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Office05・進展アリ?
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三輪さんがフリーだったら、確実に親密度が上がったと思われるデートはその後、勿論想像を掠った火遊びなんかには発展することなくお開きになり、自宅近辺までタクシーで送ってもらった。
それじゃあまた明日、と三輪さんが笑顔で手を振ってくれた。
さよならを告げ、独り暮らししている自宅マンションに入った。
部屋に上がって今日の思い出を反芻しようとしたら、スマートフォンからメールの着信音が聞こえた。
鞄からスマホを取り出してメールを見ると、真吾君からだった。
――もう帰りましたか? まだなら、早く帰りましょう。門限時間、過ぎてますよ。
部屋に設置してある壁掛け時計を見ると、午後十時を少し回ったところだった。
何なのよっ。真吾君は私の親かっ!
三輪さんと限定デートしている事を周囲にバラされたら困るので、私は仕方なく真吾君に今日の報告メールをした。
――もう家に帰りました。特別な進展はありません。居酒屋で飲みました。以上。
メールを送ってため息を吐いた。暫くぼんやりしていると、今度はスマートフォンが電話専用の着信音を立てて鳴った。ディスプレイを見ると、着信は真吾君だ。
何なのよっ、もう! 内容に不満でもあるワケっ!?
出なかったらウルさそうだし、面倒な事になるだろうから、スマホを操作して電話に出た。「何の用っ」
『良かった。自宅ですね。お帰りなさい』
「だから、そういう内容送ったでしょっ。見てないのっ?」
声が刺々しくなった。本当に面倒だ。
『そんな内容、メールなら何とでも書くことができますよ。俺、昔騙された事ありますから、基本的にメールは信用しない事にしています。もしかしたら、ウソかもしれないでしょう? まあ、貴女はそんな事する女性じゃないって解っていますけど、三輪さんが入れ知恵するかもしれないから、念のためです。それに今、そちらが静かですから、ちゃんと自宅なんですね。外だったらもっと騒がしいし、もしホテルとかなら、貴女、俺からの電話は無視するか、多分もっと焦った声出してると思いますから、普段の何ら変わらない貴女の声の様子を聞いて、今日はちゃんと帰ったんだなって、安心しました』
成程。この男は、こうやって私の挙動を観察して、色々分析しているのね。
本当に、探偵になればいいのに。そんで、私の前から消えて、二度とちょっかい出さないで欲しい。
『電話したのは、メールの内容が本当か、確認するためですよ。この件、帰り際に俺言いましたよね。ちゃんと聞いていましたか? 報告メールの後は、電話で報告もするように言ったでしょう。かけてくれないなら、コッチからかけますからね。この電話、取らなかったら、相当面倒な事になると思って下さい』
「今でも相当面倒なんだけど!」ハッキリ言ってやった。
『それは気が付かなかった』
真吾君は電話の向こうで笑っている。きっと今は、悪魔みたいな悪い顔じゃなくて、カワイイ方の笑顔を湛えているに違いない。
『それより、俺の三輪さん除け、役に立たなくて本当に良かったです』
そんな事を言われて、首筋が熱を帯びた気がした。生々しい真吾君の唇の跡を思い出して、身体が熱くなった。
「止めてよねっ! もうっ。じゃ、切るわよ」
『あ、待って和歌子さん』
「なによっ」
『好きです。おやすみなさい』
一方的に告白だけして、ヤツは電話を切りやがった。
一体、何考えてんのよ。真吾君は。
私には、好きな男性が――勿論それは、叶う事のない恋だけどさ。
一応、好きな男が居るって、知っていて、どうしてこんな事してくるの。
三輪さんとのこと、もっと落ち込むかと思っていたのに、真吾君のせいで、あまり考えられなくなってしまった。
いいのか悪いのか・・・・。とにかく、シャワーを浴びて、さっさと眠ってしまおうと思った。
今日は色々ありすぎて、疲れちゃった。
明日は、どんな一日になるのかな。
色々考えると、憂鬱になった。
それじゃあまた明日、と三輪さんが笑顔で手を振ってくれた。
さよならを告げ、独り暮らししている自宅マンションに入った。
部屋に上がって今日の思い出を反芻しようとしたら、スマートフォンからメールの着信音が聞こえた。
鞄からスマホを取り出してメールを見ると、真吾君からだった。
――もう帰りましたか? まだなら、早く帰りましょう。門限時間、過ぎてますよ。
部屋に設置してある壁掛け時計を見ると、午後十時を少し回ったところだった。
何なのよっ。真吾君は私の親かっ!
