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第二章 光となる人
第20話 特別のあった過去
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彼女の部屋は、相変わらず散らかっていた。
誰だって、心のゆとりがないタイミングは片付けになんて気が回らない。
床に散乱したメイク道具や服には触れず、俺は膝を抱えて丸まっている彼女の隣に腰を下ろした。
「はい。華の好きな苺スイーツ」
「……柊真くん……!」
コンビニの袋を置くと、彼女は少し顔を上げて、勢いよく俺の首に腕を回した。
少し前に知り合った彼女は、ふわふわとした小動物のような女の子。
一見明るく、人懐っこい見た目をしているけれど、その恋愛模様はなかなかに拗れているようで。
「また喧嘩したの?」
「だって、思いっきりリップがついてたの。本当最悪」
そう言いながら俺の胸にすり寄る彼女も似たようなものだろうに。
不安で愛されたくて仕方がない。
そんな彼女の心を安心させるように、ぎゅっと抱きしめた。
見慣れてしまった泣き腫らした目がじっとこちらを見つめる。
「柊真くんが来てくれると安心するの。いつもごめんね」
弱々しくそう言う彼女に俺は何も言わず、抱き寄せる手を弱める。
すると、自由になった体を起こした彼女は、ちゅっと俺にキスをした。
拒むことはしない。
辛さを抱える彼女の逃げ場として、必要なときだけ呼ばれる場所としてここにいることが、俺の存在意義なのだから。
彼女の呼吸が落ち着き、すーっと眠りに落ちたのを確認して、ふと、窓の外に目を向ける。
暗い空に、まばらに瞬く星。
その光景が、胸の奥にしまい込んでいた記憶を、静かに呼び起こした。
忘れようとしても、忘れられない。
数年前の、あの雨の夜。
——あのときの俺は自覚もなく、最低だった。
記憶がゆっくりと思い出され、俺を過去へ引きずり戻していく。
_/_/_/_/_/_/
駅前の薄暗い街灯の下、俺は傘を差して立っていた。
冷たい雨が地面を濡らし、水たまりが波を打つのをぼんやりと眺める。
少し経って、見慣れたコートに身を包んだ彼女の姿が、遠くに見えた。
「待たせた?」
その日の沙織の表情には疲れと覚悟が入り混じっていたと思う。
雨音にかき消されそうな小さな声に違和感を感じなかったわけではないけれど。
「全然、大丈夫だよ」
いつも通りのつもりで、俺は穏やかな笑顔を作った。
だけど、沙織はじっと俺を見つめたまま、視線を外そうとしなかった。
「ねえ、柊真」
立ち止まった彼女が、はっきりと口にした。
「別れよっか」
それは、俺にとっては突然の出来事で。
そのまっすぐな瞳に、思わず一歩下がってしまうほど衝撃的な言葉だった。
「ごめん、理由って教えてもらえる?」
小指程度の冷静さをかろうじて残して尋ねると、沙織は目を伏せ、一度深呼吸をしてから顔を上げた。
「柊真の優しさって、残酷なの」
雨音だけが耳に響く中で、その言葉が胸に深く刺さる。
「それは……どういう意味?」
額に自然と皺が寄るのを感じながら、俺は問い返した。
「柊真は、本当に、誰にでも優しいよね」
彼女の言葉には、寂しさが滲んでいた。
「困っている人を助けたり、悩んでいる人の話を親身に聞いたり……。誰かが助けを求めれば、柊真は必ず助けにいく。それって本当に素敵なことだと思う」
褒められているのに、グサグサと突き刺される感覚が痛い。
「でも、私にはそれが怖いの」
沙織は下がり気味だった傘を上げて、真っ直ぐ俺を見つめる。
「誰にでも手を差し伸べるし、どんな相手にも同じように優しい。その優しさが……私を特別だとは思わせてくれない」
俺は何も言えなかった。
「もちろん、柊真が悪いわけじゃないよ。でも……どれだけ甘えたくても誰にでもできる優しさで包まれると、自分が特別じゃないって思っちゃうの」
彼女の瞳に浮かんだ涙が、街灯の光にかすかに輝く。
俺が流させてしまったその涙を拭わせてもらえない事実に、胸が締め付けられた。
「柊真はさ、私だけのために優しくなることってできる?」
彼女が求めている言葉を言おうとしたけれど、喉が詰まったように声が出なかった。
できないと、思ってしまったのだ。
言ってほしいことややってほしいことは、手に取るように分かるのに。
いつもなら、簡単にその気持ちに寄り添うことができるのに。
俺は付き合っている彼女に対してだけ、寄り添うことができなかった。
無言の俺に、沙織は肩を落とし、つぶやいた。
「これ以上一緒にいると、私は自分が嫌いになりそう。だから、もう終わりにしたい」
小さな声で沙織が告げた言葉は、雨の音に溶け込みそうなほどだった。
