異世界転移した俺の、美味しい異世界生活

yahagi

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紳士の遊び場でオセロ

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「ただいま、ハヤト」

「おかえりー」

 リカルドは居間の机に緑の台を置くと、石の入った二つの壺を置いた。

「よく出来てる。じゃあ、早速遊んでみようか」

「おう!」

「まず黒と白を二個ずつ置いて、黒を右上にして交互に並べる。よし、と。黒と白、どっちが良い?」

「白」

「じゃあ俺が黒で先手。はい、どうぞ」

 リカルドは白い石を持って考えている。

「縦、横、ななめに置けるからね。自分の色に挟んで色を変える」

 リカルドは慎重に一個石を白に変えた。
 そこからはサクサクとゲームは進み、俺は隅を取った。

「角っこは隅と言って、はさめない。じゃあ、続けよう」

 俺は三つ隅を取り、リカルドに勝利した。

「こんな風に、隅を取ると有利な場合もあるよ」

「なるほどな。よし、もう1ゲームだ」

 リカルドは次に隅を二つ取って俺に勝利した。
 
「やった、やっと勝てたぞ」

「リカルドは覚えが良いね。よぉし、俺も頑張るぞ」

 次は俺の勝ち、その次はリカルドの勝ち。
 そんなふうにゲームは続き、リカルドの勝ちが多くなってきた。
 リカルドは超真剣だ。
 勝負ごとが好きなんだろう。
 そしておやつ時。

