらくあと2時間はこの状態が続きますね」
「お前だけ現実を分析するなあぁぁぁ!!!」
感情と理性がぶつかり合いながら、車内はカオスと化していく。
と、そのとき。
「ふっふっふ……みんな、安心しろ」
レイナがにやっと笑った。
「アタシ、今回の旅のために──最強のアイテムを持ってきたんだぜ……」
「……まさか」
「やめて、やめてよレイナ、そのキラキラした目……」
「ジャジャーン☆ 海外通販で買った“女子用立ちショングッズver.2”!」
「またかーーーーー!!!」
「なんで旅に持ってくるの!? どこで使う気なの!? 今!?」
「この状況で使わずいつ使うのよ!」
「バスの中じゃ無理でしょ!!」
「でも、こう……窓から外に……」
「や め て !!!」
混乱、焦燥、羞恥、暴走。
それぞれの感情が錯綜しながら、誰もが膀胱に静かなる戦慄を感じていた。
「……っていうかさ」
ミキが、ふっと笑いながら言った。
「この感じ、なんか……青春だよな」
──数秒の沈黙。
「「「「ちがうわーーーーーーーーーー!!!!」」」」
全員が、魂の限界ボリュームで否定した。
その絶叫が、高速道路に鳴り響いた。
──温泉旅行、癒しのはずが、
まだ誰一人として“癒し”の「い」の字すら得られていなかった。
(つづく)
レイナがご機嫌で座席に背中を預け、空になった缶をテーブルに置く。
「うん……最高だった……今のところは……」
ナナがどこか遠い目でつぶやいた。
バスはすでに高速道路に入っていた。
──そして、動いていなかった。
『前方で発生した交通事故の影響により、通行車両が30kmにわたり滞留しております──』
車内のテレビモニターから流れたテロップが、ヒロインたちの心を凍らせる。
「さ、さんじゅっキロ……」
「なにそれ……そんなの、もはや距離じゃなくて、祈りの長さじゃん……!」
誰かがそう叫ぶのと同時に、車内の空気が張り詰める。
「う……」
「ちょ、ちょっと……なんか……」
「やばい……かも……」
静かに、確実に、あの“敵”がやってきていた。
そう──尿意である。
ハルカは、こっそり膝を閉じた。
ミキはストローの先を見つめながら、「吸ったら負けな気がする……」とつぶやく。
サバナは、窓を見ながら「草むらあるじゃん、あそこ行けば……」とボソッと言って、全員に首を掴まれる。
「だめ! 大人だから! ここ日本だから!」
「文明のルールを学んで!!」
「お願いだから、野生に還らないで!!」
「えー? おしっこは自然の循環だってパパが──」
「パパ黙ってて!!!」
悲鳴まじりの総ツッコミにより、なんとかサバナは落ち着いた。が。
「……あー、やっべぇ……」
ミキがジワッと汗をにじませながら言う。
「アタシ、ビールに加えて炭酸水も飲んだわ……」
「え、なにそれ自爆?」
「いや、冷えてて美味しそうだったから……」
「やめてよ! 人柱みたいなこと言わないでよ!」
レイナは膝を抱え、座席で上下に揺れている。
「しかもこのバス、トイレついてないの超絶ミステイク~~~!!」
「そこはさぁ! 旅行会社さぁ!! つけておこうよぉ!!」
「いや、バス会社だろ!!」
そんな中、エミリは静かにスマホを操作していた。
「現在の車速、時速5km。おそらくあと2時間はこの状態が続きますね」
「お前だけ現実を分析するなあぁぁぁ!!!」
感情と理性がぶつかり合いながら、車内はカオスと化していく。
と、そのとき。
「ふっふっふ……みんな、安心しろ」
レイナがにやっと笑った。
「アタシ、今回の旅のために──最強のアイテムを持ってきたんだぜ……」
「……まさか」
「やめて、やめてよレイナ、そのキラキラした目……」
「ジャジャーン☆ 海外通販で買った“女子用立ちショングッズver.2”!」
「またかーーーーー!!!」
「なんで旅に持ってくるの!? どこで使う気なの!? 今!?」
「この状況で使わずいつ使うのよ!」
「バスの中じゃ無理でしょ!!」
「でも、こう……窓から外に……」
「や め て !!!」
混乱、焦燥、羞恥、暴走。
それぞれの感情が錯綜しながら、誰もが膀胱に静かなる戦慄を感じていた。
「……っていうかさ」
ミキが、ふっと笑いながら言った。
「この感じ、なんか……青春だよな」
──数秒の沈黙。
「「「「ちがうわーーーーーーーーーー!!!!」」」」
全員が、魂の限界ボリュームで否定した。
その絶叫が、高速道路に鳴り響いた。
──温泉旅行、癒しのはずが、
まだ誰一人として“癒し”の「い」の字すら得られていなかった。
(つづく)
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