【完結】俺のばあちゃんがBL小説家なんだが ライト文芸大賞【奨励賞】

桐乃乱

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第二章

【三】星夜ー赤い絨毯と短期留学生⑤

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「星夜!」

 俺に向かって歩いてこようとした王子は、校長先生の熱烈な歓迎に阻まれてしまった。太鼓腹の校長、ナイス!

「ようこそ、アジャール王子。紅葉学園の教師と生徒一同、心より歓迎いたします!」

 教師から花束を受け取って挨拶を交わす王子の横には、側近たちが控えていた。

「星夜君、王子と知り合いなのね」

 月子ちゃんの言葉に頷くと、海人が俺をレッドカーペットから遠ざけた。生徒達はみな、王子に釘付けだ。

「あいつが虐めの元凶なのか? もしそうなら、すぐ帰ろう」
「いや、彼はむしろ庇ってくれて、今度は妬まれた」
「友達なの?」
「いいや、俺は珍獣扱いされたな」
「「珍獣⁉」」
「君たち、カーペットに戻りなさい」

 警備員に注意されて、渋々元の場所に……。

「星夜、大丈夫か」
「ああ」
「俺たちが一緒にいるからな」
「そうよ、側を離れないわ!」
「ありがとう。海人、月子ちゃん」

 そうだ。俺は独りぼっちじゃない。もう俺は大人しいままの珍獣じゃないぞ!


『星夜。私と離れても、随分と元気そうじゃないか』
『お久しぶりです、アジャール王子。はい。毎日がとても充実しています』

「若生君が宇宙語しゃべってる……」
「地球人じゃないのか?」

 クラスメイトが勝手なことを言い出したぞ。

「いや、あれはアジャール語じゃないかな」

 紀文先生が生徒達の質問に答えていた。まずい。ついうっかり、スパルタ教育の残骸が出てしまった。

『ルシアン王子と呼べ、と言ったじゃないか』

「いいえ。俺には恐れ多いですよ」
「ナゼ、ニホンゴデハナスノダ」

「はじめまして、アジャール王子。ようこそ、紅葉学園へ。星夜君の友人で、萩野海人と申します。こちらは妹の月子です」

「はじめまして。アジャール王子。仙台はとても暮らしやすい土地です。ぜひ観光なさってはいかかでしょう」

 萩野兄妹のそつがない挨拶を受けて、王子は俺を解放した。

「星夜ノ、トモダチ?」

「はい。小学校時代からの付き合いです。卒アル見たいですか?」
「お兄様⁉」

 海人、お前何言っちゃってるのー?

「ゼヒ、ミセテクレ」
「さあ、アジャール王子。教室はこちらです」

 紀文先生の案内で、生徒やアジャール王子一行が階段を上がっていく。教室ではアジャール王子の自己紹介タイムが設けられて、大海原よりも青い瞳に女子生徒はメロメロだった。

「ハジメマシテ、アジャールカラキタ、ルシアンデス」
「「きゃー!」」
「しっ、静粛に!」
 


 月子ちゃんはアジャール語で交わした会話を俺から聞き出すと、また「ブロマ~ンス!」と口パクで叫んでいた。

「あれはどうやら、腐女子道のたしなみらしいぜ」

 海人がこっそり教えてくれた。マジかよ。
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