呪いの騎士と生贄の王女

佐崎咲

文字の大きさ
12 / 16

第十一話 証明完了

しおりを挟む
 そうしてブリジットから聞いていた道を辿り、魔王が封印されている場所へと向かった。
 だがそこには既にエドワードが隊を引き連れて到着していた。

「あら、お兄様。あちらの騒ぎは別動隊でしたのね」
「いや。セイラが後から後から魔物を呼び込んでキリがないから途中で隊を分けたのだ。で、プリメラ。おまえは何故ここにいる」
「魔王を倒すために私が出奔したと知って予定を早めていらしたのね?」
「質問しているのは私だ。だがわかっているなら話が早い。げんこつを食らわしてやるから頭を出せ」
「嫌です。これから私は戦わねばなりませんもの。お仕置きは城に帰ってからにしてください。あとお尻でお願いします」
「バカもの。十六歳になるおまえの尻など叩けるか」
「ではしっぺ十回で」
「私の鍛えた指でいいのだな?」
「おい、そこの兄妹。ここでイチャイチャするのはよせ」

 思わず口を挟んでいた。
 あまりに終わりが見えなかったから。
 あと、魔王を封じているのだろう岩が先程からピシピシと鳴っている。

「あら失礼。続きは魔王を倒した後ですわね、お兄様」

 そう言ってプリメラは、くるりとロードを振り返った。

「さあ、やっておしまいなさい、ロード!」

 ほい来た。
 とばかりにロードは手袋を脱ぎ去り、ピシピシとヒビが入り続ける岩に手を触れた。

「……」
「……」
「……何も起きないな」

 エドワードのぽつりとした声に、プリメラは平然と返す。

「だから言ったではありませんの」

 その声に驚いたのは、エドワードと共に来ていた騎士だ。

「え……? 王女殿下は、ロードの呪いの力で魔王を倒すのだと宣言しておられたのでは……」

 しっかり第三騎士団の外に漏れている。
 だがプリメラは聞こえていないかのように「お兄様」と声をかける。

「いつの間にか岩が割れて魔王が出て来ていたというのは避けるべきです。それにここでじっと封印が解けるのを待つことに利益もありません」
「そうだな。私もそう考えていた」
「では物理でいきますわ!」

 そう言うやいなや剣を振りかぶったプリメラの腕をエドワードががしっと止めた。

「待て。さすがにそれは許さん。第一騎士団の面目を潰してくれるな。おまえは後ろに下がっていろ」
「わかりましたわ」

 プリメラは案外あっさりと引き下がると、ロードに目配せをして共に後ろに下がった。

「よし。ではこれより封印を解き、現われ出でた魔王を討伐することとする!」
「はい!!」

 エドワードの声に、騎士たちが構える。
 その背後で、プリメラがすすすっと横に移動する。
 エドワードが右手をすっと上げると、第一騎士団長が岩の前に進み出て、ふんっ、と一気に岩を打ち砕いた。
 すると中から光る球が現れ、ぱあんと弾ける。
 膝を抱えるような魔王の姿が現れるやいなや、黙って走り寄り剣を振り下ろしたのはプリメラだった。

 魔王は慌てて目を開け、「いや、何事?」とざっくり斬れた己の肩を見下ろした。
 手を休めることなく再び斬りかかったプリメラはあっけなく跳ね飛ばされたが、「かかれ!」と自棄になったようなエドワードの号令を聞き、騎士たちが怒号をあげ決戦の火ぶたが落とされた。
 ぶっ飛んで来たプリメラを全身で受け止めたロードも、悔しそうに再び向かっていくプリメラを追いかけて魔王に戦いを挑んだ。
 何が起きているのか把握できておらず戸惑っている様子ながらも、魔王は強かった。
 束になってかかっても跳ね飛ばされ、一太刀浴びせるのも至難だった。
 しかしプリメラの最初の一撃が堪えていたようで、魔王の顔にも次第に苦しげな色が浮かんだ。
 それを見逃すプリメラではない。

「ロード、行くわよ!」

 何をどう? と戸惑いながらもとにかくプリメラに合わせてロードは飛び出した。

「はああああ!」

 気合いの声をあげ、思いっきり「今から攻撃します」とアピールする中、プリメラは大上段に振りかぶり、しかしすぐにその場を後に続いていたロードに譲った。
 プリメラの全力の一撃でも魔王に致命傷を与えることはできない。
 そのことが最初にわかったから、プリメラはその役目をロードに任せることにし、気をひく役目を引き受けたのだろう。
 一言先に言っておいてほしかったが、なんとかそれを戦いの中で読んだロードは、プリメラの攻撃を読み腕で受ける構えをとっていた魔王のがら空きの心臓部に剣を突き立てた。

「ぐあっ……! 徹頭徹尾卑怯な……」

 確かに、寝起きに奇襲をかけるわ一対多すぎるわと、とことん魔王に不利な状況であった。
 しかしそうでもしなければ二百年前の繰り返しになるだけで、人間は魔王には勝てない。

「二百年前にこの国を滅ぼそうとしておいてよく言うわ」

 プリメラがふん、と鼻を鳴らす間に魔王の体はぴきぴきとヒビが入り、バキンッと粉々になっていた。
 砕け散った魔王の体は溶けるようにさらさらと砂に変わり、やがて霧散した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

