12 / 20
初めてのお出掛け
しおりを挟む気がつけば眠ってしまっていたみたいで、すっかり朝になっていた。
昨日見つけた妖精さんの手紙のおかげかもしれないわ。夢は覚えてないけど、いつもよりすっきり目覚めた気がするもの。
私は手紙を枕の裏に隠して、ベッドから降りた。
ちょうどそのとき、デルマが扉をノックした。
「お嬢様。朝のお支度の準備が整いました。」
「ありがとう、入っていいですよ。」
「失礼致します。…お嬢様はとても早起きなのですね。」
「うん。毎日勝手に目が覚めちゃうの。」
「まぁ、とても立派です!では今後は毎日このくらいの時間にお伺いいたしますね。さぁ、こちらのお湯をお使いください。」
いつも通り起きただけなのに、デルマから褒められて嬉しくなった。
まだ笑顔に違和感があるせいで、きっと変な顔になってしまったけど、私にとっては満面の笑顔になっていたと思う。
顔を洗い終わり、着替えにはいる。
「…そういえば、お嬢様。昨晩はよくお眠りになられましたか?」
「えぇ。あのね…」
妖精さんが、と言いかけて思いとどまった。
もしかして、妖精さんがこの話を聞いていて、二度と現れなくなってしまったらどうしよう。
そもそも、妖精さんを信じてもらえなくておかしな子だと呆れられるかもしれない。
「…お嬢様?」
「あ…あのね!きっとデルマが夜につけてくれた香油のおかげだわ。とってもいい香りがして…気が付いたら眠っていて、一度も起きなかったの。」
「あら、それは良かったです!色んな香油がありますから、それだけでもお嬢様はこれからもっとたくさんの好きなものを見つけられますね。」
「……ふふ、そうだよね。ありがとう!」
「私こそ、お嬢様のお役に立てて光栄ですわ。」
デルマに身支度を整えてもらって、私は食堂に向かった。
お父様とお兄様に挨拶をして、一緒にあたたかいご飯を食べる。私はまだスープのものが多いけれど、いろんな種類を作ってくれるから特別みたいで嬉しくなる。
「……奴が…」
ふと、お父様が口を開いた。
「やつ?」
「あぁ、いや…。ウェブスター卿が、今日はお前と2人で出掛けたいと言っていた。だが……ここ数日慌ただしかったし、お前もゆっくりするのが必要だろう?断るか?」
そういえば、目が覚めて混乱している私に優しく状況を説明してくれたのはフロリアン様だった。ドレス選びもずっとずっと褒めてくれていたけれど、2人でちゃんとお話ししたことはないのよね。
「いえ、お父様にお許しいただけるならお出掛けしてみたい……です……!」
きっとお父様は許してくれると分かっていた。でも、自分からお願いするのは初めてで緊張してしまって、手を強く強く握りしめていた。
「…………まぁ……お前がそうしたいなら、するといい。あまり遅くならないように。それと、クラウスも連れて行け。護衛騎士も5…いや10人付けよう。」
少しの沈黙の後、肯定してくれたお父様の言葉で手の力が抜ける。
「そ、そんなにですか…?あまり遠くではないでしょうし、5人でも十分だと思いますが…。」
「父上、確かに護衛騎士が多すぎると注目を集めてしまいます。それでもし求婚の手紙なんぞが増えたら…。」
「む…そうだな。では護衛騎士5人、影5人にしよう。それならいいだろう?」
「影……?」
「お前を影から守ってくれる存在だ。安心していいぞ。」
「は、はい。ありがとうございますお父様。」
この時、私は知らなかった。
『影』と呼ばれる人は、1人で護衛騎士10人に匹敵するくらい凄い人だということを。…侯爵家にも、たった8人しかいない『影』の5人を私の僅かなお出掛けにつけるなんて、ありえないことなのだと。
「おじょーさま!今日は俺も着いてくからね。絶対離れないでね。」
デルマにお出掛け用の服に着替えさせてもらってから玄関に行くと、既にクラウシー様が待ってくれていた。
「お待たせしてしまいごめんなさい。次からは絶対お待たせしないように気をつけますので…!あの、今日はよろしくお願いいたします!」
「んふ、素敵なレディーを待つ最高に楽しい時間をおれから奪わないでよ、おじょーさま。さぁ行こう。手でも繋ごうか?エスコートさせて?」
「え、えっと……」
「その必要はないですよ、クラウス卿。本日は僕がリアをエスコートしますので、のんびり着いてきてくださいね。」
私が戸惑っていると、フロリアン様が私の手を取った。
「おま…んんっ、フロリアン卿。どうしてこちらに?」
「お迎えにあがったんですよ。こちらの執事がここまで案内してくださったので。…それで、クラウス卿は何をしていたんですか?私の婚約者に。」
「へぇ、それはご丁寧に。おれがついてるので迎えは要らなかったんですけどね。伝えるのを失念していたせいで御足労をおかけして申し訳ない。…あと、おじょーさまはまだ誰の婚約者でもないことはもう話し合い済みですよね?」
「え、えぇと…とりあえず、行きませんか?私、お出掛け楽しみにしてたんです!」
すぐ言い争いになってしまうおふたりの背中を押して、玄関から出た。
このおふたりと一緒で大丈夫かしら…?
