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第四章 ヒロインは世界を救う、かもしれない
7.誰を選ぶのか決めるのはヒロインの役目です
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結局今って、どのエンディングに向かっている途中なんだろうか。
疑問に思った私は、イリーナに乙女同盟作戦会議の再開を求めた。
◇
「結論から言うわね。わからない」
「え」
「だから、『わからない』。以上」
「この期に及んでそんな雑に見捨てる??」
薄情が過ぎる。
そもそも今はゲームの世界にはないルートを進んでることは、わかった上のことだ。
だが、だからこそ、イリーナとこうして議論しあいたかったのだ。
「私もユニカが魔に取り憑かれて誰かに殺されるエンドだと思ってたのよ。報告を聞く限りでは、誰とも親密になってないって言うから。だけどさ、帰ってきたあなたたち見たら、何よ全員いい感じじゃない。余計なのも一人混じってるけど」
ダーンのことだろう。ダーンは攻略対象者ではないと言っていた。
「ダーンはユニカが『華』を舞わなかったことで、変化が起きた結果なんでしょうけど。他の三人、フリードリヒ、カイル、ルーイとも、しっかりユニカのこと好きになってるじゃない」
ん?
「何それ。いつから?」
「いや、結構前でしょ。たぶんギスモーダ国に旅立つ前からよね。だって、そうでもなければあんな危険な橋渡らないわよ。大人しくプロたちに任せて引っ込んでるわよ。命賭けてまでたった三人で敵陣に乗り込んだりしないでしょ。そんなストーリー、ゲームにはないし」
いやいやいや。
私は手を振って否定する。
「国がかかってるからね? みんな国を思う心があって、その上にそれぞれに能力もあって優秀で、だからその力を遺憾なく発揮してくれたんじゃない」
「まだ騎士でもないただの学生が、国王に命じられたわけでもないのに命なんか賭けないわよ」
「フリードリヒに仕組まれてたからじゃない? そうだわ、肝心のフリードリヒは別に命かけてないし」
そう言うと、イリーナは真顔を私に向けた。
「もっとやばいもん賭けてんじゃない。彼は王子よ。国民の命丸ごと賭けてたのよ。それに失敗したら彼は聖剣の乙女を無駄死にさせた罪を負って国民から処刑されていたでしょうね」
私は改めて次期国王というフリードリヒの立場に思いを巡らせた。大きな立場ゆえに背負うものが大きすぎて、もたらす結果の振り幅が空恐ろしい。
「けど……、別に誰からもなんも言われてないもん。好きとか、そういうの」
「告白は卒業式後のダンスパーティでのイベントだからね。まあ、今のストーリー上にまだそれが生きてれば、の話だけど。でも、それっぽいことは言われてるでしょ? フラグは十分に立ってるように見えるわよ、外からは」
「いや、みんな共に戦った者同士、いろいろと気遣ってくれてはいるけど」
はたと気づく。
ん。
あれ。
そういうことか?