彼女は微笑んでいた。
けれど、その微笑みはひどく痛々しく、俺の胸を締め付ける。
「待って、沙織」
「ごめんね、柊真。あなたに必要な人になれなかった私が悪いの」
揺らがない意志を持った彼女の瞳は、あまりにも美しかった。
雨の中、遠ざかるその姿がやがて街灯の影に溶けて消えていっても、俺はその場から動けなかった。
分け隔てない優しさが誰かを傷つけてしまうことがあるなんて、それも一番身近な人をこんなにも傷つけることになるなんて、その時までは、想像もしていなかったのだ。
_/_/_/_/_/_/
あの雨の夜の記憶が、まるで昨日のことのように蘇る。
俺は目の前で安心したように寝息を立てる華に視線を落とした。
涙が乾いたあとがうっすら残る頬に優しく触れながらぼんやり考える。
「特別な人を作ったら、俺はその人を泣かせることになる」
ぽつりと零れた言葉が、静かな部屋の中に沈んでいく。
困っている人を見かければ、つい手を差し伸べてしまうこの性分は、俺にとって生まれつきのものだった。
だからこそ、それをやめられる自信は最初からない。
それが例え、一番大切だと思った彼女の願いだったとしても。
行き着いた先は、俺は特別な人を作ってはいけない人種なんだという結論だった。
誰か一人に深く踏み込まなければ、誰も傷つけずに済む。
都合のいい人間だと、思われても構わなかった。
ーーなのに、ここ最近の俺は。
華を起こさないようにベッドから降りて部屋を出る。
冷たい夜の風とは裏腹に、心の中にはたったひとりの存在が焼き付いて離れない。
「引越しか……」
本当は、彼女への思いが、少しだけ自分が選ぶべき道から踏み出してしまっていることにも、気づいている。
好意に気づいても、応えたいと思っても、俺は彼女の隣にいることを選ぶことはできない。
その先には、彼女を傷つける未来があるように感じられてしまうから。
「幸せになってくれればいいんだ。そのために俺といてはいけない」
彼女を大切に思うからこそ、隣にいることはできない。
俺が手を伸ばせば、茉莉の人生まで巻き込んでしまうかもしれない。
それが怖くて、俺は今日も、都合のいい場所に立ち続けていた。
_/_/_/_/_/_/
第20話、読んでいただきありがとうございます_(⑉• •⑉_)
気に入っていただけたら、お気に入りやエールをいただけますと励みになります!
次回もぜひよろしくお願いいたします。
誰だって、心のゆとりがないタイミングは片付けになんて気が回らない。
床に散乱したメイク道具や服には触れず、俺は膝を抱えて丸まっている彼女の隣に腰を下ろした。
「はい。華の好きな苺スイーツ」
「……柊真くん……!」
コンビニの袋を置くと、彼女は少し顔を上げて、勢いよく俺の首に腕を回した。
少し前に知り合った彼女は、ふわふわとした小動物のような女の子。
一見明るく、人懐っこい見た目をしているけれど、その恋愛模様はなかなかに拗れているようで。
「また喧嘩したの?」
「だって、思いっきりリップがついてたの。本当最悪」
そう言いながら俺の胸にすり寄る彼女も似たようなものだろうに。
不安で愛されたくて仕方がない。
そんな彼女の心を安心させるように、ぎゅっと抱きしめた。
見慣れてしまった泣き腫らした目がじっとこちらを見つめる。
「柊真くんが来てくれると安心するの。いつもごめんね」
弱々しくそう言う彼女に俺は何も言わず、抱き寄せる手を弱める。
すると、自由になった体を起こした彼女は、ちゅっと俺にキスをした。
拒むことはしない。
辛さを抱える彼女の逃げ場として、必要なときだけ呼ばれる場所としてここにいることが、俺の存在意義なのだから。
彼女の呼吸が落ち着き、すーっと眠りに落ちたのを確認して、ふと、窓の外に目を向ける。
暗い空に、まばらに瞬く星。
その光景が、胸の奥にしまい込んでいた記憶を、静かに呼び起こした。
忘れようとしても、忘れられない。
数年前の、あの雨の夜。
——あのときの俺は自覚もなく、最低だった。
記憶がゆっくりと思い出され、俺を過去へ引きずり戻していく。
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駅前の薄暗い街灯の下、俺は傘を差して立っていた。
冷たい雨が地面を濡らし、水たまりが波を打つのをぼんやりと眺める。
少し経って、見慣れたコートに身を包んだ彼女の姿が、遠くに見えた。
「待たせた?」
その日の沙織の表情には疲れと覚悟が入り混じっていたと思う。
雨音にかき消されそうな小さな声に違和感を感じなかったわけではないけれど。
「全然、大丈夫だよ」
いつも通りのつもりで、俺は穏やかな笑顔を作った。
