厄介払いされたハーフエルフの王女は嫁ぎ先の人間至上主義国で男装して国王になる

転定妙用

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人間至上主義国から人間至上主義国へ嫁入り

旅立ち

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「美しいお前の顔がもうすぐ見られなくなると思うと、とても寂しいぞ。」
とルーガム王国国王アウラングゼーブが、彼の異母妹サラス王女に言葉をかけたのは、彼女とナルシス王国国王ガマリエルの仮結婚式の時だった。

 正式な結婚式は、ナルシス王国で行われるのだが、その前に結婚ということを確定しておくために、また、国内と周辺国に示すために、一応、仮の結婚式、結婚式の前段?をやっておこうというものだった。仮であるから、初夜はない、翌日には、ガマリエルは本国に向けてルーガム王国を去ることになっていた。それから3か月後に、サラスは母と家臣達、エルフと大部分はエルフとハーフエルフだったが、どうしても同行を希望する人間も何人かいた、を連れてナルシス国に向けて旅立つことになっていた。
 
 仮であるから、本来の王族の結婚式としてはかなり小さい、簡素なものとなっていたが、それでもかなりの招待客が王宮の大広間に集まることとなった。ちなみに費用は、ナルシス王国からの、この結婚に関する婚資の一部から賄われていた。
 新郎新婦が型通り入場する。エルフであるサラス王女の母親は付き添わないし、ガマリエルは異国のことであり、そもそも彼の両親は死去している、両親の付添はない。二人だけでの入場となった。二人は、ナルシス王国の結婚衣装だった。サラスには、ガマリエルから提供されたものである。ほぼひぴったりで、彼女は怖いくらいだった。
 各国大使や国内の有力貴族、将軍、宗教関係者が見守る中、国内最高宗教指導者を前に結婚の誓と口付けをし、結婚の祝福を受けた。そして、その後の祝いの宴となった。

 サラスにとっては、結婚式も"面倒だ"としか思わなかったし、その後はなおさらだった。
「エルフ臭で、嫌われているとばかり思っておりましたが、そのように思っていただいていると知り嬉しく思います。」
 皮肉の一つでもと思い、にっこりし、感動しているかのように、返すサラスだった。
「エルフ臭?そのようなものがあるとは、お前からは感じたことはないぞ。」
と大笑いのアウラングゼーブだったが、
「あの母娘のエルフ臭は耐えられん。」
などと言っていた、彼女らのことが話に登ると必ず。

 彼女に祝いの言葉をかける者達が数多くきたが、エルフは誰一人として来なかった、各部族が招かれていたと聞いていたし、その姿もみたが、彼らはそばにはこなかった。アウラングゼーブの側に仕える、賢者と呼ばれるエルフもだった。特に、そんなことは気にしなかった。彼らは、真っ先に自分達との関係を切ったのである、類が及ばないように。かえって小数ではあるものの、人間達が彼女のことを心配してくれていた。彼女に近いことで立場が悪くなるにも関わらず。
「我らが言うのは・・・。完璧な人間至上主義の国だとか・・・大丈夫ですか?」
「何もできない身がつらいです。」
「ご近況をお知らせください。・・・出来る事なぞたいしたことではないでしょうが・・・。」
と真摯に心配していることが分かる彼らに、
「大丈夫。ナルシス王国国王ガマリエル陛下は、母上をはじめ家臣のエルフ、ハーフエルフの生活の保障を約束してくれましたから。」
とにっこり笑って励ましさえしたのだった。

 そのガマリエルとは、その宴で、彼の侍女に連れられて、別室で一度だけあった。
「な、なにを。」
 いきなり彼は、抱きしめてきたからである。振りほどこうと暴れかけたが、
「大丈夫。これ以上はしないから。」
と彼が耳元で囁いたので、抵抗を止めた。彼は、彼女の体の感触を確かめるように、優しくはあったが、抱きしめた。
「あ、これは許してくれ。」
と今度は唇を重ねて、舌を絡ませてきた。何故か、負けたくないと思った彼女は、舌を自分から絡ませて、自分からも唇を押し付けた。その結果、どちらが口付けを終わらせるかの勝負のように、延々と長い口付けが続くことになった。"も、もうだめ・・・息が・・・何?足もがくがくときた・・・。体が熱くなって・・・。""こんなに情熱的に口付けを返してくるとは・・・それになんていい抱き心地だ。初夜が待ち遠しい。"
「ゴホン。」
と咳払いがして、
「新婚夫婦のお楽しみのところに割って入るようで申し訳ありません。アウラングゼーブ陛下がお呼びなので、愛の抱擁は中断いただけますかな?」
 大宰相だった。黒い顔と対照的な白い歯、威厳を保ちながらも、完全に笑っていた、彼は。
「はあー。」
と慌てて唇を離した二人だったが、唾液の橋ができてしまっていた。それを慌てて吸い込み、手で拭いて真っ赤になったサラスは下を向き、ガマリエルも流石に顔を赤らめて、照れ笑いを浮かべていた。そのまま背を向けて歩き出した宰相の後を追った2人だった。

 そして3か月後。サラス王女の一行を乗せたナルシス王国の大艦と護衛の艦が出航していくのを見送りながら、
「大丈夫だろうか?我が異母妹は?あの夜は大層仲睦まじかったようだが・・・それで他国の嫁が安泰とは限らぬからな。」
とアウラングゼーブが呟くように問うたのに対して、後ろに控える大宰相は、
「出来る限り手を尽くしてみましたが、特に国の中に不満はなく、不安材料はありませんでした。ただ、如何せん、遠い国であり、確実なことは分かりかねます、残念ながら。」
と心配そうな声で言った。
「まあ、もう帰ってこない者の心配をしてもしかたがないか。帰って来てほしくもないが。」
と言ってアウラングゼーブは大声で笑った。そこには、悲しみをごまかすようなものは、何一つ感じられなかった。 
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