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第三章『妹独占ルート暴走編』

第30話 『アニメは動き出す、物語も──』

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 ──夜。
 静かなリビングに、緊張が満ちていた。

 

 テレビの前。
 俺・久慈川幸喜は、正座していた。

 

 画面には、あと1分で始まる番組の予告表示。

 

『俺はプロラノベ作家なのに、青春ラブコメの中にいた』
 TVアニメ第1話「神様、俺にヒロインを!」

 

 そして、周囲には。

 ヒロインたちが勢揃いしていた。

 

 ・歩美(幼なじみ)→ 真顔でテレビを見つめ、手にはチャンネルのリモコン。
 ・舞香(転校生)→ 「紅茶と一緒に見るのがマナーですわ」とティーカップ準備済。
 ・玲奈(図書委員)→ ノートを膝に置き、“感想”を書く気満々。
 ・幸香(妹)→ 録画用BDプレイヤー3台を同時録画中。

 

 俺「なんで録画多い!? しかも“妹監修バージョン”って何!? 編集権限あるのかお前に!」

 

 幸香「円盤で“副音声・妹解説”入れる予定なんだけど♥」

 全員「やめろ地雷!!!!」

 

 

 ***

 

 ──そして、始まった。

 

 画面に広がる、俺が知っている世界。

 つくば市の街並み。
 制服姿の少年が歩く坂道。
 そして、冒頭のナレーション。

 

「これは、ラブコメが書けない俺が、ラブコメの中に飛び込んでしまった物語──」

 

 主人公・久慈川幸喜(CV:山城ユウ)の声が響く。
 イケボすぎて、俺じゃない感がすごい。

 

 そして、次々に現れる“ヒロインたち”。

 

 ・怒りっぽくも面倒見のいい、幼なじみヒロイン。
 ・無邪気に兄を追い回す、ブラコン妹ヒロイン。
 ・言葉少なに本を渡す、静かな図書委員ヒロイン。
 ・騒がしく登場し、恋と事件を巻き起こす金髪転校生ヒロイン。

 

 彼女たちは、動き、しゃべり、笑い、怒り──生きていた。

 

「……すごいな」

 俺は、ただそれしか言えなかった。

 頭で分かっていた。

 “アニメになる”って、こういうことなんだって。

 でも、いざ自分の描いたキャラたちが、
 画面の中で呼吸し、存在しているのを見ると──

 言葉にならなかった。

 

 

 ***

 

 ふと、隣を見る。

 歩美は、黙っていた。
 だけどその目は、少しだけ潤んでいた。

 

「……ねぇ。これが、“私”なのかな?」

 

 舞香は、紅茶を飲みながら言った。

「作られたキャラ……でも、私が“本気”でぶつかった日々が、こうして形になるなら……悪くないわ」

 

 玲奈は静かにノートに書き込みながら。

「“記録”じゃない。“記憶”ですね、これは」

 

 幸香は、にやにやしながらテレビ画面をスマホで連写していた。

「お兄ちゃんが“好き”って言ってくれた、私たちが、映ってるの……これ、保存用・観賞用・布団用の3セット必要だよね♥」

 全員「やめろ地雷!!!」

 

 ──そして、俺は。

 テレビ画面を見つめながら、ふと思った。

 

(俺……何のために、この物語を書いてきたんだろう)

 

 売れたかったから?
 注目されたかったから?

 ──違う。

 

(俺は、“この子たち”と出会ってしまったから、書かずにはいられなかったんだ)

 

 歩美がいて。
 幸香がいて。
 舞香がいて。
 玲奈がいて。

 

 それぞれに、強くて、弱くて、愛しくて。

 彼女たちのことを、知ってほしくて。
 彼女たちのことを、忘れたくなくて。

 だから──物語にした。

 そしてそれが、今。

 画面の中で、生きている。

 

「……ありがとうな、みんな」

 

 小さく呟くと、4人のヒロインが、ぴくっと反応した。

 

 歩美「……なによ、いきなり」

 舞香「そういうのは、もっとロマンチックな場面で言って」

 玲奈「“ありがとう”は、続きが必要です。“何に対して”か、述べてください」

 幸香「私は“好き”って言われたことあるから、リードしてる♥」

 全員「地雷!!!ぶちぬけぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 俺は、笑った。

 そうだ。

 ここが、俺の原点であり──

 これからも、物語が続いていく“場所”なんだ。

 

 アニメが始まった。

 でも、俺の物語は──

 まだ始まったばかりだ。
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