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第二章『アニメ化騒動編』

第21話 『アニメ化決定──ラノベ作家、バレる』

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 ──夢が叶うとき、人は、泣くという。

 だが、俺は──

 

「……まって、え? アニメ化……?」

 

 スマホを握ったまま、泣くどころか震えていた。

 

 電話の主は、俺の担当編集・渋谷。

 あの、いつもサブカルTシャツ着て原稿の催促してくるあの男が──

 

「おめでとう、TVアニメ化、正式決定だ!!」

 

 と、まさかの爆弾報告を投下してきたのだった。

 

「ちょ、ちょっと、冗談でしょ!? 俺の作品って、まだ5巻だよ!? 安定の低予算ラノベだよ!?
 ファンタジーでもバトルでもなく、青春ラブコメだよ!? パンツと妹で構成されてるやつだよ!?」

 

「逆にいまラブコメが来てるんだよ! 妹とパンツで勝負する時代だって、現場が言ってる!」

 

「どんな現場だよッッ!!!」

 

 渋谷は興奮していた。
 そして俺は、現実に頭を抱えていた。

 

 だが、その一方で──

 心のどこかで、確かに震えていた。

 夢だった。

 子供のころ、画面の向こうで動く“ヒロイン”に憧れて、
 ラノベを書き始めて、
 どうしても“青春ラブコメ”だけは上手くいかなかった。

 それが、いま──

 

「……アニメに、なるんだ……」

 

 パソコンを見つめながら、俺は小さく呟いた。

 思わず、目元が熱くなる。

 ──けれど。

 その喜びは、30秒で終わった。

 

 

 ***

 

 ガチャリ。

 部屋のドアが開いた。

 

「お兄ちゃん、今“アニメ化”って言った?」

 

 そこに立っていたのは──妹・幸香。

 

「えっ? いや、いやいやいや、なんの話かな? 今のはアニメ……化粧の話? “アニメ風メイク”とか、あるよね?」

 

「ふぅん……じゃあ、この資料は?」

 

 幸香が差し出したのは──印刷されたメール画面。

 

【件名:TVアニメ企画進行資料(極秘)】

 

「机の上に置きっぱなしだったよ♥」

 

「お前、また俺の部屋漁ったなァァァァ!!!!」

 

 ──だが、それは、序章に過ぎなかった。

 

 

 ***

 

 数十分後。

 俺の部屋のちゃぶ台を囲むヒロインたち。

 ──歩美(幼なじみ)
 ──舞香(転校生)
 ──玲奈(図書委員)
 ──そして爆心地の妹・幸香

 

 俺は正座させられていた。

 その前に置かれた紙。

 タイトル:
【祝・アニメ化おめでとう──が、説明してもらおうか】

 

 歩美「私たち、“モデルヒロイン”って扱いされてる作品が、全国に放送されるわけ?」

 舞香「それ、契約と肖像権と恋愛感情のすべてを無視してませんこと?」

 玲奈「“パンツ事件”が第4話のサブタイトルであることに、倫理的疑義があります」

 幸香「お兄ちゃん、布団の中の記録もアニメ化されるの? されるんだよね?」

 

 俺「やめてええええええええええ!!!」

 

 まさに、ラノベ作家・死刑執行会議であった。

 

 歩美「っていうか、“あのキャラ”完全に私じゃん。“料理してて怒りっぽい幼なじみ”って……」

 舞香「私の“爆弾キャラ”はまだいいけど、なぜ“入浴中に転ぶ”イベントまで忠実再現されてるのか」

 玲奈「地味系が表紙を飾る回が“作画一番気合入ってる”ってどういうことですか」

 幸香「“兄の毛を瓶詰めする妹”って説明、TVで流れたら私は終わりなの……?」

 

 俺「誰か俺を消してえええええええ!!!!」

 

 

 ***

 

 夜。

 なんとか命だけは助かり、俺は書斎に戻ってきた。

 スマホを見ると、渋谷からLINEが届いていた。

 

 渋谷「アニメ化記念に“リアルモデルとの対談記事”出したいから、ヒロインたちの許可取っておいて」
 渋谷「キャラ原案と実物の比較、読者めちゃ食いつくから。ついでに制服姿での対談がいいなーって(←編集部案)」

 

「やだよッッ!!!!!!」

 

 ──でも、夢だった。

 たしかに、地獄が始まるかもしれない。
 でも、それでも。

 この作品が、画面の中で動く。
 ヒロインたちが、声を持つ。

 それは、やっぱり──

 

「嬉しいよな……」

 

 そっと笑って、
 俺はPCを立ち上げた。

 

 画面のファイル名:

【アニメ用・原作脚本補足案】
『第1話:神様、俺にヒロインを!』
『第4話:パンツと兄と曇りのち地獄』
『第10話:リアルは修羅場、物語は進む』

 

 ──そして、物語はまた進む。
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