「紳士の遊び場に行ってみる? あと、おやつ時だから、チョコレート屋ピスタチオに寄ろうよ。エクレア食べたい」

「いいぞ。行こうぜ。オセロは面白いな。簡単だが奥が深い。こりゃあ支配人も気に入るぜ」

 俺達はオセロを持って家を出た。
 手を繋いでチョコレート屋ピスタチオまで歩く。
 道すがら、もっとおやつの屋台が欲しいとリカルドは言っていた。

「いしや~きいも、おいも~。おいしいおいもだよ~。いしや~きいも~。おいも~」

 聞こえてきたのは、石焼き芋の屋台の歌だった。

「んっ? 聞き慣れない歌だな」

「石焼き芋の歌だよ。石でさつまいもを焼いてて、甘くて美味しいよ」

「よし、買おう。店主、二本くれ」

「まいど。銅貨4枚です」

「どう、うまくいってる? この人は俺の夫だよ」

「オーナー。旦那さん、どうぞ。常連客も出来ましたし、かなり売れてますよ。この移動販売も評判が良いんですよ」

「そうなんだ。それはなりよりだね」

「オーナー。俺みたいに歌を歌わせて、違う甘味の屋台を出せませんか? 常連客に強請られてるんですよ」

「いいよ。今違う店を作ってるから、その次に着手するよ」

「やった。じゃあ、楽しみに待ってますね」

 俺達は石焼き芋をかじりつつ、歩き出した。

「甘くてほくほくしてて、本当にうめえな。ああやって住宅街回ってんのか」

「うん。おやつの屋台って少ないんだね」

「ドライフルーツ入りの何か、がおやつとして定義されて長いんだ。そんなに美味くねえんだよ」

「そうなんだね。俺はドライフルーツ入りの何かはチョコレートだけだなあ」

「ハヤトは自分の味を探求すりゃあいい。美味い菓子に文句はつけられねえよ」

「うん、ありがとう。リカルド」

 チョコレート屋ピスタチオに到着した。
 俺はホットチョコレートとエクレアを二人分頼んだ。

「ちょっと厨房を見てくるね」

 俺は席を立って、キッチンに入った。

「あ、オーナー。お疲れ様です」

「お疲れ様。旦那とエクレアを食べに寄ったんだ。お客さんも結構入ってるし、順調かい?」

「客入りは良いですよ。固定客もいますし、持ち帰りも結構売れてます。エクレアもオペラも、評判良いですよ」

「それは良かった。マカロンの方はどうだ?」

「生地があと一歩って感じですね。もうちょっと待って下さい」

「わかった。ゆっくりやってくれ」

 俺は席に戻り、ホットチョコレートを飲んだ。

「あー、うまい。オセロで頭使ったから、染み入るよ」

「エクレアも美味かったぞ。チョコとカスタードって合うんだな」

 俺もエクレアにかぶりついた。
 甘いチョコとカスタードのハーモニーが絶妙だ。

「うん、美味しいっ。ペロリと食べられちゃうね」

 俺はホットチョコレートを飲み干して、持ち帰りのチョコレートを買った。

「また来て下さいね、オーナー」

 アレックスに見送られながら、俺はリカルドと店を出た。
 裏路地を通り抜け、二階に上がる。
 そこは紳士の遊び場。

 すかさず支配人がやってきた。

「いらっしゃいませ、リカルド様。今日はボウリングでしょうか?」

「いや、別件だ。儲け話を持ってきたぜ」

「かしこまりました。応接室へどうぞ」

 応接室でお茶を出され、お茶に口を付ける。
 話を切り出したのは、リカルドだった。

「これはオセロっていう盤上ゲームだ。石は黒と白があり、自分の色が多い方が勝ち。実にシンプルなゲームだよ。早速やってみよう」

 リカルドは支配人に説明しつつ、一手ずつ慎重に打った。

「うーん、負けました。後半、随分ひっくり返されましたね」

「俺は隅を三つ取れたからな。この角っこのことだ。ここを取ると有利な場合がある」

「わかりました。もう一度、今度はハヤト様とやらせてください」

「良いですよ」

 支配人は隅を二つ取って、俺に勝利した。

「支配人もやるじゃねえか」

「これは面白いゲームだと思います。ボウリングと共に広めていきますよ」

 ずっしり重たい麻袋を貰った俺は、しっかり鞄にしまった。
 支配人はボーイを呼び、リカルドとオセロを対戦させた。
 初めてなのにボーイはリカルドに勝利した。

「うおお、やったぜ!」

「くっそう……!」

「リカルド様、このボーイは特別盤上ゲームに強いんですよ。さて、盤をお借りして宜しいですか?」

「いいぞ。対戦だな?」

「はい。まずは盤上ゲームが好きなお客様に声をかけてみます」

「リカルド様、この盤は買い取れませんか?」

「いいぞ。小間物屋にあと二つオーダーしてある。明日出来上がる予定だ」

「ありがとうございます。では、しばし対戦させてきます」

「俺は1ゲームだけボーリングしてくるかな」

「良いんじゃない? 俺は観戦してるよ」

 ボウリングを見に行くと、丁度ストライクを出した男性がおり、リカルドの挑戦を快諾した。

 リカルドはパーフェクトで圧勝した。
 ギャラリーにも拍手され、良い気分でリカルドは戻ってきた。

 オセロを見に行くと、こっちも人だかりになっていた。
 ちらりと盤上を見ると、黒が優勢。
 支配人の強いと言っていたボーイが勝っていた。
 ゲームは進み、白の負け。

「ちくしょう、負けたっ」

「次は俺が白だ! 相手は誰がやる?」

「俺がやる!」

 リカルドはお客さんと対戦だ。
 俺はじっと対戦を見守った。
 
 さて、熱中するリカルドは3ゲーム終わってやっと離れた。
 二勝一敗。
 なかなか全勝は難しそうである。

 時刻は夕飯時を過ぎたので、家に帰る事にする。
 手を繋いで歩きながら、ぽつり、ぽつりと話をする。

「オセロは奥が深いな、ハヤト」

「うん。覚えるのはすぐだけど、極めるのは一生かかるって、どこかで読んだよ」

「なるほどな。明日からハヤトは仕事だろ。俺、支店に顔出してアラブレヒトにオセロを教えるわ」

「それはいいね。アラブレヒトは行商に持って行くかもしれないものね」

「そうだな。話の種にも良いだろ。アラブレヒトはライバルだからな。力量が気になる」

「ふふっ。アラブレヒトもそうだと思うよ。二人は良いライバルだね」

 リカルドはにっこりと笑うと、俺を抱き締めた。

「ハヤトが繋いでくれた縁だ。大事にするさ」

 リカルドのこういうところ、好きだなって思う。
 俺は月明かりの下、リカルドと手を繋いで、ゆっくり歩いた。
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