だけど、沙織はじっと俺を見つめたまま、視線を外そうとしなかった。
「ねえ、柊真」
立ち止まった彼女が、はっきりと口にした。
「別れよっか」
それは、俺にとっては突然の出来事で。
そのまっすぐな瞳に、思わず一歩下がってしまうほど衝撃的な言葉だった。
「ごめん、理由って教えてもらえる?」
小指程度の冷静さをかろうじて残して尋ねると、沙織は目を伏せ、一度深呼吸をしてから顔を上げた。
「柊真の優しさって、残酷なの」
雨音だけが耳に響く中で、その言葉が胸に深く刺さる。
「それは……どういう意味?」
額に自然と皺が寄るのを感じながら、俺は問い返した。
「柊真は、本当に、誰にでも優しいよね」
彼女の言葉には、寂しさが滲んでいた。
「困っている人を助けたり、悩んでいる人の話を親身に聞いたり……。誰かが助けを求めれば、柊真は必ず助けにいく。それって本当に素敵なことだと思う」
褒められているのに、グサグサと突き刺される感覚が痛い。
「でも、私にはそれが怖いの」
沙織は下がり気味だった傘を上げて、真っ直ぐ俺を見つめる。
「誰にでも手を差し伸べるし、どんな相手にも同じように優しい。その優しさが……私を特別だとは思わせてくれない」
俺は何も言えなかった。
「もちろん、柊真が悪いわけじゃないよ。でも……どれだけ甘えたくても誰にでもできる優しさで包まれると、自分が特別じゃないって思っちゃうの」
彼女の瞳に浮かんだ涙が、街灯の光にかすかに輝く。
俺が流させてしまったその涙を拭わせてもらえない事実に、胸が締め付けられた。
「柊真はさ、私だけのために優しくなることってできる?」
彼女が求めている言葉を言おうとしたけれど、喉が詰まったように声が出なかった。
できないと、思ってしまったのだ。
言ってほしいことややってほしいことは、手に取るように分かるのに。
いつもなら、簡単にその気持ちに寄り添うことができるのに。
俺は付き合っている彼女に対してだけ、寄り添うことができなかった。
無言の俺に、沙織は肩を落とし、つぶやいた。
「これ以上一緒にいると、私は自分が嫌いになりそう。だから、もう終わりにしたい」
小さな声で沙織が告げた言葉は、雨の音に溶け込みそうなほどだった。
彼女は微笑んでいた。
けれど、その微笑みはひどく痛々しく、俺の胸を締め付ける。
「待って、沙織」
「ごめんね、柊真。あなたに必要な人になれなかった私が悪いの」
揺らがない意志を持った彼女の瞳は、あまりにも美しかった。
雨の中、遠ざかるその姿がやがて街灯の影に溶けて消えていっても、俺はその場から動けなかった。
分け隔てない優しさが誰かを傷つけてしまうことがあるなんて、それも一番身近な人をこんなにも傷つけることになるなんて、その時までは、想像もしていなかったのだ。
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あの雨の夜の記憶が、まるで昨日のことのように蘇る。
俺は目の前で安心したように寝息を立てる華に視線を落とした。
涙が乾いたあとがうっすら残る頬に優しく触れながらぼんやり考える。
「特別な人を作ったら、俺はその人を泣かせることになる」
ぽつりと零れた言葉が、静かな部屋の中に沈んでいく。
困っている人を見かければ、つい手を差し伸べてしまうこの性分は、俺にとって生まれつきのものだった。
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それが例え、一番大切だと思った彼女の願いだったとしても。
行き着いた先は、俺は特別な人を作ってはいけない人種なんだという結論だった。
誰か一人に深く踏み込まなければ、誰も傷つけずに済む。
都合のいい人間だと、思われても構わなかった。
ーーなのに、ここ最近の俺は。
華を起こさないようにベッドから降りて部屋を出る。
冷たい夜の風とは裏腹に、心の中にはたったひとりの存在が焼き付いて離れない。
「引越しか……」
本当は、彼女への思いが、少しだけ自分が選ぶべき道から踏み出してしまっていることにも、気づいている。
好意に気づいても、応えたいと思っても、俺は彼女の隣にいることを選ぶことはできない。
その先には、彼女を傷つける未来があるように感じられてしまうから。
「幸せになってくれればいいんだ。そのために俺といてはいけない」
彼女を大切に思うからこそ、隣にいることはできない。
俺が手を伸ばせば、茉莉の人生まで巻き込んでしまうかもしれない。
それが怖くて、俺は今日も、都合のいい場所に立ち続けていた。
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