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人間至上主義国から人間至上主義国へ嫁入り
結婚の申し入れは受けたが、王女の意志を尊重
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「さて、立会人として、判定は。」
と言って、アウラングゼーブは、しばし考えるように間をとった。周囲は、少し緊張して、彼の次の言葉を待った。サラス王女の嫁入りかかかっているのは、誰もが知っていた。そのことに、彼女のために心配しているのは、少数だけしかいなかった。
「見てのとおり、引き分けですな。サラス、異存はないな?ガマリエル陛下はご納得いただけますか?」
「・・・。」
まだ、ずきずきする頭を押さえて立ち上がったサラスは無言だった。かなり悔しそうだった。同様に立ち上がったガマリエルは少し苦笑しながら、
「アウラングゼーブ国王陛下の判定に、異存があるはずはありません。」
と答えた。それを聞いて、あらためて自分に視線が集まっているのを感じたサラスは、
「私も異存などはありません。」
と押し出すように答えた。
それを聞き、それを口にしたサラスの姿を見て、
「我が異母妹が、陛下に勝てなければ、陛下に嫁入りするというのが試合の取り決めでしたな。しかし、陛下が負けた場合の見返りが定められておりませんでしたな。これは少し、不平等で、問題がありますな。どうですかな、結婚の申し入れは、ルーガム王国国王として、正式にお受けする。ただし、嫁入りは当人、我が異母妹サラスの気持ちでということではどうでしょうか?」
と意味深いような笑みを浮かべて提案してきた、突然。それに負けないくらい、怪しい笑顔を浮かべたガマリエルは、
「陛下の御提案に異存があるはずはありません。私としても、私を嫌っている女性を無理やり嫁にするほど、自信過剰ではありませんから。」
とあっさり答えた。
"じゃあ、はっきりと断ってやるから、見ていらっさい。"
サラスは思ったものの、そうはできなかった。
「そうです。陛下のご意向は、王女殿下をナルシス王国国王ガマリエル陛下の王妃として嫁いでもらうということです。」
黒人の大宰相は、翌日、サラス王女母子の住む、というより幽閉されている小城にやってきた。
かなりの格の高い客と親密な話をするための、その城では広くはないが豪奢な造りの部屋で、サラスは母とともにも大宰相とテーブルを挟んで向かい合って座っていた。
「国王陛下は、私とナルシス王国国王ガマリエル陛下との結婚をお望みなのですか?」
というサラスの質問に、黒人の大宰相は、静かに、さきの言葉を返した。
「私は、嫁に行くつもりはありません。母上を守りたいのです。そ、それに、国王陛下も私の意志で決めるようおっしゃったではありませんか?」
サラスは、動きやすい、つまりは戦いやすい装いだった、一応王女に相応しい服だったが。母は、妃として相応しいが、質素な感じのドレスを着ていた。大宰相は、国王からの正式な使者に相応しい礼装だった。
彼は、ため息をついてから、声を落として話始めた。
「王女殿下。この小城での生活が何時までも許されているとお思いですか?お母上をお一人で守ることができると信じておられるのですか?陛下は、寛大なお方ですが、国の統治にとって不都合であれば、国益に沿わなければ、冷酷な手段を取ることを躊躇しなかお方です。お二人は、近いうちに・・・そうなるでしょう。ある意味、これが最後のチャンスです。ナルシス王国は徹底した人間至上主義の国と言われておりますが、そうではない・・・エルフなども無事に暮らしているとの話もありますし・・・実際、ナルシス王国は、お母上も、さらにはエルフ、ハーフエルフの使用人達も引き取り、満足できる生活を保障すると約束しております、王女殿下が嫁入りした場合は。」
彼の表情は、誠意を感じさせるものだった。
「ハーフエルフの私を望むのは、神への生贄のためだという話もありますよ。」
とサラスは指摘した。実際、どういう筋の者が言い始めたのか不明だが、
「人間至上主義のナルシス王国が、ハーフエルフの花嫁を求めるはずはない。もしかすると、神への犠牲に捧げるつもりなんじゃないか?」
「エルフは夜の神殿に贈られる、という話もある国だものね」
という噂がサラスのところまで届いていた。
「そのことは、かの国王に質問したところ、笑って、自分の国は神に生贄を捧げる慣習はない、とお答えになりました。」