0
あなたにおすすめの小説
虐げられた私、ずっと一緒にいた精霊たちの王に愛される〜私が愛し子だなんて知りませんでした〜
ボタニカルseven
恋愛
「今までお世話になりました」
あぁ、これでやっとこの人たちから解放されるんだ。
「セレス様、行きましょう」
「ありがとう、リリ」
私はセレス・バートレイ。四歳の頃に母親がなくなり父がしばらく家を留守にしたかと思えば愛人とその子供を連れてきた。私はそれから今までその愛人と子供に虐げられてきた。心が折れそうになった時だってあったが、いつも隣で見守ってきてくれた精霊たちが支えてくれた。
ある日精霊たちはいった。
「あの方が迎えに来る」
カクヨム/なろう様でも連載させていただいております
裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。
夏生 羽都
恋愛
王太子の婚約者で公爵令嬢でもあったローゼリアは敵対派閥の策略によって生家が没落してしまい、婚約も破棄されてしまう。家は子爵にまで落とされてしまうが、それは名ばかりの爵位で、実際には平民と変わらない生活を強いられていた。
辛い生活の中で母親のナタリーは体調を崩してしまい、ナタリーの実家がある隣国のエルランドへ行き、一家で亡命をしようと考えるのだが、安全に国を出るには貴族の身分を捨てなければいけない。しかし、ローゼリアを王太子の側妃にしたい国王が爵位を返す事を許さなかった。
側妃にはなりたくないが、自分がいては家族が国を出る事が出来ないと思ったローゼリアは、家族を出国させる為に30歳も年上である伯爵の元へ後妻として一人で嫁ぐ事を自分の意思で決めるのだった。
※作者独自の世界観によって創作された物語です。細かな設定やストーリー展開等が気になってしまうという方はブラウザバッグをお願い致します。
夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ@『桜の嫁入り』発売中です
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい
LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。
相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。
何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。
相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。
契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?
【完結】仕事のための結婚だと聞きましたが?~貧乏令嬢は次期宰相候補に求められる
仙冬可律
恋愛
「もったいないわね……」それがフローラ・ホトレイク伯爵令嬢の口癖だった。社交界では皆が華やかさを競うなかで、彼女の考え方は異端だった。嘲笑されることも多い。
清貧、質素、堅実なんていうのはまだ良いほうで、陰では貧乏くさい、地味だと言われていることもある。
でも、違う見方をすれば合理的で革新的。
彼女の経済観念に興味を示したのは次期宰相候補として名高いラルフ・バリーヤ侯爵令息。王太子の側近でもある。
「まるで雷に打たれたような」と彼は後に語る。
「フローラ嬢と話すとグラッ(価値観)ときてビーン!ときて(閃き)ゾクゾク湧くんです(政策が)」
「当代随一の頭脳を誇るラルフ様、どうなさったのですか(語彙力どうされたのかしら)もったいない……」
仕事のことしか頭にない冷徹眼鏡と無駄使いをすると体調が悪くなる病気(メイド談)にかかった令嬢の話。
【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――
ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。
魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。
ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。
誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる