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第二章『アニメ化騒動編』

第23話 『声優オーディション修羅場』

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 ──アニメ化の実感、それは「声がつく瞬間」だ。

 

 その日、俺・久慈川幸喜は、編集・渋谷から渡された書類を前に固まっていた。

 タイトル:

【アニメ版:メインヒロイン声優候補一覧(最終候補5名)】

 

 ページを開いた瞬間。
 俺の中の“オタク細胞”が一斉に立ち上がった。

 

「……うっそだろ……!?」

 

 最終候補の一人に──

 九条ことね(CV候補)

 その名前があった。

 俺が──
 中学の頃から追い続けてきた、VTuber声優界の神。

 推し、という言葉では語りきれない。
 もはや“信仰”。

 あの“ことね様”が、俺のヒロインに──

 

「これ、夢じゃないよな……!?」

 

 だがそのとき──背筋に“殺気”が走った。

 

「──誰の名前、今呼んだ?」

 

 背後を振り返ると──

 全ヒロインが壁ドン状態で張り付いていた。

 

 歩美「なんか……今、“興奮”してなかった?」

 舞香「その顔、“推し”を見たオタクの顔だったわ」

 玲奈「心拍、12秒前から急上昇してます」

 幸香「お兄ちゃんの鼻息、さっきから熱い♥」

 

 俺「お願いだから! 顔近いから! 鼻息測定すな!!」

 

 

 ***

 

 事態はさらに悪化する。

 午後。渋谷からのLINEが届く。

 渋谷「来週、アフレコ現場の収録見学あるから、
 作者として同行ヨロ! 推しにサインもらえるかもなーw」

 

「──っっっ!!!」

 

 思わずスマホを取り落とす。

(俺が……“ことね様”に……“俺のヒロイン”を演じてもらって……しかも会える……!?)

 震える指で「はい」と返信しかけたそのとき──

 

「それ、誰が一緒に行くの?」

 

 振り返ると──

 全ヒロインがすでに出発準備万端で並んでいた。

 

 歩美:リュックに差し入れ弁当(毒見済み)
 舞香:スーツケース+“ことね様用英国紅茶ギフト”
 玲奈:録音機材+即席レポートノート
 幸香:兄毛入り香水&オリジナルサイン帳(なぜか双子設定)

 

 俺「お前ら、なんでついて来る前提なんだ!!?」

 

 歩美「だって“アニメの顔合わせ”でしょ? 正妻として当然でしょ?」

 舞香「大切な作品を守るため、同行は義務ですわ」

 玲奈「現場資料は一次情報が命です」

 幸香「“収録現場で出会ったアイドル声優に兄を取られる”って、何それ薄い本のプロット?」

 

 俺「もう誰かこの家、燃やしてくれ……!!!」

 

 

 ***

 

 次の日、朝のホームルーム。

 すでに学校中に噂は広がっていた。

「久慈川の作品、アニメ化ってマジ?」
「声優が“九条ことね”って……うらやましすぎて胃液出そう」
「っていうか、キャラ“あの4人”じゃね?」
「リアルヒロイン=二次元化……だと……?」

 

 俺、机に突っ伏す。

「……これ、原作崩壊する前に、俺が崩壊する……」

 

 そのとき、耳元で囁かれた。

「……アフレコの日、勝負ね」

 歩美。

「負けたくないんです……声でも、気持ちでも」

 玲奈。

「演技力では負けるかもしれませんが、“実際の接触距離”なら私たちが上です」

 舞香。

「“ことね様”が“わたくしのキャラ”を演じる? それはすなわち、“私”の再現よ」

 幸香。

「うふふ……私、録音して、布団で聴く予定♥」

 全員「黙れ地雷」

 

 ──アフレコ見学。

 それは、ヒロインたちにとって公開恋愛戦争の開幕でもあった。

 

 

 ***

 

 夜。

 俺は、ベッドに倒れこみながら、PCを開いた。

 ファイル名:
【次回アニメ用補足資料】

『ヒロインの声を聞いた瞬間、俺は恋を知った(仮)』

 

「……ああ、どうして俺は、こんなにも“ヒロイン”に囲まれてるんだろうな……」

 

 スマホが鳴る。渋谷から。

 渋谷「アフレコ同行、ヒロイン4人分のパス作っといたわ。
 “絶対連れてくるだろうな”って思って」

 

 俺「……お前が一番俺を理解してるな……」

 
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