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Office19・本当のキモチ

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 私は三輪さんと別れて、一人で夜景の見える港の横浜を歩いた。
 なんとなく海が見たくなって、コスモクロック21を背に、そのまま海側まで来たところだ。
 どうしてこうなっちゃったのかなーって、やっぱりさっきのは気の迷いじゃないかなーとか、色々思う。後悔とか、色んな思惑が頭をぐるぐるしている。

 っていうか、何で、真吾君なの?
 あの悪魔の何がいいのか、ホンキで解らない。

 私の心、勝手に持っていきやがって!
 折角、三輪さんと両想いだって判ったのに、その手を取ることができないなんて!


 残念すぎるっ!


 本当に、本当に、どうしてくれんのよっ!!


 あんな無理矢理――毎回毎回、口止め料なんか払わせるから、こんな事になっちゃったのよ!

 でも、真吾君を思い出すと、身体が熱くなる。
 三輪さんにドキドキしている時と、違う。もっと熱くなって、真吾君を求めようと、身体が勝手に昂っていく。



 逢いたい――こんな時に、何を勝手な事、思っちゃうんだろう。



 


 ピルルルル ピルルルル



 ハンドバックから、スマートフォンが鳴る音が聞こえて来た。


――本当に、エスパーだわ、貴方。


 取らなきゃ面倒だから、ヤツからの電話だってすぐ解るように専用の呼び出し音にしてあるから、音で解る。


 今までそっけなく扱っていたのに、急に貴方を好きになったなんて、言うのも悔しい。
どうしてやろうかしら。

「何の用?」

 ハンドバックから急いでスマホを取り出し、いつも通り電話に出ることにした。
 ドキドキしているの、バレないかしら。

『用事は無いんですけど、なんとなく、和歌子さんが俺の声が聞きたいって思っているんじゃないかって、電話しました』

 本当に超能力、あるんじゃない?

「そんなワケないでしょ」

 そんなワケ、ありますけどね。
 ええ、驚いてますよ。貴方のエスパーぶり。
 
『ま、ぶっちゃけ言いますと、三輪さんとのデート、邪魔してやろうと思って電話かけました。今日で最後ですよね? 限定デートとやら。夕方までって言ってたのに、遅いからお邪魔虫です』

 あ、そこは私の心、読めないんだ。完璧なエスパーじゃないのね。うふふ。そうだったんだ。
 じゃあ、私のこの本当のキモチは、貴方に言うワケにはいかないわよね。
 散々意地悪されたんだもん。私だって、少しくらい意地悪してやるんだから!

「デート、上手く行ったって言ったら、どうする?」

『・・・・可愛い女性は、そんな強がりを言っちゃいけません』

「どうして強がりなんて言うのよ。本当だったらどうするの?」


 ちょっとムカっときたから、棘のある声が出た。


『デートが上手く行っていたら、俺と電話なんかしてませんよ。で、今ドコですか? 迎えに行ってあげます。どうせ最後だから、三輪さんの車でデートでもしたんでしょう? 雰囲気の良い横浜あたりにいらっしゃるんじゃないですか? 静かで波の音も聞こえるから、今いるのは、コスモクロック21近くの、海が見える付近でしょう?』


 エスパー探偵上山真吾って看板上げて、探偵業始めればいいのに、ってホンキで思う。
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