『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩

文字の大きさ
78 / 101
第8章 推しの向こうにいるあなたへ──VTuber沼と恋と、妹の覚悟

第76話『開幕、恋と推しの文化祭!』

しおりを挟む
 文化祭当日──。
 朝から校舎はざわめきと熱気に包まれていた。

「はいそこ!準備できてない看板、急げーっ!」

「こっちの展示、照明が点かないんですけどー!?」

「かっ……花火師がまだ来てません!」

 ──まるで戦場。
 あちこちで叫びと走りが交錯し、非日常の空気が満ちる。
 教室、廊下、体育館、屋上……そのすべてが“祭”の色に染まり、
 いつもと違う制服姿の少女たちは、まるで舞台衣装をまとった登場人物だった。

「やっべ、マジで文化祭って一大イベントだな……」

 放送室の前で、利家は額の汗を拭きながら深いため息をついた。
 生徒会の助っ人として、今日一日は全体進行やアナウンスの担当を任されている。
 あちこちでトラブルは起こるし、時間通りに進まないし──でも、それでも不思議と嫌じゃなかった。

(これが、“青春”ってやつなのかねぇ……)

 ぼやくように呟いて、ふと視線を上げる。
 その瞬間、渡り廊下を歩く彼女の姿が目に入った。

 英梨。

 ──少し髪を巻いて、文化祭特製のクラスTシャツを肩にかけた彼女は、
 いつもよりずっと、大人っぽく、そして決意に満ちた目をしていた。

(……なんだ、あの目)

 胸がわずかにざわめいた。

 一方、英梨もまた、兄の姿を目で追っていた。

(動いてる……あの兄ちゃんが、汗かいて、生徒会の仕事して……)

 いつもなら、部屋に引きこもって推し活三昧。
 VTuberの切り抜きばかり観て、夜中にポスター張り替えてるような男が──
 今は誰よりも“現実”の中で動いている。

(だからこそ、今日……わたしは、ちゃんと“現実の気持ち”を伝えるって決めたんだ)

「今日、わたし……言うって、決めたんだから」

 胸元を押さえ、英梨はそっとつぶやく。

 教室展示では、妹連合軍が主導する「カフェ&占い体験」が行列を作っていた。
 陽葵はギャルメイド姿でテンションMAX、ひよりは真顔で“恋愛偏差値鑑定”を担当。
 紗季は冷静な接客で爆モテ中。ここなは制服のまま「アニメ顔パネル」に埋もれて写真撮影対応。

「あれ!?利家先輩の妹さんって、ここの英梨ちゃん?マジ似てる!」

「写真、撮っていいすか!?すっげー姉妹感!」

(妹です……!が、推しでもあります……!)

 英梨は笑顔を貼りつけたまま、心の中で叫んでいた。

(バカ兄!なんでアタシまで“看板妹”に仕立てられてるのよ……!)

 しかし、客の笑顔の中で、英梨は少しずつ落ち着いていった。
 兄は文化祭の“司令塔”、自分は“クラスの顔”。
 同じ場に立ち、違う役割を持っていても、今日は並んで“青春”している。

(だからこそ……言いたい)

 その日の午後。

 放送室では、利家がマイクの調整をしていた。

「──次のステージは、3年A組による演劇『君に捧げる銀河』です。準備が整い次第、体育館へお越しください」

 スピーカーから自分の声が流れるたび、変な汗が出る。
 舞台袖に立つ紗季が、手を振ってきた。
 演劇の主役を務める彼女の目は、どこか覚悟を宿していた。

(あの目……まさか)

 嫌な予感がよぎる。だが、それ以上に胸が騒いだ。

(なにか、始まる気がする──)

 夕刻。校内が少し落ち着いた頃。

 英梨は、空いた廊下の窓辺に立っていた。
 校庭から聞こえる歓声、焼きそばの香り、ざわめき。
 それらすべてが、自分の鼓動とリンクしている気がする。

「兄ちゃん……」

 目を細めて、放送室に駆け込んでいく兄の背を見つめた。
 心臓が鳴っている。
 まるで今、この瞬間が、物語の最終章の冒頭であるかのように。

「今日、全部言う」

 震える足を止めない。
 少女の恋と、青春と、叫びのすべてが──今、始まろうとしていた。

 ──つづく。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

善意一〇〇%の金髪ギャル~彼女を交通事故から救ったら感謝とか同情とか罪悪感を抱えられ俺にかまってくるようになりました~

みずがめ
青春
高校入学前、俺は車に撥ねられそうになっている女性を助けた。そこまではよかったけど、代わりに俺が交通事故に遭ってしまい入院するはめになった。 入学式当日。未だに入院中の俺は高校生活のスタートダッシュに失敗したと落ち込む。 そこへ現れたのは縁もゆかりもないと思っていた金髪ギャルであった。しかし彼女こそ俺が事故から助けた少女だったのだ。 「助けてくれた、お礼……したいし」 苦手な金髪ギャルだろうが、恥じらう乙女の前に健全な男子が逆らえるわけがなかった。 こうして始まった俺と金髪ギャルの関係は、なんやかんやあって(本編にて)ハッピーエンドへと向かっていくのであった。 表紙絵は、あっきコタロウさんのフリーイラストです。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

処理中です...