聖女を追放した国は悲惨な運命が・・・なんで悲惨な状態にはならないのよ!

転定妙用

文字の大きさ
53 / 65
新たな戦い?

他の可能性はあったろうか?

しおりを挟む
"わしも悪党だな。神よ、哀れな私をお許し下さい。"と心の中で敬虔な祈りを捧げていた。"後で一人で、静かに深い、静かな祈りを捧げ、神に許しを乞わなければ。"

 シユン王国は、ニワタズミ帝国に侵攻を開始した。シユン王国は、異端の再洗礼派信徒の国であり、魔族と手を結んだリツシユン王国タイカーン国二重王国と和平を締結し、やはり異端である聖典唯一派信徒の帝国内領主達とシヨウマン王国と提携、連合してニワタズミ帝国と戦い、侵攻している。二重王国は、シユン王国との和平を守りながら、ニワタズミ帝国への支援をわずかながらも行い、ニワタズミ帝国とシユン王国との和平を仲介している。シヨウマン王国とも和平を提案している。
「ウスイは、私のために・・・。」
 教皇は感慨深そうにつぶやいた。異端の運命論派信徒のショシヨ共和国は、シヨウマン王国と同盟を締結しながら、どこにでも、兵器すら売りつけていた。それとはウスイは違っていた。もちろん、彼が、各国に内通者を作っている、交渉している・・・カサギもまた彼の利用する駒としている。だが、彼は違う・・・、そう名君には足りない・・・。シユン王国のウンティは・・・名君なのだろうな、彼にはなれなかった奴だと、教皇は思った。
「ウスイが聖女ケイを捨てなければ・・・このようなことには・・・。全てがうまくいっていたろうに・・・。全てが、あの馬鹿者が!」
 シユン王国第一王子カサギは、王としての欲も、野心もないことはないし、穏やかな平和主義者でもあり、名君ではないから、彼が順当な国王になれば、2人の弟たちはそれを助け・・・。
"全てうまくいっていたろうに・・・、こんなことにならなかったろうに。あの馬鹿者が・・・魔族の女に・・・。"

「多分、あの二人は・・・。一人はあなたの妻として、あの人の処刑を見るのでしょうね。もう一人は、誰からも愛される男の妻として、あの人の処刑を聞くのでしょうね?あの人を捨てて、他の男と幸福になるのと、どちらがましだったのかしら?あなたが、国王になることは確実ですから・・・、いえ、あなたは絶対、国王になろうとして、絶対に成功する、王位を自分の手で、実力でつかむでしょうから。」
 シユン王国王妃は、国王に語りかけていた。王宮の王の書斎で、彼が報告書を読んでいる後ろから抱きしめて、語り掛けた。読んでいた報告書は、親カサギ勢力者についての調査とウスイの各国への工作状況についての調査のものだった。親カサギ派の連中は、事前に内通してきていた者ばかりだったから、新たなことは何一つなかった。カサギへの接触は、彼が命じたことだけで正確に、そのこともちゃんと報告していた。そして、彼らの誰もがカサギを、助命も、無罪だということを嘆願はしてこなかった。それでいて、彼に悪いことは何一つ報告してはこなかったし、それとなく、寛大な措置を願っていることを滲ませていた。例外もいた、もちろん。その例外の連中の名は、報告書にはない、全て失敗とそして罪を擦り付けて処分した。主を裏切る者は、信用はできない、彼はそう思って、それだから処分した。
「その時、お前はあいつの妻だったのだぞ?」
と反撃してみた。"どうでる?"
 流石にビクッとした、彼女は。しかし、すぐに笑い出した。
「忘れていましたわ。多分、悔しくて悔しくて、恨みを飲んで死んだでしょうね。思いっきり、あいつに抱き着いて・・・。でも、私は、あの人に、そう簡単に身を引かせませんよ。と~ても、苦労させてあげましたわよ、陛下に。私との愛の姿、あの方に殉じる私の姿を見て、あの二人の悔しがる姿を思い浮かぶと愉快ですわね、ふふ、と~ても愉快ですわ。」
と最後は実に愉快そうだった、いかにも。
「それでは、私だけが幸せ者になってしまっているな。」
 彼も、愉快そうに笑った。
"国内はかなり乱れていただろうがな。我が国にとっては、今のこれが一番よかったのかもな。"
 聖女がシユン王国にいて、加護を与えてくれていることは重要なことである。それがなければ、彼の富民強国路線は、その目標を引き下げなければならなかっただろう。
 聖樹、聖草、聖獣からの産物、加工品、小麦などの生産の増加、魔法結晶などの発生、その加工など諸産業の発展、輸出の増加は大きなものがあった。それ以上に、それが国内産業の発展、国民生活の向上、安定に貢献貢献している。
 その全ては、リツシユン王国ウスイが愚かにも、魔族女に迷って聖女との婚約を破棄したことにより得られたものなのである。もし、彼が聖女と結婚し、正しい信徒であったならば、シユン王国は、教皇に強い立場ではいられなかっただろうし、背後を脅かされ続けなれればならなかっただろう。彼は、心の中でウスイの愚かさと自分の幸運を実感していた。
  

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。 そこからは家族ごっこの毎日。 私が継ぐはずだった伯爵家。 花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね? これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。 2025年に改編しました。 いつも通り、ふんわり設定です。 ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m Copyright©︎2020-まるねこ

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

処理中です...