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津倉佐々美、にゃんこに反撃していいかな?
しおりを挟む津倉佐々美、異世界に来て、まさかこんな非科学的なものの餌食になっちゃうとは想像もしていなかったよ。
「お嬢ちゃん、猫タマ様にビビっちゃった?」
「はい…もう、なんだか、明日からの活力が一気にそがれた気がしてしまって、まったく生きた心地がしないというか」
「嘘や」
は?
「ひゃひゃひゃー。お前簡単に騙されるな。そんなんやったら、オレオレ詐欺でいつかやられるんとちゃうか?」
おい! おっさん、嘘ってどういうことだ?
「嘘は嘘。わしの創作。けっこうええ感じやったやろ。作家になれるやろうか。祭りの催しにこれで夏の怪談でもやたろっかな?子供らビビッておもろいで」
こいつ…。
なんか、変な標準語話すと思ったけど、嘘だったのかー!
しかし、一体どこまでが創作なんだー!
「お嬢ちゃんほんまにビビり魔やな。かわいそうに」
く、く、く、悔しい~
「おお、お嬢ちゃん、やるか?わしの猫パンチと猫キックの威力、とうとうお披露目するときが来ちゃった?お嬢ちゃん、仕掛けたのはお前や。泣いても知らんで。恨むなや!」
おっさんは軽くジャブを繰り出した。
ぐふふ…。
おっさん、この試合、この津倉佐々美がもらったぜ!
必殺―!!猫じゃらし!!
津倉佐々美は6匹ちゃんをエキサイティングさせるために作った特製猫じゃらし(じゃらしの先端に目が光るネズミのぬいぐるみつき)を取り出し、ペシペシと振りかざした。
「にゃおおおん!」
デブ猫〈ショコラ〉はおっさんらしからぬキュートな叫び声で猫じゃらしに飛びついた。
反射神経って怖い…。
「お嬢ちゃん~!まいったー。やめてくれー!うひゃひゃひゃひゃー!」
デブ猫〈ショコラ〉は津倉佐々美の振りかざす猫じゃらしに、右、左と翻弄され、行ったり来たりしている。
へへへー。
だてに6匹ちゃんを子守りしていたわけじゃないわよん。子守りというつらく長い単調な日々の中にも、6匹ちゃんが飽きずに遊べるよう、時に強く、時に弱く、絶妙な強弱をつけ、野生の狩本能を刺激しつつ、日々の生活の中で、学びの場を提供してきた、この津倉佐々美流、子猫の健やかな成長なおかつ野生の本能をはぐくむ猫じゃらしの遊び方メソッドがこんなところで役立つなんて。世の中、役立たないものなんてないってよくいったものだ。
「お嬢ちゃん!!助けてー」
おっさんはすでに息が上がっていたけれど、動きは止められないらしい。おなかのぜい肉がタプタプと動く姿は醜いとしかいいようがなかったが、それでも体は強制的に動いてしまうらしい。
わあ、怖あい。強制ライザップだわあ。
「お嬢ちゃん~!助けろー!もう止めてくれ!!」
「それ、反復横跳び、右、左、右、左、もっと機敏に1、2、1、2!」
津倉佐々美は掛け声をかけてデブ猫〈ショコラ〉をけしかけた。
「わ、悪かった。わしが悪かったー。降参や。お前がビビりで、おしっこちびりそうになった話は誰にもせーへんからもう許して!」
「誰がちびったんや!!ちびってへんわ!」
おお、思わず関西弁がうつってしまった。でも、デブ猫〈ショコラ〉のあまりにも醜い姿はこれ以上もう見るに堪えられないので、このへんにしてやった。
デブ猫〈ショコラ〉はエキサイティングしすぎたようで、しばらくは立ち上がれなかったようだ。
それにしても…。猫に猫じゃらしかあ。ぐふふ。いいもの見つけちゃった。
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