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第8章 推しの向こうにいるあなたへ──VTuber沼と恋と、妹の覚悟
第76話『開幕、恋と推しの文化祭!』
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文化祭当日──。
朝から校舎はざわめきと熱気に包まれていた。
「はいそこ!準備できてない看板、急げーっ!」
「こっちの展示、照明が点かないんですけどー!?」
「かっ……花火師がまだ来てません!」
──まるで戦場。
あちこちで叫びと走りが交錯し、非日常の空気が満ちる。
教室、廊下、体育館、屋上……そのすべてが“祭”の色に染まり、
いつもと違う制服姿の少女たちは、まるで舞台衣装をまとった登場人物だった。
「やっべ、マジで文化祭って一大イベントだな……」
放送室の前で、利家は額の汗を拭きながら深いため息をついた。
生徒会の助っ人として、今日一日は全体進行やアナウンスの担当を任されている。
あちこちでトラブルは起こるし、時間通りに進まないし──でも、それでも不思議と嫌じゃなかった。
(これが、“青春”ってやつなのかねぇ……)
ぼやくように呟いて、ふと視線を上げる。
その瞬間、渡り廊下を歩く彼女の姿が目に入った。
英梨。
──少し髪を巻いて、文化祭特製のクラスTシャツを肩にかけた彼女は、
いつもよりずっと、大人っぽく、そして決意に満ちた目をしていた。
(……なんだ、あの目)
胸がわずかにざわめいた。
一方、英梨もまた、兄の姿を目で追っていた。
(動いてる……あの兄ちゃんが、汗かいて、生徒会の仕事して……)
いつもなら、部屋に引きこもって推し活三昧。
VTuberの切り抜きばかり観て、夜中にポスター張り替えてるような男が──
今は誰よりも“現実”の中で動いている。
(だからこそ、今日……わたしは、ちゃんと“現実の気持ち”を伝えるって決めたんだ)
「今日、わたし……言うって、決めたんだから」
胸元を押さえ、英梨はそっとつぶやく。
教室展示では、妹連合軍が主導する「カフェ&占い体験」が行列を作っていた。
陽葵はギャルメイド姿でテンションMAX、ひよりは真顔で“恋愛偏差値鑑定”を担当。
紗季は冷静な接客で爆モテ中。ここなは制服のまま「アニメ顔パネル」に埋もれて写真撮影対応。
「あれ!?利家先輩の妹さんって、ここの英梨ちゃん?マジ似てる!」
「写真、撮っていいすか!?すっげー姉妹感!」
(妹です……!が、推しでもあります……!)
英梨は笑顔を貼りつけたまま、心の中で叫んでいた。
(バカ兄!なんでアタシまで“看板妹”に仕立てられてるのよ……!)
しかし、客の笑顔の中で、英梨は少しずつ落ち着いていった。
兄は文化祭の“司令塔”、自分は“クラスの顔”。
同じ場に立ち、違う役割を持っていても、今日は並んで“青春”している。
(だからこそ……言いたい)
その日の午後。
放送室では、利家がマイクの調整をしていた。
「──次のステージは、3年A組による演劇『君に捧げる銀河』です。準備が整い次第、体育館へお越しください」
スピーカーから自分の声が流れるたび、変な汗が出る。
舞台袖に立つ紗季が、手を振ってきた。
演劇の主役を務める彼女の目は、どこか覚悟を宿していた。
(あの目……まさか)
嫌な予感がよぎる。だが、それ以上に胸が騒いだ。
(なにか、始まる気がする──)
夕刻。校内が少し落ち着いた頃。
英梨は、空いた廊下の窓辺に立っていた。
校庭から聞こえる歓声、焼きそばの香り、ざわめき。
それらすべてが、自分の鼓動とリンクしている気がする。
「兄ちゃん……」
目を細めて、放送室に駆け込んでいく兄の背を見つめた。
心臓が鳴っている。
まるで今、この瞬間が、物語の最終章の冒頭であるかのように。
