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4.受注キャンセルなんて言語道断!(しかし不気味な笑顔で承諾)
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しおりを挟むそれにしても、一体私の何処がいいのだろう。こんな可愛気の無い女・・・・大変謎である。
このまま冷たくし続けていたら、いくらなんでもそのうち飽きるだろう。
そういうものだ。結婚なんか、絶対無い。
私だって笑顔でお断り。それが何か?
もっと可愛気のある女性が、それこそ福士社長の傍にはゴロゴロいる。社員だって、取引先だって、色々。彼ほどの容姿なら性格さえ隠しておけば、女性はよりどりみどりの筈。言っても社長だし、頭キレるし、仕事デキるし。
でも私は、恋愛よりも、結婚よりも、大切なものがある。
それは、ひとつでも多くのヒットシューズを開発して、フクシが素晴らしいメーカーとしてこの厳しい靴業界を生き抜いてくれる事――即ち、スギウラの安泰を確約したい。
私は、幼い頃から工場が大好きだった。普通の女子はあまり好きじゃないと思うけれど、ゴムの匂いも好きだし、何せよ加工したゴムがみんなの歩く支えになるなんて、これ程素晴らしい事はない。
だから、絶対にスギウラは潰さない。もし父が許可してくれるなら、私が跡を引き継ぎたい。スギウラの素晴らしい技術を残したい。
そしてこれ以上、浅草界隈の取引先が閉店とならない様な策を打ち出したい。フクシと一緒に儲けて末永く商売を続けられるようにする事が、私の目指す道。
私は、フクシが元気の無くなってしまったシューズ業界を、先陣切って牽引してくれるような、そんな会社になって欲しいと思っている。
色恋沙汰は、他の女とすればいい。
わざわざ面倒な私を選ばなくていい。
初めて男の人にときめいたあの瞬間が、大好きな靴に出会った私の至福の瞬間と酷似していたなんて、多分気のせいだから。
だから今日も貴方の事は、笑顔でお断り致します!
応援ありがとうございます!
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