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3.社長にキスしたら、何かがおかしくなった模様(全力で否定)
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というのも、私が秘書に着任前に依頼していた工場が、まさにそれ。だから着任後早々、スギウラの懇意にしている中国の会社を紹介して、工場の生産ラインを切り替えた経緯がある。今はそんないい加減な商品は届かない。
これは、海外工場生産あるある、だ。きっちり監修していないと、いい加減な事をされてしまうのだ。フクシはスニーカー以外、靴の金型が揃っておらず、色々なコスト面でも外注しているから、海外の工場を利用すると質の悪い工場に当たり、たまにこういう問題が発生してしまう。
「シリカゲルか・・・・ノーチェックだったな」
社長が顔をしかめた。
「私も、着任前の在庫まで考えが及んでおらず、保管状況が劣悪だという事に気が付きませんでした。大変申し訳ございません。幸い、百足ほど確認しましたところ、カビは殆どありませんでした。シリカゲルが入っていない箱のものが、数箱混ざっていたようでございます。結果、不良の足数は恐らく少し・・・・全体を通して、多くても十足程度だと思われますが、これについてもアンクレット同様、全てチェックが必要ですので、二千足、全て再度検品致します」
「解った。しかし、アンクレット不良とはいえ、作り直しが必要なのではないか? 現在注文を貰っているブーツはどうするのだ? 今から生産ラインに乗せても間に合わないだろう? 一週間くらいで出来るか?」
「無理ですね。材料の手配から様々やって、最短でも一か月はかかります。エア(飛行機)を使っても一か月弱という納期は変わりません。それに先方様は最短納期とおっしゃっておられます。待っていただいたとしても一日か二日が限度かと」
「・・・・どうする?」
「私が修理致します」
「紗那が? どうやって?」
「スギウラで修理致します。アンクレットはパーツ止めが不十分だったものが多数と報告を受けておりますので、スギウラの工場で直せます。ただ、全てを確認したわけではありませんが、恐らく不具合はパーツ不良が主だと思われます」
「そうか。それは良かった」
多少安堵の顔を社長が見せた。顔や態度にはあまり出さないけれど、内心は焦っていたのね。
「今からスギウラに向かい、工場でアンクレットの修理を致します。先方様には別の倉庫に保管しているので、出荷に一日待つように既にお伝え済です。その為、私の本日の業務は全てキャンセルさせて頂いても宜しいでしょうか。ご迷惑にならないよう、私が必要になる所は他の者を手配して段取りを付けてあります。不良品についてはとにかく足数が多く、きちんと補修しないと商品として出荷する事は出来ません」
「頼もしいなあ。俺の出番ゼロじゃないか」
「とんでもございません。社長、本日のスケジュールは目一杯ですよ。おひとりで頑張って下さいね」
笑顔で伝えると、社長が喜んだ。「心細いが仕方ない。今日一日、お前無しのひとりで頑張る事ができたら、褒美をくれ」
「は? 何故私が?」
こっちが褒美を貰いたいくらいであるのに。でもこれは、スギウラが受けた恩をフクシに返す時なのだ。
これは、海外工場生産あるある、だ。きっちり監修していないと、いい加減な事をされてしまうのだ。フクシはスニーカー以外、靴の金型が揃っておらず、色々なコスト面でも外注しているから、海外の工場を利用すると質の悪い工場に当たり、たまにこういう問題が発生してしまう。
「シリカゲルか・・・・ノーチェックだったな」
社長が顔をしかめた。
「私も、着任前の在庫まで考えが及んでおらず、保管状況が劣悪だという事に気が付きませんでした。大変申し訳ございません。幸い、百足ほど確認しましたところ、カビは殆どありませんでした。シリカゲルが入っていない箱のものが、数箱混ざっていたようでございます。結果、不良の足数は恐らく少し・・・・全体を通して、多くても十足程度だと思われますが、これについてもアンクレット同様、全てチェックが必要ですので、二千足、全て再度検品致します」
「解った。しかし、アンクレット不良とはいえ、作り直しが必要なのではないか? 現在注文を貰っているブーツはどうするのだ? 今から生産ラインに乗せても間に合わないだろう? 一週間くらいで出来るか?」
「無理ですね。材料の手配から様々やって、最短でも一か月はかかります。エア(飛行機)を使っても一か月弱という納期は変わりません。それに先方様は最短納期とおっしゃっておられます。待っていただいたとしても一日か二日が限度かと」
「・・・・どうする?」
「私が修理致します」
「紗那が? どうやって?」
「スギウラで修理致します。アンクレットはパーツ止めが不十分だったものが多数と報告を受けておりますので、スギウラの工場で直せます。ただ、全てを確認したわけではありませんが、恐らく不具合はパーツ不良が主だと思われます」
「そうか。それは良かった」
多少安堵の顔を社長が見せた。顔や態度にはあまり出さないけれど、内心は焦っていたのね。
「今からスギウラに向かい、工場でアンクレットの修理を致します。先方様には別の倉庫に保管しているので、出荷に一日待つように既にお伝え済です。その為、私の本日の業務は全てキャンセルさせて頂いても宜しいでしょうか。ご迷惑にならないよう、私が必要になる所は他の者を手配して段取りを付けてあります。不良品についてはとにかく足数が多く、きちんと補修しないと商品として出荷する事は出来ません」
「頼もしいなあ。俺の出番ゼロじゃないか」
「とんでもございません。社長、本日のスケジュールは目一杯ですよ。おひとりで頑張って下さいね」
笑顔で伝えると、社長が喜んだ。「心細いが仕方ない。今日一日、お前無しのひとりで頑張る事ができたら、褒美をくれ」
「は? 何故私が?」
こっちが褒美を貰いたいくらいであるのに。でもこれは、スギウラが受けた恩をフクシに返す時なのだ。
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