『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩

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第6章 闇落ちヒロイン、愛と執着の迷路

【第47話『新たな転校生──静かな闇の気配』】

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「えー、今日からみなさんのクラスに新しい仲間が加わります」

 担任の明るい声と共に、
 その子は教室に入ってきた。

 一歩、二歩。
 その足取りは、まるで影のように静かだった。

 黒髪はまっすぐで艶やか、
 制服の着こなしは端正で隙がなく、
 なにより、姿勢が美しかった。

 そして顔を上げたその瞬間──

 教室の空気が変わった。

「……っ」

 誰かが小さく息を呑んだ。

 整った顔立ち。
 雪のように白い肌。
 大きな瞳は、どこか悲しげに揺れていた。

「黒崎澪(くろさき・みお)です。よろしくお願いします」

 淡々としたその声は、どこか現実感がなかった。

 拍手が起こる。
 でも、誰もがその姿に目を奪われていて、
 しばらく教室はざわざわしていた。

「天使すぎん?」「透明感すご……」「モデルとかやってた?」

 女子も男子も、口々にざわめいた。

 あまりに完璧で、逆に近寄りがたい。
 そんな、絵に描いたような“転校生”。

「席は、えーと……利家の隣ね」

「……えっ?」

 私の心が、ピクリと揺れた。

(利家お兄ちゃんの隣……?)

 澪は、静かに歩いて席についた。

 その間、一言も発しない。

 でも、
 その静けさこそが、どこか妙に“印象”に残る。

 まるで、教室の空気を吸い込んでしまうような存在感。

 ──そして。

 私は気づいた。

 澪が、一度も“誰の目も見ていない”ことに。

 でも。

 利家お兄ちゃんにだけ、
 一瞬、ちらりと視線を向けた。

 ほんの数秒。
 でも確かに、見ていた。

 そして、微かに微笑んだ──

 それは。

「──お兄ちゃん、知ってる人……なの?」

 私は、思わず声をかけた。

 利家は、いつもの調子で肩をすくめた。

「いやー、さぁ……初対面、だと思うけどな?」

 でも、
 お兄ちゃんの声には、微妙な“間”があった。

(……嘘だ)

 なぜかそう思った。

 お兄ちゃんは澪を“知ってる”。

 でも、それを“言いたくない”。

 そんな空気が、ふわりと漂っていた。

 放課後、私はひよりとこころに話しかけた。

「ねぇ、澪さんって……なんか変じゃなかった?」

「観察対象としては非常に興味深いね」

 ひよりは即答した。

「無駄な動きが一切ない。あと、笑顔のときだけ瞳孔が動かない」

「うわ、なんかホラーっぽいこと言わないで……」

 こころが引きつっていた。

 私は腕を組んだ。

(“完璧すぎる”って、怖い)

 可愛い。
 優しい。
 静かで、悪意も感じない。

 でも、
 なぜだろう。

 胸の奥で、
 何かがずっと“ざわついて”いる。

 ──私は、
 何を怖がってるんだろう。

 利家お兄ちゃんの過去?
 知らない顔?
 それとも──

 この完璧な少女が、
 なぜか“自分と同じ場所にいたくない”と感じる、この感情?

 その答えは、
 まだわからなかった。

 でも、
 私の直感は、静かに告げていた。

 この子は、
 ただの転校生じゃない。

 何かを抱えている。

 それは、
 私たちの「青春」を、確実に揺さぶる何か──

 始まったばかりの第6章。
 その空気は、確かに“光”だけじゃなかった。

 影が、じわりと忍び寄っていた。

 ──つづく。

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