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9.遂に神原と対決!(ハラハラドキドキ)
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それからチャキチャキと仕事を終わらせ、忙しく仕事をしている社長を尻目に、何の具合も悪くない母をダシにして帰宅をする為に定時で上がった。申し訳ない気持ちでいっぱいになったが、致し方ない。本当の事情を説明する訳にはいかないのだ。
「紗那。富士子さんによろしくな」
社長が優しく言ってくれた。
「はい、ありがとうございます。それでは、申し訳ありませんがお先に失礼致します」
ウソを吐いて、本当にごめんなさい、社長。
背筋を伸ばし、斜め四十五度できっちりお辞儀をして、退社した。
今日は地下鉄で千代田区富士見まで向かう。電車に揺れられ、キリキリ痛む胃を抑えた。どんな話を持ち掛けられるのだろう。フクシの妨害は本当に止んだのだろうか、また、手を出されないだろうか――様々、心配は尽きない。
やっとの思いで神原の自宅へ辿り着いた。震える手を抑え込み、マンション入り口のインターフォンを鳴らした。声がひっくり返らないように気を付け、杉浦です、と名乗ると、オートロックが解除され、扉が開いた。
エントランスに入り、エレベーターを待つ間、冷静を保つためにも深呼吸を繰り返した。しかし、嫌な胸の高鳴りは収まらない。もしかしたら今日、神原のものにされてしまうかもしれない。不吉なドラマが私の脳内を駆け巡る。
――杉浦さん。
目の奥が一切笑っていない、冷徹な男に見つめられ、私の身体は一切動かせなくなる。
あの男の手が伸び、私の身体に触れようと――・・・・
嫌だ。
嫌だよ。
さっき無理やり飲んだリポXが胃を逆流しそうになり、吐き気を必死に堪えた。
でも、私がここで逃げ出せば、必ずフクシに魔の手が伸びる。そうなればスギウラも――フクシが潰されれば、きっとまた地獄を見る。やっとの思いで立て直したスギウラの工場。リストラを余儀なくさせられ、退職をおねがいしたのに、殆どのみんながスギウラに戻ってきてくれて、生産ラインも軌道に乗せて、ようやく体制を整え、フクシの新商品や秋物だけじゃなくて、他の取引先の受注も再開して、やっぱりスギウラさんのゴムじゃなくちゃって、喜んでもらえて・・・・。
弱気になるな!
私がここで頑張らなくてどうするの!
たかが神原に呼び出された程度で、冷静を失って、何時もの私らしくなくなるなんて、ダメ!
ぐっとお腹に力を入れた。
負けない。
神原は、私が倒す!
絶対、絶対にフクシもスギウラも、私が守るんだ!!
強い気持ちを取り戻し、部屋に入る為のインターフォンを押した。
『どうぞ』
ピーという電子音と共に、玄関を開錠する音が響いた。
いよいよだ。私は絶対、神原に負けない!
「紗那。富士子さんによろしくな」
社長が優しく言ってくれた。
「はい、ありがとうございます。それでは、申し訳ありませんがお先に失礼致します」
ウソを吐いて、本当にごめんなさい、社長。
背筋を伸ばし、斜め四十五度できっちりお辞儀をして、退社した。
今日は地下鉄で千代田区富士見まで向かう。電車に揺れられ、キリキリ痛む胃を抑えた。どんな話を持ち掛けられるのだろう。フクシの妨害は本当に止んだのだろうか、また、手を出されないだろうか――様々、心配は尽きない。
やっとの思いで神原の自宅へ辿り着いた。震える手を抑え込み、マンション入り口のインターフォンを鳴らした。声がひっくり返らないように気を付け、杉浦です、と名乗ると、オートロックが解除され、扉が開いた。
エントランスに入り、エレベーターを待つ間、冷静を保つためにも深呼吸を繰り返した。しかし、嫌な胸の高鳴りは収まらない。もしかしたら今日、神原のものにされてしまうかもしれない。不吉なドラマが私の脳内を駆け巡る。
――杉浦さん。
目の奥が一切笑っていない、冷徹な男に見つめられ、私の身体は一切動かせなくなる。
あの男の手が伸び、私の身体に触れようと――・・・・
嫌だ。
嫌だよ。
さっき無理やり飲んだリポXが胃を逆流しそうになり、吐き気を必死に堪えた。
でも、私がここで逃げ出せば、必ずフクシに魔の手が伸びる。そうなればスギウラも――フクシが潰されれば、きっとまた地獄を見る。やっとの思いで立て直したスギウラの工場。リストラを余儀なくさせられ、退職をおねがいしたのに、殆どのみんながスギウラに戻ってきてくれて、生産ラインも軌道に乗せて、ようやく体制を整え、フクシの新商品や秋物だけじゃなくて、他の取引先の受注も再開して、やっぱりスギウラさんのゴムじゃなくちゃって、喜んでもらえて・・・・。
弱気になるな!
私がここで頑張らなくてどうするの!
たかが神原に呼び出された程度で、冷静を失って、何時もの私らしくなくなるなんて、ダメ!
ぐっとお腹に力を入れた。
負けない。
神原は、私が倒す!
絶対、絶対にフクシもスギウラも、私が守るんだ!!
強い気持ちを取り戻し、部屋に入る為のインターフォンを押した。
『どうぞ』
ピーという電子音と共に、玄関を開錠する音が響いた。
いよいよだ。私は絶対、神原に負けない!
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