三輪さんと限定デートしている事を周囲にバラされたら困るので、私は仕方なく真吾君に今日の報告メールをした。
――もう家に帰りました。特別な進展はありません。居酒屋で飲みました。以上。
メールを送ってため息を吐いた。暫くぼんやりしていると、今度はスマートフォンが電話専用の着信音を立てて鳴った。ディスプレイを見ると、着信は真吾君だ。
何なのよっ、もう! 内容に不満でもあるワケっ!?
出なかったらウルさそうだし、面倒な事になるだろうから、スマホを操作して電話に出た。「何の用っ」
『良かった。自宅ですね。お帰りなさい』
「だから、そういう内容送ったでしょっ。見てないのっ?」
声が刺々しくなった。本当に面倒だ。
『そんな内容、メールなら何とでも書くことができますよ。俺、昔騙された事ありますから、基本的にメールは信用しない事にしています。もしかしたら、ウソかもしれないでしょう? まあ、貴女はそんな事する女性じゃないって解っていますけど、三輪さんが入れ知恵するかもしれないから、念のためです。それに今、そちらが静かですから、ちゃんと自宅なんですね。外だったらもっと騒がしいし、もしホテルとかなら、貴女、俺からの電話は無視するか、多分もっと焦った声出してると思いますから、普段の何ら変わらない貴女の声の様子を聞いて、今日はちゃんと帰ったんだなって、安心しました』
成程。この男は、こうやって私の挙動を観察して、色々分析しているのね。
本当に、探偵になればいいのに。そんで、私の前から消えて、二度とちょっかい出さないで欲しい。
『電話したのは、メールの内容が本当か、確認するためですよ。この件、帰り際に俺言いましたよね。ちゃんと聞いていましたか? 報告メールの後は、電話で報告もするように言ったでしょう。かけてくれないなら、コッチからかけますからね。この電話、取らなかったら、相当面倒な事になると思って下さい』
「今でも相当面倒なんだけど!」ハッキリ言ってやった。
『それは気が付かなかった』
真吾君は電話の向こうで笑っている。きっと今は、悪魔みたいな悪い顔じゃなくて、カワイイ方の笑顔を湛えているに違いない。
『それより、俺の三輪さん除け、役に立たなくて本当に良かったです』
そんな事を言われて、首筋が熱を帯びた気がした。生々しい真吾君の唇の跡を思い出して、身体が熱くなった。
「止めてよねっ! もうっ。じゃ、切るわよ」
『あ、待って和歌子さん』
「なによっ」
『好きです。おやすみなさい』
一方的に告白だけして、ヤツは電話を切りやがった。
一体、何考えてんのよ。真吾君は。
私には、好きな男性が――勿論それは、叶う事のない恋だけどさ。
一応、好きな男が居るって、知っていて、どうしてこんな事してくるの。
三輪さんとのこと、もっと落ち込むかと思っていたのに、真吾君のせいで、あまり考えられなくなってしまった。
いいのか悪いのか・・・・。とにかく、シャワーを浴びて、さっさと眠ってしまおうと思った。
今日は色々ありすぎて、疲れちゃった。
明日は、どんな一日になるのかな。
色々考えると、憂鬱になった。
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