白狼王の贄姫のはずが黒狼王子の番となって愛されることになりました

鳥花風星
恋愛
白狼王の生贄としてささげられた人間族の第二王女ライラは、白狼王から「生贄はいらない、第三王子のものになれ」と言われる。 第三王子レリウスは、手はボロボロでやせ細ったライラを見て王女ではなく偽物だと疑うが、ライラは正真正銘第二王女で、側妃の娘ということで正妃とその子供たちから酷い扱いを受けていたのだった。真相を知ったレリウスはライラを自分の屋敷に住まわせる。 いつも笑顔を絶やさず周囲の人間と馴染もうと努力するライラをレリウスもいつの間にか大切に思うようになるが、ライラが番かもしれないと分かるとなぜか黙り込んでしまう。 自分が人間だからレリウスは嫌なのだろうと思ったライラは、身を引く決心をして……。 両片思いからのハッピーエンドです。

【完結】裏切られ婚約破棄した聖女ですが、騎士団長様に求婚されすぎそれどころではありません!

綺咲 潔
恋愛
クリスタ・ウィルキンスは魔導士として、魔塔で働いている。そんなある日、彼女は8000年前に聖女・オフィーリア様のみが成功した、生贄の試練を受けないかと打診される。 本来なら受けようと思わない。しかし、クリスタは身分差を理由に反対されていた魔導士であり婚約者のレアードとの結婚を認めてもらうため、試練を受けることを決意する。 しかし、この試練の裏で、レアードはクリスタの血の繋がっていない妹のアイラととんでもないことを画策していて……。 試練に出発する直前、クリスタは見送りに来てくれた騎士団長の1人から、とあるお守りをもらう。そして、このお守りと試練が後のクリスタの運命を大きく変えることになる。 ◇   ◇   ◇ 「ずっとお慕いしておりました。どうか私と結婚してください」 「お断りいたします」 恋愛なんてもう懲り懲り……! そう思っている私が、なぜプロポーズされているの!? 果たして、クリスタの恋の行方は……!?

溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~

紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。 ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。 邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。 「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」 そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。

狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。

汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。 元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。 与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。 本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。 人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。 そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。 「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」 戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。 誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。 やわらかな人肌と、眠れない心。 静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。 [こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]

冷徹と噂の辺境伯令嬢ですが、幼なじみ騎士の溺愛が重すぎます

藤原遊
恋愛
冷徹と噂される辺境伯令嬢リシェル。 彼女の隣には、幼い頃から護衛として仕えてきた幼なじみの騎士カイがいた。 直系の“身代わり”として鍛えられたはずの彼は、誰よりも彼女を想い、ただ一途に追い続けてきた。 だが政略婚約、旧婚約者の再来、そして魔物の大規模侵攻――。 責務と愛情、嫉妬と罪悪感が交錯する中で、二人の絆は試される。 「縛られるんじゃない。俺が望んでここにいることを選んでいるんだ」 これは、冷徹と呼ばれた令嬢と、影と呼ばれた騎士が、互いを選び抜く物語。

あなたのそばにいられるなら、卒業試験に落ちても構いません! そう思っていたのに、いきなり永久就職決定からの溺愛って、そんなのありですか?

石河 翠
恋愛
騎士を養成する騎士訓練校の卒業試験で、不合格になり続けている少女カレン。彼女が卒業試験でわざと失敗するのには、理由があった。 彼女は、教官である美貌の騎士フィリップに恋をしているのだ。 本当は料理が得意な彼女だが、「料理音痴」と笑われてもフィリップのそばにいたいと願っている。 ところがカレンはフィリップから、次の卒業試験で不合格になったら、騎士になる資格を永久に失うと告げられる。このままでは見知らぬ男に嫁がされてしまうと慌てる彼女。 本来の実力を発揮したカレンはだが、卒業試験当日、思いもよらない事実を知らされることになる。毛嫌いしていた見知らぬ婚約者の正体は実は……。 大好きなひとのために突き進むちょっと思い込みの激しい主人公と、なぜか主人公に思いが伝わらないまま外堀を必死で埋め続けるヒーロー。両片想いですれ違うふたりの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

生贄は囚われの愛を乞う~棄てられ令嬢と狼将軍~

マチバリ
恋愛
美しい見た目ゆえ、領主の養女となったレナ。 有用な道具に仕立てとする厳しい教育や義兄の異常な執着にうんざりしながらも何もかもを諦めて生きていた。 だが、その運命は悪政を働く領主一家を捕えに来た<狼将軍>と呼ばれる男の登場により激変する。

離婚を望む悪女は、冷酷夫の執愛から逃げられない

柴田はつみ
恋愛
目が覚めた瞬間、そこは自分が読み終えたばかりの恋愛小説の世界だった——しかも転生したのは、後に夫カルロスに殺される悪女・アイリス。 バッドエンドを避けるため、アイリスは結婚早々に離婚を申し出る。だが、冷たく突き放すカルロスの真意は読めず、街では彼と寄り添う美貌の令嬢カミラの姿が頻繁に目撃され、噂は瞬く間に広まる。 カミラは男心を弄ぶ意地悪な女。わざと二人の関係を深い仲であるかのように吹聴し、アイリスの心をかき乱す。 そんな中、幼馴染クリスが現れ、アイリスを庇い続ける。だがその優しさは、カルロスの嫉妬と誤解を一層深めていき……。 愛しているのに素直になれない夫と、彼を信じられない妻。三角関係が燃え上がる中、アイリスは自分の運命を書き換えるため、最後の選択を迫られる。

処理中です...