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スマイル23・王様お菓子の家を作る

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 何冊か絵本を読んだ所で、業者の人が王雅を呼びに食堂へやって来た。王雅はちょっと待ってろよ、と言い残して、業者の人と一緒に食堂を出て行った。

「おーちゃん、何作ってくれてるのかなぁ。なんだろぉー。気になるねぇー、ミイちゃん」

「そうね。お兄さんの事だから、アッと驚くようなもの作ってるんじゃないのぉー?」

「楽しみですね!」

 アイリちゃん、ミイちゃん、ガックンが楽しそうにお喋りしている。するとそこへ、王雅が戻って来た。かなり得意気な王様スマイルを湛えている。


「用意できたから、お前等、早く来いよ。スゲーぞ!」


 わーいなんだろう、と子供たちは大喜びで食堂を飛び出していった。
 私も子供たちの後を追いかけた。遊戯室の中は、子供たちの歓声で溢れている。

「何が出来てるの? 先生にも見せて」

 遊戯室の中に入って、目の前に出来上がったものを見て、驚いた。「わあっ・・・・すごい・・・・」

 それは、お菓子の家だった。
 縦横共に一メートル二十センチほどの大きさで、子供たちの背丈より少し大きいくらいで、丁度よい大きさだ。
 
「どーだ、スゲーだろ」満面の王様スマイルで王雅が言った。「俺からのプレゼントだ。本物だから、食えるんだぜ」

「王雅・・・・」

「一緒に食うか。俺達も」

「うん。いつも楽しい事考えてくれて、本当にありがとう! 王雅って、楽しい事考える天才ねっ」

 お菓子の家は、悪い魔女が作った子供たちを捕らえる罠だと思っていたけれど、王雅にかかったら、魔法みたいに楽しくなるのね。
 私の好きになった男は、本当にスゴイ男だわ。
 非現実的な事でも、具現化できちゃうんですもの。

 思いつくのもやってのけるのも、貴方だからできるのね。
 何だか貴方を好きでいられることが、ちょっと誇らしくなった。
 どうでもいいつまらない男なんかじゃなくて、スケールも半端じゃないスゴイ男だったら、捨てられても仕方ないかって諦めがつくもの。


「先生っ、お菓子の家だよーっ、すごいねーっ!」

「早くたべたーいっ」


 子供たちが騒ぎ出した。

「あ、待って、みんな。折角だから、写真撮りましょう。先生カメラ持ってくるね。お家、まだ食べちゃダメよ。みんな、わかった?」

「はーい!」子供たちは、全員元気よく返事した。

 でもゴメン。みんなの事、信用できないわ。
 
「王雅っ、みんなの事、見張っといてね! 目を離したら、すぐ約束破っちゃうからっ」

 慌てて遊戯室を飛び出して、仕事部屋に向かった。
 引き出しにしまってある、長年使っている、貰い物の電池が寿命ですぐ切れてしまうデジタルカメラと、物置に直している三脚を取って大急ぎで遊戯室に戻った。



「ごめんね、おまたせっ!」



 戻ると、お菓子の家の前で王雅が手いっぱい足いっぱいで、子供たちを防いでくれていた。
 やっぱり見張りを頼んでいてよかったわ。

 もう少し耐えて!

 すぐ用意するから、と言って、三脚にデジカメをセットした。
 その間に全員がお菓子の家の前に並んで、写真が撮れるように準備してくれた。

「じゃ、みんなで写真撮るよーっ。はい、並んでニッコリスマイル! にこーっ」

「にこーっ」

 ニッコリスマイルは、マサキ施設の『ハイ、チーズ』の代わり。美幸おかあさんが考えてくれた、写真を撮る時の掛け声なの。
 優しい美幸おかあさんは、よく私の写真を撮ってくれた。ニッコリスマイルは、楽しい写真を撮るときに欠かせない掛け声なのよ。

 タイマーをセットして、慌てて王雅の横に行って脇をつついた。「ほら、王雅も笑顔っ」
 
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