厄介払いされたハーフエルフの王女は嫁ぎ先の人間至上主義国で男装して国王になる

転定妙用

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人間至上主義国から人間至上主義国へ嫁入り

ナルシス王国という国は

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「それ以上のことについては、夜の女王からお聞きになるのがよろしいと思います。」
 船内で、ナルシス王国について説明する同国から派遣された、サラス王女の嫁入りの旅路の責任者の女は、度々そのようなことを言って、それ以上の説明を拒んだ。不満顔の王女に対して申し訳なさそうな顔をした彼女は、
「夜の女王の領域に関することは、直接語らないことが、我が国の慣習なのです。」
 すらりとした長身の長そうな黒髪を後ろにうまくまとめた整った顔の、いかにも有能な行政官といった若いなかなかの美人の彼女が、恐縮して、本当に小さくなったように思える程だったので、
「分かりました。このことは、結婚式が終わってからということで・・・夜の女王様という方に直接お聞きいたしましょう。」
と言って、その場を収めることとした。
 説明者の女、マキアはホッとした表情となって、説明を続けることになった。

 サラス王女には、在ルーガム王国ナルシス王国大使自らが出航前に度々訪問し、ナルシス王国について説明し、彼女からの質問に答えていたし、船旅ではさらなる説明と花嫁としての結婚式、その後の初夜に関することから、王妃としての心構え、役割についての説明も加わった。

 ナルシス王国は、位置的にはルーガム王国の西方で隣国どころか遠交近攻の策の遠交の対象になることもないくらい離れており、脅威を感じる相手ではなく、有益な貿易相手国という程度の関係である。かなりの大国で、国土は広く、海洋にも面しているので他国との交易も盛んである。人口は多く、農林水産工業も盛んで、農産水産物の輸出、優れた大小手工業品の輸出も多く、新樹・聖樹から産する物品の輸出も多い。豊かな国ではあるが。魔界、魔族が多く住む地域が国境線と接触しているため、対魔族の前哨戦となっている国でもある。近年のように、強力な魔王が出現し魔族の動きが活発化している現在、その脅威を真っ先に、深刻に感じている国であり、他の諸国にっとてはナルシス王国が魔王軍の侵攻に対する第一防衛線の要の国の一つであると認識されている。

 アスラを王都とするナルシス王国は、人間至上主義の徹底した国だというのが一般的な認識であり、サラスに対してナルシス王国のことを説明した最初の人間の認識もそうだったので、当然サラス王女も同様だった。それ以前には、彼女はナルシス王国など知らなかったし、あの夜紹介されるまで、考えることもなかったからである。徹底した人間至上主義というのはどういうことかというと、ナルシス王国の政府、王宮、軍隊には全く亜人がいないからである。かなり人間至上主義を厳格に進めようとする国でも、亜人が政府、王宮、軍隊などにいない国はない。その最たる者がルーガム王国国王アウラングゼーブである。祖父の改革を否定して、人間至上主義をそれ以前以上に強めた彼ではあるが、身辺護衛にはオーガの武人を置き、賢者としてハイエルフを即金として置いているし、直属の亜人の傭兵隊を持っている。国を統治する上で、有能な、必要な人材は使わなければならない。それに、王や皇帝にとっては、しがらみのある人間よりも、宦官であったり、亜人の方が信頼できる、安心できるということがままあるものである。アウラングゼーブのような有能すぎる程の支配者は、そういう孤独感が強い。それに、大国であれば領内に程度の差はあっても、亜人の部族が必ずいる。彼らを亡ぼすより、税金を徴収し、労役に徴発した方がずっといい。そうなると、少なくとも搾り取れる、働かせる程度に維持するためにそれなりの配慮をしなければならない。
 だが、ナルシス王国ではそうではないという。そのことは、マキアも断言している。
 では、ナルシス王国には例外的に亜人は存在していないのか?というと、
「どこの国よりもエルフをはじめとする亜人の数は、多いはずですし、どこよりも恵まれた生活をしているはずです。厳密に比較したことはありませんが。」
とマキアはこれまた、断言するのである。

「では、例えばエルフ達はどのように生活しているのですか?」
とサラス王女が質問すると、
「エルフ達亜人については、夜の女王の管轄になります。彼らからの徴税や戸籍作成はナルシス王国政府が行っています。」
とマキアは答えるが、
「では、その夜の女王というのはどういう方なのですか?」
と質問すると、マキアは先のような態度をとるのである。

 これには何か、ナルシス王国にとって触れられたくない秘密があるのではないかと、サラスは感じた。
"触れられたくはない秘密とはなんなのだろうか?どうも夜の女王は、ナルシス王国の下部機関というわけではなく、独立した存在のような感じがするわ。もしかしたら、夜の女王と協力して人間至上主義の国を改革できるかもしれない・・・。"と漠然と思い始めていた。 
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