【R18】お前が好きだから、仕方なく付き合ってやる ~笑顔でお断りしましたが、何か?~

さぶれ@6作コミカライズ配信・原作家

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1.かなり斜め上から社長の告白(笑顔でお断り)

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 しかしフクシとて、ただスギウラを買収した訳ではない事は承知している。

 というのも、ライバル会社の神原(カンバラ)という会社がフクシを悩ませている。神原は、斬新なアイディアと若者のファッション離れを危惧した上で、新しい商品を次々と打ち出して来て、並行輸入も成功させたりする、なかなかのやり手企業だ。同じ浅草界隈では知らない者はいないという位の、老舗メーカー。特許を取ったスニーカーを年齢問わず幅広く売り出し、成功させた中堅のフクシを何かとライバル視している。
 そんな訳だから、神原はフクシを良く思っていないのだ。あからさまに、『フクシさんの商品を卸すなら、神原との取引は考えさせてくれ――』みたいな事を取引先に吹聴しているらしく、フクシの取引先に差別される事がある。それで実際、取引を断られる事もあるのだ。


 それよりも、実はスギウラの持っているゴム工場の技術は相当高いもので、リストラの影響で何人かあちらの会社に流れてしまった。神原から、スギウラを丸ごと抱える形となる吸収合併をしたいという話が当初は持ち上がったのだが、父が断ったのだ。


 フクシに世話になった身だから、それはできない、と。


 そんな事をすれば大事な技術だけでなく、特許を取ったフクシの模範品の靴底をスギウラに生産させ、一気にフクシを叩き潰すつもりなのだということは、私達家族は誰もが感じていた。しかし、恩や義理人情だけでは生きていけない。こちらも生活がかかっているのだ。
 私は父を説得して、神原の傘下に入る事を家族会議で打診した事もある。


 それが現社長の耳に入った事で、工場ごと神原の言い値よりも高い値段――父の工場が潰れない為と職人を呼び戻す為の潤沢な資金も付けた上で、スギウラを『吸収合併』ではなく『買収』してくれたのだ。吸収合併になれば、完全にフクシの生産ラインになるが、スギウラとしてはやっていけない。あくまでも経営権を買い取るという形で子会社化ができる買収の方を選んでくれたのだ。中堅のフクシにとってはこの出資は資金繰りに堪えたと思うが、そのデメリットを差し引いたとしても、互いにとって良い取引であったのは間違いない。


 スギウラは助かるし、フクシも大切な特許を取得している靴底がもう作れないとなれば問題になるし、何せよライバルの神原にスギウラの技術の流出を食い止められたのだ。


 しかし神原は、色々諦めていない。卑怯なやり口でこちらの社員をヘッドハントしたりするので手を焼いている。浅草界隈で幅を利かせ続ける為にも、スニーカー部門に関しては独り勝ち状態のフクシをやり込めたい、という意識でいるのだろう。
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