魔王と相討ちになった俺は気が付いたら30年後の世界にいた

29.魔王城②

「【天光】！！」

「……天光！？」

【天光】は、自身の魔力を使い魔族や魔物の能力を格段に下げることができる

「……力が出しにくくなってるのぉ……」

　魔王側近レベルだと天光の能力ダウンを差し引いてもそれなりの力が残っている、なので魔法の効果が続いている内に勝負をつけなければならない

「【葬蒙】！」

　この狭い場所で【葬蒙】は苦しいが、半ば無理やり突破することにする

「うおぉぉ！！」

　一瞬で周りにいる魔王軍を倒し、ガウズの腕に斬りこむ

「小賢しいのぉ、魔王様の所へ行かせるわけにはいかん、こちらも全魔力を使って殺りにいくぞ」

　天光があるとはいえ、魔王側近とまともにやり合いたくはないな……

「【氷渦】じゃ！！　喰らっとれい！」

　魔法によって、四方八方から尖った氷が俺に飛んでくる

「……くっ」

　剣で氷を叩き落としても、完全に避けきれない
　 
「やはりこの魔法は便利じゃのぉ！　もっと行くぞ！」

　追加で【氷渦】が来る、とにかく移動しながら氷から避けた

「あの勇者が何もできんとは面白いわ！！」

　随分余裕そうだが、狙いは別にある

「ほれほれ…………！？」

　ガウズは背中を思い切り攻撃され俺の目の前に倒れこんだ

「な、なんじゃ！？」

「ただ後ろのゴーレムに攻撃されただけだ……【雷極剣】」

「うっ……！」

　ガウズが距離を取ろうと剣を構えた隙を狙い、【雷極剣】でやつの片腕を切断した

「お、お前たち何をしておる！」

　その場にいた魔王軍はガウズに大声で怒鳴られた

「回復魔法はいまいち使えんしのぉ、さっきの魔法のせいで再生もしずらい」

　こいつの言う通り【天光】により、魔族が持っている再生を極めて遅めることができる
　そして、周りの魔王軍も同じように能力が下がっていた、だからゴーレムが攻撃できる隙が出来たのだろう

「ここは通して貰うぞ」







「……団長！！」

　少し下の階で、レガンとロラウズが激戦を繰り広げていた

「やるな！！   今まで戦った中で二番目に強いぞ！」

　騎士団長になってからこんな奴と戦う事になるとは思わなかったな……こいつは転移や幻視がメインと聞いたが、剣もこれ程強いのか……

「……これは……！？」

　魔法による幻視のせいで視界が制限された、まるで夜のような暗さに見えてしまう

「……【竜動剣】！」

　暗くなった状態でロラウズに攻撃を加えた

「……キサマ……リュウジン……ゾク……カ？」

「いかにも」

　レガンは竜人族の血が流れており、普通の人間では出来ないスキルを発動することが出来る、この【竜動剣】そのひとつに入る

「私が幻視に惑わされて負けるような者では無いぞ！」

　再び【竜動剣】を使い、滑り込むようにロラウズの懐に入る
　腹に付けている鎧を壊されたロラウズは直ぐにレガンの後ろへ転移する

「……」

　かなりやりずらい戦い方だ、能力が高いというのもあるが、それ以上に頭が良い
　このままでは俺の方が徐々に削られるな……

「お前たちは気にせず上へ行け！   俺はこいつを倒しておく！！」

　少し賭けだが……これしかない







「もうわしはここで終わりかもの……」

　ガウズは右腕は再生しないまま、徐々に体力と魔力を減らしていく
　この階の魔王軍は壊滅し、残っているのは俺とこいつとゴーレムだけだ

「お前が魔王様を倒せなかったら、騎士は力を失い人間が滅びるかもしれんぞ」

「その通りだ、だが見逃していたらもっと大きい被害になるかもしれない」

「なら尚更ここは通せんぞ」

　ガウズは残った魔力を全て使い【氷渦】を使った

「少しでも困った状態で行って欲しいからのぉ」

　さっきより大きい氷が何倍にも増えている

「うっ……」

　氷が動き出す前、ゴーレムがガウズの頭を潰した

「動くのか……！」

　氷は、ガウズがやられてからも動き出す


「ぐ……」

　先程より多い氷を半分程しか避けれず、他の氷はまともに食らってしまう

「……【ヒール】」

　氷が完全に落ちたので、俺が今唯一使える回復魔法をかけた、そのおかげで少しだけだが傷が治る

「……あとはこの上か……」

　恐らく魔王のいる場所に上がることが出来る階段を見ると、誰かが下がってきた

「お見事だぞぉ勇者」

「！？」

　間違いない……こいつは、魔王だ！！

「三十年前ぶりだなぁ」