私の「思い当たりました」という顔に気づいたユニカが、盛大なため息を吐き出した。
「まったく、何してんのよ~。まあ別に、ここはまだ返事する段階じゃないからいいんだけど。そのかまととぶってるみたいな鈍さも、ヒロイン補正のなせるわざなのかなあ」
イリーナは額に手を当て、「疲れるわ」と項垂れた。
「すいませんした。」
じとっと見られて、さらにへこりと頭を下げる。
「もういいけどさ。で、誰選ぶつもりよ」
「アレク」
「……そう言うとは思った。だけどさ。全員断ったらどうなるのか、さすがに私も予想つかないわよ」
「また私死亡のバッドエンドみたいな?」
「いやまあ、さすがに平和な学園のダンスパーティでいきなり殺傷事件とかないでしょうけれども」
「ねえイリーナ。ダンスパーティでゲームとしてのエンディングを迎えれば、その先は定まっていないのよね。ゲームの世界に縛られなくていいのよね」
私が、さも思いついたというように喋り出したことに、イリーナは身構えた。
「まあ、そうね。前は私もそれを狙ってたし」
「そうよね。だったら、イリーナがヒロインやればいいじゃない」
「はあ?」
令嬢らしくなく顔を歪める。そう言いたい気持ちはわかる。
「フリードリヒはイリーナが他に好きな人がいるって知ってるし。お互いの了承のもと、ダンスパーティでだけ、ヒロインとヒーローっぽく踊れば、後は好きにできるんじゃない?」
「だったらユニカがやったっていいじゃない」
「私は無理。そんな器用なことできない。フリードリヒが多少なりと私に、その……好意をもってくれてるとしたらなおさら、それに応じるような嘘はつけない。他の三人だって同じよ」
もしもフリードリヒたちの誰かが私に告白してくれたとして、それに応じるフリをすることも、一緒に演技をしてくれと頼むことも、私にはできない。人の心を弄ぶようなことは、やっぱりできない。
私が存外真剣な目をしていたからだろう。
イリーナはしばらく私の目を見つめた後、諦めたように椅子の背にもたれると、「わかったわよ」と了承してくれた。
「どうせ聖剣の乙女として担ぎ出されて、もうほとんどヒロイン扱いになってるしね。こうなったら最後まで役として演じきって、そして自由を手に入れてやるわ」
イリーナとて早期に終戦に導いた立役者だ。念願の婚約破棄もフリードリヒから国王にうまく言ってくれることになっている。
これで晴れて私は、アレクを待てばいいだけとなった。
聞きたいことがたくさんある。早く帰ってきてほしい。
そうしてアレクのことを思い返したとき、イリーナに報告すべきことがもう一つあったことを思い出した。
「イリーナ。大事なことを話してなかったわ」
「何よ。ここのところ重い話が続きすぎて、正直聞きたくないんだけど」
「アレクはたぶん、この世界の外のことを知ってる。ここがゲームの世界かもしれないって、知ってると思う」
「ああ――、うん」
あれ。
うん、って何。
「知ってたの?!」
「いや、あの、うん。あれ、暖人よ」
は?
「アレクは私と同じ。暖人の記憶を持ってるのよ」
疑問に思った私は、イリーナに乙女同盟作戦会議の再開を求めた。
◇
「結論から言うわね。わからない」
「え」
「だから、『わからない』。以上」
「この期に及んでそんな雑に見捨てる??」
薄情が過ぎる。
そもそも今はゲームの世界にはないルートを進んでることは、わかった上のことだ。
だが、だからこそ、イリーナとこうして議論しあいたかったのだ。
「私もユニカが魔に取り憑かれて誰かに殺されるエンドだと思ってたのよ。報告を聞く限りでは、誰とも親密になってないって言うから。だけどさ、帰ってきたあなたたち見たら、何よ全員いい感じじゃない。余計なのも一人混じってるけど」
ダーンのことだろう。ダーンは攻略対象者ではないと言っていた。
「ダーンはユニカが『華』を舞わなかったことで、変化が起きた結果なんでしょうけど。他の三人、フリードリヒ、カイル、ルーイとも、しっかりユニカのこと好きになってるじゃない」
ん?
「何それ。いつから?」
「いや、結構前でしょ。たぶんギスモーダ国に旅立つ前からよね。だって、そうでもなければあんな危険な橋渡らないわよ。大人しくプロたちに任せて引っ込んでるわよ。命賭けてまでたった三人で敵陣に乗り込んだりしないでしょ。そんなストーリー、ゲームにはないし」
いやいやいや。
私は手を振って否定する。
「国がかかってるからね? みんな国を思う心があって、その上にそれぞれに能力もあって優秀で、だからその力を遺憾なく発揮してくれたんじゃない」
「まだ騎士でもないただの学生が、国王に命じられたわけでもないのに命なんか賭けないわよ」
「フリードリヒに仕組まれてたからじゃない? そうだわ、肝心のフリードリヒは別に命かけてないし」
そう言うと、イリーナは真顔を私に向けた。
「もっとやばいもん賭けてんじゃない。彼は王子よ。国民の命丸ごと賭けてたのよ。それに失敗したら彼は聖剣の乙女を無駄死にさせた罪を負って国民から処刑されていたでしょうね」
私は改めて次期国王というフリードリヒの立場に思いを巡らせた。大きな立場ゆえに背負うものが大きすぎて、もたらす結果の振り幅が空恐ろしい。
「けど……、別に誰からもなんも言われてないもん。好きとか、そういうの」
「告白は卒業式後のダンスパーティでのイベントだからね。まあ、今のストーリー上にまだそれが生きてれば、の話だけど。でも、それっぽいことは言われてるでしょ? フラグは十分に立ってるように見えるわよ、外からは」
「いや、みんな共に戦った者同士、いろいろと気遣ってくれてはいるけど」
はたと気づく。
ん。
あれ。
そういうことか?
