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水島信也、にゃんこにいいように使われている気がするパート5。以上。
しおりを挟む「今日のミーコは廃人化しちゃっています。だって、だって…。ううう。月9の斎藤カヅマくんが佐々木マリンちゃんと結婚しちゃったんだもの。私のこと好きだってテレビ画面から合図したんじゃなかったの?佐々木マリンちゃんに言いたいです。斎藤カヅマくんは浮気症だから気を付けて…」
「カットカット!ミーコ、お前何言ってるんだ!ばっかじゃねーの?」
ううう、うあああん。
「水島信也なんかにそんなこと言われたくないわよ。あんたみたいな童貞には失恋した女子の気持ちなんて分かりっこないのよ。もう、人生どん底よ。もう斎藤カヅマくんは戻ってこない。番組も終わっちゃったんだから。カヅマロスなんだから。もう、斎藤カヅマくんとと鼻チューすることもないんだから。ううう」
「ミーコちゃん、泣かないで。ボクがいるでしょう。明るくいきましょう。みんなミーコちゃんの明るい笑顔を待っているんですよ。ボクのことミーコちゃんの彼氏としてみんなに紹介してくださいよ。ね、涙を拭いて。これが終わったら行きたいっていっていたまたたびバーに行きましょう」
「クロちゃーん、ミーコはクロちゃんだけが頼りよー」
爽やか男子猫〈クロ〉がよしよししてくれたので、女子力猫〈ミーコ〉も少し気を取り直した。
そう、私は女優、私はアイドル。つらいことがあっても涙は見せないの。
「みんな!元気にしている?ミーコは元気です!今日はミーコの彼のクロちゃんを紹介します。クロちゃーん!」
「はあい、ボク、クロちゃんです。ミーコちゃんのボーイフレンドな・ん・だ♡よろしくね。クロちゃんはかわいい猫動画上位ランキングした伝説の黒猫ちゃんのクロちゃんなんだよ。みんなクロちゃんの動画も見てみてね。萌え萌えきゅんきゅんしちゃうから」
「それからみんなにお知らせです。ミーコとクロちゃん、仲良しミコクロですが、ミーコ、改名します。クリスティーヌになりました。クロとクリスティーヌのクロクリでよろしくね」
「ええ、ミーコちゃん改名するんですかあ?」
「そうなの、ミーコなんてちょっとダサいじゃない?やっぱり女の子はいつもときめいていなくっちゃ。名前だってそう。名前がときめいていれば、私きっと自分自身もときめくと思うの」
「なーるほど。それはいい考えだね」
「そうでしょ。うふふ」
「ボクの大事なクリスティーヌちゃん、ボクたちは仲良しだもんねー」
「そうそう、だからお手々をつなぎましょう」
「じゃあ、そのまま一緒に踊りましょう」
「まあ、素敵」
「ずんたったーずんたったー。はい、クリスティーヌちゃんくるっと回って~」
「きゃ~。うふふ」
あほか。クロもよくやるよなあ。あいつキャラ変してる。相変わらず腹黒い。
でも、ユーザーはこういう仲良しキャラを喜ぶんだろうねえ。バーバラクロとかばっかじゃねえの?
あれ、ババクロじゃなかったっけ?
でも、PV数は確実に伸びてやがる。恐るべし。
俺の方が感覚がおかしいのかなあ。
「わあ、ここがまたたびバーなのね。大人な気分♡」
「クリスティーヌちゃん、ようこそまたたびバーへ」
爽やか男子猫〈クロ〉が女子力猫〈ミーコ〉をエスコートする。
か、かっこええじゃねえか。
爽やか男子猫〈クロ〉はまるで紳士のようなふるまいだった。
実は、爽やか男子猫〈クロ〉が女子力猫〈ミーコ〉の彼氏で出るようになってPV数も倍以上伸びた。単純にいえば、爽やか男子猫〈クロ〉が出演することで別の客層も取り込めたということなんだろうなあ。
今日はまたたびバーのロケに来ていた。女子力猫〈ミーコ〉が大人の階段を上るシリーズらしい。シリーズってなんだって感じだけど、数字とってるやつらにはもう文句いえない。
またたびバーはレンガ造りの雰囲気のある洋館のようだった。
異世界にこんなところがあったなんて驚きだけど、あるんだなあ。
大人の階段上るじゃねえけど、俺もちょっとビビっちゃうぐらいに大人の匂いぷんぷんだった。それにしてもここのマスター。こんなダンディーな猫いたっけなあ?マスターはベストをきちんと着込んでいた。いるんだねえ。どんなところでもこういう人が。いや訂正、猫が。
バーのマスターは白い初老の猫だった。いい感じに枯れていて、年季の入った様子がうかがえた。
またたびバーと言えば、シガーバーのように思っていたけれど、まさにそんな感じだった。
マスターは氷を丸く削っていた。
ミーコとクロはカウンターに座った。
「マスター、クリスティーヌちゃんにカクテルを」
「どんなカクテルになさいますか?」
「そうだなあ。今日のクリスティーヌちゃんのお洋服に合わせて、ジンベースのグリーン色で甘めなものをお願いできますか?」
「かしこまりました」
「僕は、そうだなあ。ソルティードックで」
「わあ、クロちゃんかっこいい!素敵!」
「ふふん、クリスティーヌちゃんをエスコートするんだからそれぐらい常識ですよ」
「うふ。クロちゃんだーいすき」
「ボクもクリスティーヌちゃんだーいすき」
相変わらずいちゃいちゃしている二人を映している自分はなんだか悪趣味のように思えてきた。しかし、この猫たち、まだ子供と思ってたけどもう大人なの?お酒、テレビ的にいいんですかね。かといって、俺が猫界の成人がいくつかなんてわかるわけがなかった。
またたびは色んな種類があるようで、ふたりはそこから2つ選び出して、お酒にパラパラとかけた。なんか背徳的。いけない遊びをしているように見えた。いや、ただのまたたびですから大丈夫。クロ的には炎上を狙っているみたいだけど、ミーコ的には…あいつは何も考えてないだろうなあ。あいつのことだから、わあ、またたびバー、大人みたい、行ってみたーいぐらいなもんだろ。
「わあ、私なんだか酔ってきちゃった。ふらふらするー」
女子力猫〈ミーコ〉はおつまみのシーチキンサンドをかじりながらそんなことを言っていた。
「ふう。ボクだって、どうしたらキャラが作れるか悩んでるんだよ」
「クロちゃん?どうしたの?」
「ボクなんてボクなんて…。どうせボクなんて…」
爽やか男子猫〈クロ〉、泣き上戸かよと水島信也は心の奥で突っ込んだ。
異世界も夜が更けてきていた。
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