『おしっこパニックで恋が始まる!?』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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『温泉トラブルと、心のおしっこ我慢合宿!?』

第171話『温泉卓球、膀胱を揺らす!?』

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「さーて! 温泉といえばやっぱこれっしょ!」

 湯上がりの髪をタオルでくしゃくしゃにしながら、レイナ・クロフォードが片手にラケットを握って立ち上がる。

「卓球大会、開催じゃーっ☆」

 彼女のハイテンションな叫びに、旅館の広間がざわめいた。

 ここは旅館の娯楽室──昭和レトロな空間に、年季の入った卓球台が一台。天井の蛍光灯は白く唸り、少しだけ湿った畳の匂いが残る。

「うわっ、本当にあるんだ……温泉旅館で卓球って、ギャグじゃなかったんだ」

 ナナが感心したように呟き、ミキはタオルを肩に掛けたまま、

「やるやるーっ! でもラケット持つと、戦闘民族の血が騒ぐから注意な!」

 と笑った。

 ハルカは少し引き気味に笑いながら、畳の端に腰を下ろす。

「えー……やるの? まだ汗かいたら、また温泉入りたくなるじゃん……」

「だからこそ、なのよ!」とレイナは満面の笑みで指を指す。

「温泉で温めて、卓球で揺らして、また風呂で流す! この三段活用が最高なの!!」

「どこの膀胱虐待ルーティンだよ……」

 エミリが小声でそうツッコミを入れると、ナナが吹き出した。

「いやマジでさ、これ……意外とヤバいやつじゃない? 湯冷めして、しかも今ビール飲んだばっか……」

「さっきからお腹のあたり、すこーし冷えてる感じするんだよね……」

 と、ミキがちょっと脚をすり合わせながら苦笑する。

 だが、時すでに遅し。レイナとサバナは勝手にトーナメント表を描き始めていた。

「よーし! 第一試合、レイナ vs ミキ!」

「ふっふっふ、アタシの“バイブレーション・カット”を喰らうがいい!」

「ネーミングがヤバいんだけど!!」

 ◆ ◆ ◆

 そして始まる、浴衣卓球大会──

 卓球台の周囲に女子たちがキャーキャー叫びながら応援し、打ち返されるピンポン玉が軽快に飛び交う。

 が、その足元では──

「わっ……ちょ、ジャンプすると……っ」

「ぅぅ……わ、笑いすぎた、ちょっとヤバいかも……」

「ちょっとまって、あっ……今、膀胱が“コツン”って音立てた……!」

 浴衣での卓球は、意外な難関だった。

 ジャンプすると帯がゆるむし、足さばきは制限されるし、何より──膀胱がグラつく!

「これ、リアル膀胱バトルじゃん☆」とレイナが叫べば、

「いやアタシ今、台の前で漏れるかと思ったからな!!」とミキが本気で吠え返す。

 ハルカは、ラケットを手にしたまま体をくの字に曲げた。

「笑ってる場合じゃないよこれ……いやもう、“揺れ”がダイレクトに来る……!」

「しかもさ、ここトイレちょっと遠いのよね。裏の廊下まで出て……」

 ナナが小声でつぶやくと、エミリが真顔で首を振る。

「すでに私は、体内の温泉が出口を求めて膨張している感覚です」

「うわ、言い方が理系! でも超わかる!」

 ◆ ◆ ◆

 第三試合──ハルカ vs サバナ。

 浴衣の袖が邪魔で、ラケットがまともに振れない。

「ぬわぁっ、ぐにゃってなる! 腕が袖ごとしなる!!」

「ハルカ、がんばれー!」

「負けたらペナルティだぞー!」

 誰が決めたのか、負けた者は“次の風呂の先頭湯もみ役”になるという罰ゲームが設定されていた。

「風呂に飛び込む前に、お湯かき回す係とか……なにその拷問?」

「腰にくるよね、絶対……ていうか下腹部に……」

 そして、その下腹部が限界に近づいていた。

「……っ、ちょ、待って、これ以上跳べない……!」

 ハルカの顔から一気に血の気が引く。

「……サバナ、もう勝っていい、投げる、膀胱的に」

「え、まじ? じゃあ本気でいくね!」

 バシュッ!!

 音を立てて、ラリーが決まる。

「よっしゃーっ!」

「くっ……身体じゃなくて、膀胱が負けたぁぁ……!!」

 ガクッと膝を折ったハルカに、ミキが駆け寄る。

「大丈夫? ……って、やば、アタシも近い!」

「私たち、あれだね……青春というより、もう膀胱縛りの戦士たちだよ……」

 そして、ふと。ミキが口を開く。

「ねぇ……“膀胱が揺れる青春”って、なんか文学っぽくない?」

「しないわ!!」

 全員から全力のツッコミが飛んだ。

 ◆ ◆ ◆

 卓球大会の優勝者は、まさかのレイナだった。

「ふっふーん、やっぱり膀胱コントロールは鍛えないと☆」

 勝ち誇るその姿に、ハルカは無言で拳を握った。

(覚えてろ……この借りは、次の“お風呂トーク”で返すからな……!)

 そう、温泉旅館の夜は──まだまだ長いのだった。

(つづく)

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