私の「思い当たりました」という顔に気づいたユニカが、盛大なため息を吐き出した。
「まったく、何してんのよ~。まあ別に、ここはまだ返事する段階じゃないからいいんだけど。そのかまととぶってるみたいな鈍さも、ヒロイン補正のなせるわざなのかなあ」
イリーナは額に手を当て、「疲れるわ」と項垂れた。
「すいませんした。」
じとっと見られて、さらにへこりと頭を下げる。
「もういいけどさ。で、誰選ぶつもりよ」
「アレク」
「……そう言うとは思った。だけどさ。全員断ったらどうなるのか、さすがに私も予想つかないわよ」
「また私死亡のバッドエンドみたいな?」
「いやまあ、さすがに平和な学園のダンスパーティでいきなり殺傷事件とかないでしょうけれども」
「ねえイリーナ。ダンスパーティでゲームとしてのエンディングを迎えれば、その先は定まっていないのよね。ゲームの世界に縛られなくていいのよね」
私が、さも思いついたというように喋り出したことに、イリーナは身構えた。
「まあ、そうね。前は私もそれを狙ってたし」
「そうよね。だったら、イリーナがヒロインやればいいじゃない」
「はあ?」
令嬢らしくなく顔を歪める。そう言いたい気持ちはわかる。
「フリードリヒはイリーナが他に好きな人がいるって知ってるし。お互いの了承のもと、ダンスパーティでだけ、ヒロインとヒーローっぽく踊れば、後は好きにできるんじゃない?」
「だったらユニカがやったっていいじゃない」
「私は無理。そんな器用なことできない。フリードリヒが多少なりと私に、その……好意をもってくれてるとしたらなおさら、それに応じるような嘘はつけない。他の三人だって同じよ」
もしもフリードリヒたちの誰かが私に告白してくれたとして、それに応じるフリをすることも、一緒に演技をしてくれと頼むことも、私にはできない。人の心を弄ぶようなことは、やっぱりできない。
私が存外真剣な目をしていたからだろう。
イリーナはしばらく私の目を見つめた後、諦めたように椅子の背にもたれると、「わかったわよ」と了承してくれた。
「どうせ聖剣の乙女として担ぎ出されて、もうほとんどヒロイン扱いになってるしね。こうなったら最後まで役として演じきって、そして自由を手に入れてやるわ」
イリーナとて早期に終戦に導いた立役者だ。念願の婚約破棄もフリードリヒから国王にうまく言ってくれることになっている。
これで晴れて私は、アレクを待てばいいだけとなった。
聞きたいことがたくさんある。早く帰ってきてほしい。
そうしてアレクのことを思い返したとき、イリーナに報告すべきことがもう一つあったことを思い出した。
「イリーナ。大事なことを話してなかったわ」
「何よ。ここのところ重い話が続きすぎて、正直聞きたくないんだけど」
「アレクはたぶん、この世界の外のことを知ってる。ここがゲームの世界かもしれないって、知ってると思う」
「ああ――、うん」
あれ。
うん、って何。
「知ってたの?!」
「いや、あの、うん。あれ、暖人よ」
は?
「アレクは私と同じ。暖人の記憶を持ってるのよ」
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