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4.受注キャンセルなんて言語道断!(しかし不気味な笑顔で承諾)
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しおりを挟む「高丸さん、残念だな」驚嘆のため息とともに、苦しそうに社長が言った。
「そうですね。高丸さんは父の戦友でもあり、私が幼い頃から親しくして頂いていた、今では数少ない優良な老舗メーカーです。高丸のパンプスは本当に素晴らしいのに、この製品が世の中からなくなってしまうのは、非常に残念です」
「同感だ」
社長が再び重いため息を吐いた。「俺にもっと力があればなぁ。せめて神原くらい」
「十分ですよ。社長はスギウラを救って下さいました。・・・・高丸さんも買収する、というのは・・・・無理ですよね?」
「言い方は悪いが、高丸とスギウラでは規模が違う。高丸はスギウラと違って手広く事業展開しているから買収するとなると、金額は相当なものになるだろう。一万足のキャンセルを喰らってピーピー泣いて疲弊している中堅会社が、どうこうできる金額じゃない」
確かに。高丸は国内でも靴の縫製をやっているから、スギウラとは規模が違う。実家の小さな工場とは違うのだ。諸々維持していくのが大変なのだろう。
「五千足も即金仕入れとなれば、今の財力だと本当は厳しい。不要な仕入れだからな。でも、高丸社長には本当に世話になった。いい人だから、こちらが苦しい時によく助けて貰ったんだ。せめて少しでも恩は返したい。請求書が来たら、すぐ振込みしておいてくれ」
「はい」
「それより紗那、俺も金策に走った方がいいか?」
「藤並商店の社長ご令嬢との見合いを進められたらいかがですか? 金策なら手っ取り早いですよ」
「お前という恋人がいるのに、冗談でもそんな事を言うな」
「偽装の筈では?」
「偽装だと思っているのは、紗那だけだ。もう良蔵さんもオーケーしてくれているし、このまま俺と結婚しよう」
何てこと!
これがヤツの手だったのか!
「お・こ・と・わ・り」(笑顔)
「お・ね・が・い・し・ま・す」(笑顔)
「指一本触れたら退社するという約束、お忘れですか?」
まあ、絶対に退社は出来ないけど。一身上の都合で自主退社なんかしたら、実家を追い出される。
実家ラブの私には、それキツイ案件。
「だから触れていないだろう」
心外だ、と言わんばかりの顔でしかも偉そうに言われた。
「結婚するなら、これから触れるのでは?」
「紗那が嫌がる限り、約束は守るぞ。しかし、紗那から触れてくれれば問題無い。この前みたいに」
「ぜっ・た・い・い・や」(笑顔)
「そ・こ・を・な・ん・と・か」(真顔)
「真顔で頼まれても、嫌なものは嫌なので」
にっこり笑って言うと、怒り出すかと思ったのに、たまらーんっ、と呟いている。
はああぁ。キモ。スギウラの恩が無かったら、こんな社長の下で働くのはできれば遠慮したい。
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