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第2章 二人の誤算
迫り来る期日 vi(William)
しおりを挟む毒蛇のアレクサンダーが図々しくもセリーナの膝の上に乗り、しかも繁殖期でもないのに発情の気配を漂わせていて驚いた。相当セリーナを気に入ったらしい。
だからって僕より先にセリーナに抱かれて寛いでいるなんて有りえない。蛇のくせに手が早すぎる。
人を揶揄いながらも、あっさり立ち退いていったので、あれは冗談だったのだと思うが。まさか蛇が人間に性的な興味を抱いたりするんだろうか……そんなこと、ある訳ないよな?
野次馬みたいに群がってきていた輩を排除して戻り、最後の一匹を追い出したことで、ようやくセリーナと二人きりとなる。
ついさっきまで様々な動物が興味本位で覗きに来ていたわけだが、追い払うためとはいえ余計な約束を交わしてしまった。
契約すると急に俗っぽくなるのだが、人事に聡くなるので便利だと思っていた。だが、こういう場面では、却ってそれが邪魔になる……他人に覗かれているような気分になってしまう。
セリーナとの時間は誰にも横槍を入れられたくはない。
ましてや彼女の蕩けた表情を見られたり、可愛らしい声を聞かれたりするのは絶対に嫌だった。
「リーナ、こっちで温まろう。おいで」
暖炉の前に予備の織物を何枚か重ねて敷きつめる。
隣に座ったセリーナの手を取って擦り合わせていると、纏っていたショールを広げ、僕も一緒に包んでくれた。
「寒くないか?」
「平気よ。ウィルは? 寒くない?」
「僕は慣れてるから……」
「ここへはよく来るのね?」
「手入れがあるから、たまにな……でもほとんどはアベルとアデレに任せている。あいつら器用だから」
なんとなく言い訳している気分だった。
「さっきのヘビさんはなんという名前なのかしら」
「……アレクサンダーだよ」
「強そうな名前……男の子だものね。でも、つぶらな瞳が可愛らしい見た目だったわ」
セリーナが楽しそうに呟いた。
「全然そんなことないよ。中身は意地悪なおじさんだし。さっきも僕のことを馬鹿にして嗤ってた」
「そうなの?」
「うん。なのに図々しく若い娘に色目を使うなんて、許せないよな」
「私のこと、彼は何か言っていなかった? 一応ご挨拶したつもりだったのだけど……」
「……いい娘だって褒めてたかな」
正確には〝いい女だ〟と言っていた。
捕食者の台詞なのが怖い……冗談でもやめてほしい。
「まぁ、嬉しいわ。最初に出迎えてくれた方々にも、できれば挨拶したいわね。さっきは言いそびれてしまって……また会える?」
「会えるけど……でもあんまり撫でたら駄目だからな」
「それはどうして?」
「オスが興奮して発情してしまうんだよ」
「え? でもアベルには普通にしてるわよね?」
「あいつには受け入れ先が待ってるからな」
「そ、そうなの……」
「そうだよ。リーナが触れて良いのは僕だけだ」
そう言って彼女の腰を抱き寄せる。こういうのは僕だけの特権だ。
暖炉をずっと見つめていたセリーナと視線がかち合って、透き通るような淡青色の瞳に揺れる炎が映り込んでいる。その様子に思わず見入る……
「ウィルも……私が撫でたら興奮するのかしら」
セリーナが不思議そうに言った。
「……それは、するだろう当然」
「そうなの……」
どことなく上の空な返事だった。
「信じてないのか?」
「違うわ。私もそうなのかしらって考えてて……」
「…………」
「……でも意外と平気じゃないかしら」
「……じゃあ、試してみるか?」
抱き寄せ、腰に回していた腕をゆっくりと動かして、誘うように撫でてみる。
実はもうすでに興奮し始めているから、試すも何もないとか……そういう野暮なことは言わない。
体裁くらいは整えたいじゃないか。
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