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津倉佐々美、にゃんこに触ってもいいかな?
しおりを挟むいやーバカだった。
たしかに「カラダニショウゲキガハシル」と聞いていた。
しかしこんなにすごいスピードで振り回されるのを知っていたら絶対断る!頑固断る!
津倉佐々美は地面に横たわったままそんなことをグルグル考えていた。
断るもなにも、もう異世界に来てしまったのだから、ここで後悔してもしかたがない。
死人のような青白い顔で起き上がった津倉佐々美は、ようやくあたりを見回してみた。
死ぬ思いでやってきた異世界がどうなっているか。
「なんじゃいこりゃ」
誰もいないので無駄だとは思うけど津倉佐々美は声に出してみた。
自分の横たわっていた場所はアスファルトの車道以外の何物でもなかった。ちゃんと道は続いていて、人のものとしか思えない家もちらほら見える。
波の音が聞こえる。お、なんだか潮の香りもする。
ふらつく躰を立て直して立ち上がってみる。
潮の香りのする方へと人形のようにぎこちなく首を向けた。
海が見えた。
海沿いにはコンクリートで桟橋が作られていて、小さな港の様相になっていた。
異世界というと平原、森、岩場、西洋風の城というステレオタイプの概念が思いつくが、そのどれとも違う風景。
「きっとここは島なんだ」
いつかテレビで見た小さな島の様相そっくりに見えた。
さっきまで気が付かなかった波の音がザバーン、ザバーンと耳の奥一杯に広がった。
津倉佐々美はあたりの様子を見ようと歩き始めた。
路地裏から民家と思しき建物の中を窓越しに覗いて見る。電気も付いていない状態で中は良く見えない。
「誰かいませんか~」か細い声で問いかけてみるが何も反応はない。
津倉佐々美はふーっと息をついた。
気が付くと横にデブ猫がいた。津倉佐々美がうなだれながら建物の前の低い塀に腰をかけると横にすかさずデブ猫も腰かける。
「いるんだ……異世界にも。猫」
津倉佐々美の独り言に呼応するようにデブ猫がこちらに顔を向ける。なんとなく目が合う。
うふ。モフモフ…癒されそう。
「よしよし、デブ猫ちゃん。触ってもいいかな?」
津倉佐々美が手を伸ばしデブ猫に触れようとしたその時!
「で、どっからきたん?」
「…!!」
何かの間違い?いや、たしかにデブ猫がしゃべった。
「自分、猫と喋んのはじめてか?」
「え…えええええええっ!!」
津倉佐々美はすっとんきょうな声をあげてその場を飛びのいた。
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