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一回目の廃棄
2nd trash
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最上は後ろで異変が起こっていることに気づいた。「s」が暴れている。「s」は「p」の女性を放り投げて殺したのだ。あいつはやばい、そう直感した。
とはいえ、無職で高校時代もゲーム部に入っていた俺は体力の限界なんてとうに越えていた。つまり俺はなす術がないのだ。このまま「s」に追いつかれたら間違いなく殺される。急がなければ。
ダッ ダッ ダッ ドスン とうとう体力を使い果たし、最上は倒れた。
気づくとベルトコンベアの端まで流されていた。後ろを振り返ってみると、かかとのすぐ先にベルトコンベアは続いてなかった。俺は死を直感し...火事場の馬鹿力ってやつかはわからないが、一気に走り出した。
自分でも驚いた。俺にまだこんな体力が残っているなんて。心臓は自分のものなのか疑うほど鼓動している。その鼓動に合わせて足を前へ前へと運んでいく。休んだら死ぬ。休んだら死ぬ。ここで足を止めたら死ぬ。
生への執着心だけでどんどんと前に進んでいく。後ろでドンッ ドンッ と音がなっている。しかしそんなことを気にしていたら死んでしまう。しばらく走った後は後ろに熱さは感じなかったが、代わりに寒気がした。俺は寒気の原因を突き止めるべく後ろを振り返った。そこには醜く顔を歪ませた人間が薄ら笑いを浮かべてこちらに歩いてくる細身で筋肉質の男性がいた。俺はそいつの服を見て戦慄した。
「s」だ。
<残り16人 クリアまであと3人>
先ほどのドスンドスンという音はおそらく誰かがあいつにやられたのだろう。よく周りを見回すと半分ほど人が減っている。あいつの仕業かはわからないが、とにかくこのクソなゲームの終了は着実に近づいているということだ。まだ溶岩まで距離はある。
少し希望が見えたのは言うまでもない。最上はその希望に向かってまた一歩足を伸ばした。その時だった。
ドスンッ
少し明るかった視界はいきなり暗くなった。と同時に鼻先に衝撃がはしった。最上は転んだのだ。それは彼が体力の限界を向かえたからではない。その後ろの「s」、片桐が右足を掴んだからである。
「なに...すんだよ...おっさん」
元気の無い最上は必死に喉の奥から声を絞り出した。「s」...いや、片桐は一言
「死ね」
とだけ吐き捨てて最上の背中を踏みつけた。
「...!?」
声を出そうとはしたが、最上や片桐の耳に最上の声は届かなかった。
ゴム状の床に鮮血がかかる。片桐は最上を一瞥すると、遠くのほうへ走り去っていった。
それでも最上はほふく前進の要領で前に進み続けた。確実にスピードは足りていないが、時間は十分に稼げている。
しかし体力の残っていない最上が終わりを迎えるのは確実である。
自分は進んでいるのに、景色は逆に動いている。最上はそんな不思議な感覚にとらわれながらひたすら手を動かし続けていた。このまま終わってくれ! しかし最上の期待は外れ、とうとう最上の足首が浮いた。最上はもう覚悟していた。ゆっくりと流れる時間を噛み締め、力を抜いた。最上の身体は宙を舞って数m...いや上からじゃわからなかったが軽く50mはあるか。回り続けるベルトコンベアの先端と共に最上の意識は少しずつ遠くなっていった...
<残り13人 クリアまであと0人>
とはいえ、無職で高校時代もゲーム部に入っていた俺は体力の限界なんてとうに越えていた。つまり俺はなす術がないのだ。このまま「s」に追いつかれたら間違いなく殺される。急がなければ。
ダッ ダッ ダッ ドスン とうとう体力を使い果たし、最上は倒れた。
気づくとベルトコンベアの端まで流されていた。後ろを振り返ってみると、かかとのすぐ先にベルトコンベアは続いてなかった。俺は死を直感し...火事場の馬鹿力ってやつかはわからないが、一気に走り出した。
自分でも驚いた。俺にまだこんな体力が残っているなんて。心臓は自分のものなのか疑うほど鼓動している。その鼓動に合わせて足を前へ前へと運んでいく。休んだら死ぬ。休んだら死ぬ。ここで足を止めたら死ぬ。
生への執着心だけでどんどんと前に進んでいく。後ろでドンッ ドンッ と音がなっている。しかしそんなことを気にしていたら死んでしまう。しばらく走った後は後ろに熱さは感じなかったが、代わりに寒気がした。俺は寒気の原因を突き止めるべく後ろを振り返った。そこには醜く顔を歪ませた人間が薄ら笑いを浮かべてこちらに歩いてくる細身で筋肉質の男性がいた。俺はそいつの服を見て戦慄した。
「s」だ。
<残り16人 クリアまであと3人>
先ほどのドスンドスンという音はおそらく誰かがあいつにやられたのだろう。よく周りを見回すと半分ほど人が減っている。あいつの仕業かはわからないが、とにかくこのクソなゲームの終了は着実に近づいているということだ。まだ溶岩まで距離はある。
少し希望が見えたのは言うまでもない。最上はその希望に向かってまた一歩足を伸ばした。その時だった。
ドスンッ
少し明るかった視界はいきなり暗くなった。と同時に鼻先に衝撃がはしった。最上は転んだのだ。それは彼が体力の限界を向かえたからではない。その後ろの「s」、片桐が右足を掴んだからである。
「なに...すんだよ...おっさん」
元気の無い最上は必死に喉の奥から声を絞り出した。「s」...いや、片桐は一言
「死ね」
とだけ吐き捨てて最上の背中を踏みつけた。
「...!?」
声を出そうとはしたが、最上や片桐の耳に最上の声は届かなかった。
ゴム状の床に鮮血がかかる。片桐は最上を一瞥すると、遠くのほうへ走り去っていった。
それでも最上はほふく前進の要領で前に進み続けた。確実にスピードは足りていないが、時間は十分に稼げている。
しかし体力の残っていない最上が終わりを迎えるのは確実である。
自分は進んでいるのに、景色は逆に動いている。最上はそんな不思議な感覚にとらわれながらひたすら手を動かし続けていた。このまま終わってくれ! しかし最上の期待は外れ、とうとう最上の足首が浮いた。最上はもう覚悟していた。ゆっくりと流れる時間を噛み締め、力を抜いた。最上の身体は宙を舞って数m...いや上からじゃわからなかったが軽く50mはあるか。回り続けるベルトコンベアの先端と共に最上の意識は少しずつ遠くなっていった...
<残り13人 クリアまであと0人>
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