【R18】お前が好きだから、仕方なく付き合ってやる ～笑顔でお断りしましたが、何か？～

９．遂に神原と対決！（ハラハラドキドキ）

１０

　そんなああああ、と大声で泣き崩れた春日部さんを尻目に、福士社長が続けた。

「まあ、勘のいい紗那の事だから、今の話で色々察してくれたと思う。後は大滝だ。コイツは、もともと怪しいと思っていた。履歴書の経歴見ていても、俺の会社に来るような人材じゃなかったし、仕事ぶりを見て確信したよ。面接も落ちまくってどこも雇ってもらえなかったなんて言うけど、これだけ仕事ができる男が、面接でしくじる訳が無い。落とされる事自体がおかしいんだ。キナ臭かったから、泳がせておいた。紗那の時に修理スタッフに抜擢したのも、きっと何かすると思ったからさ。案の定だった。だから二千足の修理の時、紗那を向かわせる前に良蔵さんに連絡して、監視カメラをちゃんと稼働させて欲しいって頼んでおいたんだ。スギウラには防犯カメラの類が無いから、そろそろ取り付けなきゃな、って大滝に言っておいて、油断させた。二千足全部の検品が終わった後、わざと大滝を最後一人にしたんだ。スギウラの工場内で不良品にすり替えていた場面、バッチリ映っているから」

　そうだ。社長はこの時最後、お父さんと少しだけ話してくるからって言っていた。私との結婚を伝えただけだと思っていたのに････。
　監視カメラ、チェックしていたんだ。それで大滝君が不良品にすり替えたものを出荷したって、もう、その時点で気づいたのね。

「大滝が吐いたよ。百足ほど不良を作って、自分が検品したものに大きく検品済と書いておいた、と。浅岡専務がこの二千足を買い付けた事は大滝から兄の神原に流れ、K＆Sが浅岡商店から百足――つまり、大滝が印をつけた十ケースを買ったんだ。専務は面倒くさがりな一面があるから、検品済と大きく書かれたケースがあれば、自分の所で再チェックはせずにそのまま出荷すると見込んでね。まあ、仮に違うケースが届いたとしても、難癖付けてフクシに文句言うつもりだった腹は変わりないが、読み通りその印の付いたケースをK&Sが入荷したんだ」

　先を見越して、色々手を打っていたんだ。不良品の出荷の裏で、そんな事があったなんて、全然気が付かなかった。

「後は、お姉さんが経営されているK&S（カンバラカンパニー＆ショップ）に頼んで、売ってもいない商品のイチャモンを付けるだけで、紗那が懐に飛び込んでくる、という筋書きだ。何か間違っているか？　神原社長」

　流石に神原の顔色が変わった。焦りの色が酷くにじみ出ている。
　お姉さん････って言ったよね？
　あのお店、神原の親族経営の店舗だったんだ。だから名刺も出さなかったのね、あのオバサン店長！

「あと、ひとつ言っておこう。神原社長、色々奔走した所を申し訳ないが、紗那とは絶対に結婚できないんだ」


　え？　なんで。
　まさか社長と偽の契約しているからとか、そんな事言い出すつもり？
　私は思わず社長の顔を見た。彼は不敵な笑みを浮かべ、神原に勝利宣言でも伝えるように言い放った。



「紗那はもう、俺の妻だからな。日本の法律では、一夫一妻制だ。重婚は出来ない」