「それを信じろと?」
「私は、私はこれ以上王族の方々の処刑を見たくはないのです。もしかすると危険かもしれませんが、お二人が生きられる、天寿を全うできる可能性がある方をお勧めしておるのです。」
と言って、アウラングゼーブは、しばし考えるように間をとった。周囲は、少し緊張して、彼の次の言葉を待った。サラス王女の嫁入りかかかっているのは、誰もが知っていた。そのことに、彼女のために心配しているのは、少数だけしかいなかった。
「見てのとおり、引き分けですな。サラス、異存はないな?ガマリエル陛下はご納得いただけますか?」
「・・・。」
まだ、ずきずきする頭を押さえて立ち上がったサラスは無言だった。かなり悔しそうだった。同様に立ち上がったガマリエルは少し苦笑しながら、
「アウラングゼーブ国王陛下の判定に、異存があるはずはありません。」
と答えた。それを聞いて、あらためて自分に視線が集まっているのを感じたサラスは、
「私も異存などはありません。」
と押し出すように答えた。
それを聞き、それを口にしたサラスの姿を見て、
「我が異母妹が、陛下に勝てなければ、陛下に嫁入りするというのが試合の取り決めでしたな。しかし、陛下が負けた場合の見返りが定められておりませんでしたな。これは少し、不平等で、問題がありますな。どうですかな、結婚の申し入れは、ルーガム王国国王として、正式にお受けする。ただし、嫁入りは当人、我が異母妹サラスの気持ちでということではどうでしょうか?」
と意味深いような笑みを浮かべて提案してきた、突然。それに負けないくらい、怪しい笑顔を浮かべたガマリエルは、
「陛下の御提案に異存があるはずはありません。私としても、私を嫌っている女性を無理やり嫁にするほど、自信過剰ではありませんから。」
とあっさり答えた。
"じゃあ、はっきりと断ってやるから、見ていらっさい。"
サラスは思ったものの、そうはできなかった。
「そうです。陛下のご意向は、王女殿下をナルシス王国国王ガマリエル陛下の王妃として嫁いでもらうということです。」
黒人の大宰相は、翌日、サラス王女母子の住む、というより幽閉されている小城にやってきた。
かなりの格の高い客と親密な話をするための、その城では広くはないが豪奢な造りの部屋で、サラスは母とともにも大宰相とテーブルを挟んで向かい合って座っていた。
「国王陛下は、私とナルシス王国国王ガマリエル陛下との結婚をお望みなのですか?」
というサラスの質問に、黒人の大宰相は、静かに、さきの言葉を返した。
「私は、嫁に行くつもりはありません。母上を守りたいのです。そ、それに、国王陛下も私の意志で決めるようおっしゃったではありませんか?」
サラスは、動きやすい、つまりは戦いやすい装いだった、一応王女に相応しい服だったが。母は、妃として相応しいが、質素な感じのドレスを着ていた。大宰相は、国王からの正式な使者に相応しい礼装だった。
彼は、ため息をついてから、声を落として話始めた。
「王女殿下。この小城での生活が何時までも許されているとお思いですか?お母上をお一人で守ることができると信じておられるのですか?陛下は、寛大なお方ですが、国の統治にとって不都合であれば、国益に沿わなければ、冷酷な手段を取ることを躊躇しなかお方です。お二人は、近いうちに・・・そうなるでしょう。ある意味、これが最後のチャンスです。ナルシス王国は徹底した人間至上主義の国と言われておりますが、そうではない・・・エルフなども無事に暮らしているとの話もありますし・・・実際、ナルシス王国は、お母上も、さらにはエルフ、ハーフエルフの使用人達も引き取り、満足できる生活を保障すると約束しております、王女殿下が嫁入りした場合は。」
彼の表情は、誠意を感じさせるものだった。
「ハーフエルフの私を望むのは、神への生贄のためだという話もありますよ。」
とサラスは指摘した。実際、どういう筋の者が言い始めたのか不明だが、
「人間至上主義のナルシス王国が、ハーフエルフの花嫁を求めるはずはない。もしかすると、神への犠牲に捧げるつもりなんじゃないか?」
「エルフは夜の神殿に贈られる、という話もある国だものね」
という噂がサラスのところまで届いていた。
「そのことは、かの国王に質問したところ、笑って、自分の国は神に生贄を捧げる慣習はない、とお答えになりました。」
「それを信じろと?」
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