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第三章『妹独占ルート暴走編』

第34話 『歩美、妹に宣戦布告』

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 ──それは、昼休みのことだった。

 

 俺・久慈川幸喜は、弁当の箸を止めていた。
 空気が重い。
 殺気、というやつだ。

 

 その元凶は、目の前の2人。

 1人は──妹・幸香
 もう1人は──幼なじみ・袋田歩美

 

 2人は、机を挟んで睨み合っていた。

 いや──これはもう、睨み合いなどという生易しいものではない。

 戦(いくさ)だ。

 

 歩美「アンタさ、さすがに最近……調子に乗りすぎじゃない?」

 幸香「えー? なんのことかなぁ?」

 歩美「“なんのこと”って……昨日の布団侵入と録画の件!
 それと、“学校で恋人宣言”までしておいて、まだトボける気?」

 

 幸香「だって、事実だもん♥
 私とお兄ちゃん、あったかい布団の中で、心を通わせてるし……♥」

 歩美「黙れ地雷妹!!!!!!!!」

 

 ──机が揺れた。

 歩美の拳が、ギリッと鳴った。

 

 俺(……誰かこの女神たちに、ラブコメという言葉の意味を思い出させてくれ)

 

 

 ***

 

 廊下。移動中。

 歩美が俺の腕をつかんで、グイグイ引っ張る。

 

 歩美「いい? 幸喜。今日、はっきりさせるから」

 俺「な、何を……?」

 歩美「妹だからって、甘えてんじゃないってことを。
 “正妻の証”は、血縁でも、既成事実でもなく、気持ちだってことを──」

 

 その目は、本気だった。

 

 ──袋田歩美。
 俺の幼なじみで、家も隣で、
 小さい頃からずっと一緒で、
 おせっかいで、怒りっぽくて、でも……優しくて。

 

 そして今、
 妹に奪われそうな“立ち位置”を、全身で取り戻そうとしている。

 

 

 ***

 

 放課後──

 学校裏の中庭ベンチ。

 そこにいたのは──

 ・歩美(正妻候補)
 ・幸香(合法妹)
 ・観戦ヒロインズ:舞香&玲奈(※ノンアル審判)

 

 俺は、呼び出されていた。

「──これより、“正妻の証”争奪戦、第一回会議を開きます」

 玲奈が資料を読み上げる。

「競技内容:
 ①“家事力”勝負(弁当対決)
 ②“添い寝評価”勝負(過去記録分析)
 ③“兄がドキッとした台詞”勝負(リアル再現)
 ④最終決定権は──本人の判断とする」

 

 俺「ちょっと待て、なんだこの裁判……!」

 舞香「口を出したら、即失格ですわよ?」

 

 

 ***

 

 第一競技──弁当。

 その場で歩美が取り出したのは、
 手作りのだし巻き玉子弁当+梅干しとだし汁の小瓶付き。

 

 歩美「出汁を制す者は、家庭を制すってね」

 

 幸香が出したのは、
 兄好物で固めた“キャラ弁”+兄の顔を模したウインナー盛り。

 

 幸香「見て見て~お兄ちゃん弁当♥」

 

 俺(見たくなかった)

 

 

 ***

 

 第二競技──添い寝実績。

 玲奈「過去の記録を分析したところ──
 ・妹の布団侵入:年平均85泊
 ・歩美:風邪の看病などで3泊(うち2回はリビングで)

 添い寝回数では妹に軍配が上がります」

 

 歩美「……くっ!」

 幸香「数だけじゃなく、“濃度”も違うよ♥」

 舞香「やめなさい、倫理の地平線がかすんできたわ」

 

 

 ***

 

 第三競技──ドキッとした台詞勝負。

 歩美、前に出る。

 そして、俺の目を真っすぐ見て、口を開いた。

 

「──ねぇ、幸喜。
 私は“幼なじみ”って立場に甘えたくない。
 だから、ちゃんと向き合って、言うね。

 ──私、お前のことが、好き」

 

 俺「……ッ」

 

 ……ストレートだった。

 あまりにも、不器用で、真っすぐで、
 でも、胸に刺さる言葉だった。

 

 幸香は、ゆっくりと前に出る。

 そして、にっこりと笑った。

 

「私は……“妹”って立場に甘えていいと思ってるよ。
 だって、それが最強なんだもん♥
 血の絆に勝てる想いなんて、この世にあるの?」

 

 歩美「……あんた、本気でそう思ってるんだ」

 

 幸香「うん。“正妻”って言葉、
 本当に似合うのは……私、だと思う」

 

 ──その瞬間。

 空気が弾けた。

 火花は見えなかったけど──

 たしかに、“戦い”が始まった。

 

 

 ***

 

 帰宅後、俺は机に突っ伏していた。

(妹……歩美……)

 

 両方、大切だった。

 でも、それが恋なのか、情なのか、家族なのか、俺にはまだわからない。

 わかっているのは──

 彼女たちは、“正妻”という言葉を本気で信じて戦っている。

 そのことだけだった。
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