「今日、全部言う」
震える足を止めない。
少女の恋と、青春と、叫びのすべてが──今、始まろうとしていた。
──つづく。
朝から校舎はざわめきと熱気に包まれていた。
「はいそこ!準備できてない看板、急げーっ!」
「こっちの展示、照明が点かないんですけどー!?」
「かっ……花火師がまだ来てません!」
──まるで戦場。
あちこちで叫びと走りが交錯し、非日常の空気が満ちる。
教室、廊下、体育館、屋上……そのすべてが“祭”の色に染まり、
いつもと違う制服姿の少女たちは、まるで舞台衣装をまとった登場人物だった。
「やっべ、マジで文化祭って一大イベントだな……」
放送室の前で、利家は額の汗を拭きながら深いため息をついた。
生徒会の助っ人として、今日一日は全体進行やアナウンスの担当を任されている。
あちこちでトラブルは起こるし、時間通りに進まないし──でも、それでも不思議と嫌じゃなかった。
(これが、“青春”ってやつなのかねぇ……)
ぼやくように呟いて、ふと視線を上げる。
その瞬間、渡り廊下を歩く彼女の姿が目に入った。
英梨。
──少し髪を巻いて、文化祭特製のクラスTシャツを肩にかけた彼女は、
いつもよりずっと、大人っぽく、そして決意に満ちた目をしていた。
(……なんだ、あの目)
胸がわずかにざわめいた。
一方、英梨もまた、兄の姿を目で追っていた。
(動いてる……あの兄ちゃんが、汗かいて、生徒会の仕事して……)
いつもなら、部屋に引きこもって推し活三昧。
VTuberの切り抜きばかり観て、夜中にポスター張り替えてるような男が──
今は誰よりも“現実”の中で動いている。
(だからこそ、今日……わたしは、ちゃんと“現実の気持ち”を伝えるって決めたんだ)
「今日、わたし……言うって、決めたんだから」
胸元を押さえ、英梨はそっとつぶやく。
教室展示では、妹連合軍が主導する「カフェ&占い体験」が行列を作っていた。
陽葵はギャルメイド姿でテンションMAX、ひよりは真顔で“恋愛偏差値鑑定”を担当。
紗季は冷静な接客で爆モテ中。ここなは制服のまま「アニメ顔パネル」に埋もれて写真撮影対応。
「あれ!?利家先輩の妹さんって、ここの英梨ちゃん?マジ似てる!」
「写真、撮っていいすか!?すっげー姉妹感!」
(妹です……!が、推しでもあります……!)
英梨は笑顔を貼りつけたまま、心の中で叫んでいた。
(バカ兄!なんでアタシまで“看板妹”に仕立てられてるのよ……!)
しかし、客の笑顔の中で、英梨は少しずつ落ち着いていった。
兄は文化祭の“司令塔”、自分は“クラスの顔”。
同じ場に立ち、違う役割を持っていても、今日は並んで“青春”している。
(だからこそ……言いたい)
その日の午後。
放送室では、利家がマイクの調整をしていた。
「──次のステージは、3年A組による演劇『君に捧げる銀河』です。準備が整い次第、体育館へお越しください」
スピーカーから自分の声が流れるたび、変な汗が出る。
舞台袖に立つ紗季が、手を振ってきた。
演劇の主役を務める彼女の目は、どこか覚悟を宿していた。
(あの目……まさか)
嫌な予感がよぎる。だが、それ以上に胸が騒いだ。
(なにか、始まる気がする──)
夕刻。校内が少し落ち着いた頃。
英梨は、空いた廊下の窓辺に立っていた。
校庭から聞こえる歓声、焼きそばの香り、ざわめき。
それらすべてが、自分の鼓動とリンクしている気がする。
「兄ちゃん……」
目を細めて、放送室に駆け込んでいく兄の背を見つめた。
心臓が鳴っている。
まるで今、この瞬間が、物語の最終章の冒頭であるかのように。
「今日、全部言う」
震える足を止めない。
少女の恋と、青春と、叫びのすべてが──今、始まろうとしていた。
──つづく。
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