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2.何故か私にまで見合い話(笑顔でお断りが出来ず困惑)

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「とにかく、今後の業務に影響が出ては困る。紗那、お前も今回の新商品開発には力を入れているだろう。特に最近は神原の猛攻が凄いから、次の展示会で差をつけられないように、社運を賭けたプロジェクトにしようと躍起になっているじゃないか。様々な研究データを遅くまで比較したり、試作品をあれこれ改良したり、社のみんなが知らない所で、随分頑張っているもんな」

「どうしてご存じなのですか。社長はあまり遅い時間は社にいらっしゃいませんよね。まさか盗聴・・・・」

「こらこら。そこまで人を変態にするな。違う」

 本当かなぁ。

「疑いの眼差しもいいな。どうやら俺は、お前のその冷徹な目が死ぬほど好きらしい」

「やっぱり盗聴・・・・あっ、もしかして盗撮ですか!?」

「だから違うって。俺も同じだからだ。遅くなっても社に戻り、社員の研究成果を見たり、データ比較をしたり、様々出来る事は努力している。遅い時間、紗那の姿を見かける事が多いから。頑張ってくれてありがとう」

 私が罵ったり塩対応した時のキラキラ笑顔じゃなくて、今度は爽やかに言われた。
 やっぱり、私の知っている本来の社長はそういう人だ。真面目に仕事に取り組んで、頑張っている人。一年ほど傍で彼の仕事を見てきたから解る。父の恩があるだけだからじゃない。社長が誰よりも努力をしているからこそ、私もフクシの為に――この社長の為に頑張りたいと思うのだ。


   ・・
 仕事面だけは彼の事を尊敬している。



「どうだ、紗那。新商品開発を、つまらない縁談を持ち掛けられて邪魔されたくないだろう? 俺と紗那だったら、社員にも言い訳が立つ。新商品開発で急接近したとか、何とでも言える。だから暫く、ほとぼりが冷めるまで俺と恋人になってくれないか? 偽装でいいから」

「かしこまりました」真顔で言った。「当面の間で良いなら、お引き受けいたします。新商品開発に支障が出ては困ります。業務優先で行きましょう」

「本当か!?」

 ただし、と一言付けた。「私に指一本でも触れたら、即・刻・退・社、しますから!」

「指一本触れないという事については約束する。だからその冷ややかで恐ろしい目で俺を見つめ続けてくれ!」

「この変態っ」

 何、今のドM発言!
 本当に信じられない。


 真面目で仕事熱心な社長を思い出したから、業務の為に偽装の恋人役を引き受けたのに、なんかいいように丸め込まれた気がするのはどうしてだろう。


 もしかしたらこれは、社長の罠?
 彼の仕掛けた包囲網から逃げ切れるのか、それとも捕らえられてしまうのか。


 私、どうなっちゃうんだろう!?


 でも、と思い直した。
 包囲『網』程度なら問題無い。


 高枝切り鋏のような鋭い刃物で、仕掛けられた網を真っ二つにすればいい話――



 
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