厄介払いされたハーフエルフの王女は嫁ぎ先の人間至上主義国で男装して国王になる

転定妙用

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人間至上主義国から人間至上主義国へ嫁入り

嫁に行きます

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 大宰相は、元々亡き前王太子の下で宰相に抜擢され、敏腕を振るっていた。前王太子の文化事業にも大きく関与し、彼も自他共に認める大文化人だった。他方面にその優れた才能を発揮していた。その彼だが、王太子のことを自分と肩を並べる文化人と認めていたという。2人は二人三脚で、政治に、文化に力を注いでいた。第三王子アウラングゼーブの反乱で、彼は前王太子を裏切ることはなかった、数少ない人物でもある。ただし、ともに最後まで抵抗するのでもなく、まして殉死することもなく、離れていった。武力を持たなかったのだから当然とも言えたが、そのことで彼の態度を不審に見る者も多い。ただし、かれはアウラングゼーブが勝利を確実にした時点で、彼の下に臣従することも、媚をうるようなことも、地位の確保を願うこともしてはいない。その彼を、アウラングゼーブは大宰相として抜擢したのである。彼は、彼の招集に応じたのである。そして、大宰相として彼の下で敏腕を発揮しているのである。この態度を非難する声もある。
「陛下はかつて敵対した私を国の為であるからと許し、高い地位を与えた。その意気に感じ、私は持てる力を発揮して、お仕えしているのである。名誉とか、富を求めてのことではない。」
と言っているという。

「私は、前王太子殿下を救う事ができませんでした。今また、前王太子殿下と仲が良かったサラス王女殿下を、陛下が処刑されるのを見たくないのです。」
 第二、第四王子のことは言わない。彼らは、アウラングゼーブと国王の座をかけて争って、破れて死んだのであり、自業自得であり、同情する必要はないと彼は考えていた
 ちなみに彼は、前王太子の遺骨の一部を何とか手に入れ、一般人の墓であるが、ちゃんとした墓地にそれを埋葬している。その墓は一般人としては、立派というくらいのものである。アウラングゼーブは、その話を耳にしているが、特に問題視はしていない。

「ですから、ナルシス王国に嫁入りして、母上とともに天寿を全うできる可能性にかけるか、ここに残り確実に死ぬかなのです。どうか生きる方にもがいてほしいのです。」
 彼は最後、頭を下げていた。目からは涙が流れているようだった。

 サラスは、母親の方を見た。彼女が縦に頷いたのを見て、
「わかりました。私と母上と家臣達はナルシス王国に嫁に行ってやりますわ。」
と立ち上がって、叫ぶように答えた。
 これに、母妃は
「?」
という表情。
 大宰相は、小さく吹き出してから、
「嫁に行かれるのは、王妃になられるのもサラス王女殿下お一人ですよ。お母上と家臣の方々は、王女殿下に付き従われて、ナルシス王国に行かれるのですよ。」
と静かな、こみ上げる笑いを抑えて、彼女に指摘した。
「わ、分かっておりますわ。」
と真っ赤になって、椅子に座り直した。
「では、これから剣の練習は半分にして、花嫁修業をしましょうね。」
「は、母上。」
「サラス王女殿下。夫婦仲が悪いと、母上をはじめとして・・・立場も、待遇も危うくなるかもしれませんから、しっかり花嫁修業、ナルシス王国国王陛下に愛されるように努力して下さい。」
 殊更まじめくさった口調で、大宰相が言えば、
「大丈夫ですよ。私達がしっかり躾けますから。」
と笑う母妃。
「・・・。」

「そうですか、サラス王女殿下。アウラングゼーブ陛下も、ご了承、ありがたいことです。」
 大宰相は翌日には、ナルシス王国大使館を訪ね、ガマリエル国王に面会し、彼のサラス王女への求婚がうまくゆき、結婚が了承された、と伝えた。それをいかにも嬉しそうな表情で、ガマリエル陛下は答えた。
「それで。」
「大丈夫です。王女殿下だけでなく、お母上と家臣達も我が国で引き取り、ふさわしい待遇、生活を保障いたします。そのことも改めてお約束します。噂のような、エルフを神の生贄等は我が国にはありませんから、ご心配なく。」
と彼は軽く笑った。それだから心配なのだ、と心の中で大宰相は思った。それで、
「人間至上主義が完璧な貴国のことですから、そのような心配もでるのかと思います。ハーフエルフの王妃を求めるということ自体が不思議ですが。」
「我が国の国制はなかなか複雑で、下手に言うとかえって誤解を招くので、敢えて言わないのですが・・・。私の王妃としては、人間でも、ハイエルフでも、ダークエルフでも、オーガでも問題はないのですよ。サラス王女殿下に決めたのは、あの方が武術にもたけていることが一つ、私があの容姿を気に入ったからです。そして、あの夜、剣を交えてみて、あの方のお心も性格も伝わりましたが、それでますます気に入ったという次第ですよ。」
「そ、そうですか。」
"意外に脳筋だな、この王様は。"と少しあきれるとともに、ともかく本人を気に入っていることに安心した。それでも、
「人間至上主義の国で、人間だけの中で、エルフの住む場所というのがあるでしようか?」
「王宮には亜人はいませんが、王国内の亜人は貴国りもずっと多いですよ。」
「それでは、彼らをどう統治しているのですか?」
 その問いに、ガマリエルはしばし沈黙してから、
「彼らは夜の女王が保護し、守っています。私と夜の女王が争うことはありません。二つの存在は、一体ですから。そのことで対立は存在しませんから、エルフである王女殿下の母上も、エルフ、ハーフエルフの家臣達も安泰なのですよ。」
 ガマリエルの顔からは笑顔が消えていたが、真剣で嘘ではないということが分かるとともに、これ以上の国制に対する質問は応じられないという雰囲気を感じた。
「わかりました。王女殿下と母妃、家臣達のことよろしくお願いします。」
と立ちあがって手を差し出した。ガマリエルも立ち上がって、その手を握った。
「もちろんです。彼女を幸せにいたします。アウラングゼーブ陛下には、いろいろとご配慮いただき感謝申し上げているとお伝えください。」

「そうか。うまくいったか。よくやってくれた。しかし、生贄はないのか?それを望んでいたのだがな。」
 大宰相の報告に、アウラングゼーブは玉座から満足そうに言った。が流石に最後の所は・・・と思った大宰相が、
「陛下。少しご冗談が。」
と窘めた。
「ははは。冗談だ。」
と言って、また大笑いしたのだった。
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