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許されない現実
許されない現実5
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何か体が浮き上がる感じがする。
目をゆっくりと開け瞬きをすれば、柔らかい布団の感触に全身が埋もれていた。
(寝てしまっていたのか…?全部夢…?)
そう思っていると、ひんやりと優しく額に手を当てられた。
ずっと目が冴える。
母の目と目があった。
ガバッと起き上がる。ツゥーッと腰から鈍痛がし、顔を歪めると、母は無理しないの、とまた寝かされた。
母はどうしようもないような寂しそうな顔をしていた。
その母と体に来るひしひしとした痛みが、今までの出来事が全て夢ではなかったと悟った。
そっとなぜかうなじに手を触れさせた。
「まこと、運命の番、いたのね」
そう母がゆっくりと呟いた。
母の顔を横向きに寝ながらみつめる。
「うん、おじいさまの部屋に来る前に、出会った」
「そう」
沈黙が降りる。僕は何だか自分が嫌な奴になったような気持ちになった。
運命の番を失くしたせいちゃん。期待していた祖父の目までも失い、挙げ句の果てには僕との番への話を受け取った。
一方僕は運命の番に出会い、せいちゃんとの番になれる権利をもらい、どうしてここでただ黙っているんだろう。
「まことは好きな道を行けばいいわ」
母さんがそう、言った。
「小さい頃からただせいちゃんだけを見つめて追いかけてきたのもあなたの道だし、一生過ごしても会えるかわからない運命の番と出会えたのも、まこと、あなたの道なのよ」
母がそう微笑む。
僕は母の少し老いた顔を見つめた。
僕が見つめていると、母は何か横に置いた紙を手に取り、僕へ渡す。
「これね、あなたの部屋にあったの。まことがこんな絵が上手いはずもないから、きっとあの銀色の髪の子の絵ね。よくどんな子は知らないけど、こんな綺麗な絵を描ける子はきっと素敵な子ね」
僕は裏紙に書かれた絵を見た。
それは僕が好きな部屋から見える庭の景色だった。似ているようで似ていないというのが正直な見たときの感想だったが、彼の目で見た風景がこの絵に広がっていると思うと、少し彼の心に触れたような気持ちになった。
色鉛筆がないからボールペンで殴り書きされたイラスト。でも何か繊細なタッチが彼の優しさを感じさせ、色がついた絵はどんなものなんだろうと感じた。
「ふふ、きっといい画家さんになるわね。
…まこと、あなたが選んだ道なら私たちはどんなものでも応援するし、助けるわ。それはせいちゃんも思っていることよ。
私たちはあなたの家族なんだからどんなことでも頼りなさい」
母はそう微笑むとやんわり僕の頭を撫でた。
僕は本当に恵まれている。
こんな僕にどうしてそんな価値を置いてくれるのかわからなかったけど、今はただ、母のその言葉が嬉しかった。
目をゆっくりと開け瞬きをすれば、柔らかい布団の感触に全身が埋もれていた。
(寝てしまっていたのか…?全部夢…?)
そう思っていると、ひんやりと優しく額に手を当てられた。
ずっと目が冴える。
母の目と目があった。
ガバッと起き上がる。ツゥーッと腰から鈍痛がし、顔を歪めると、母は無理しないの、とまた寝かされた。
母はどうしようもないような寂しそうな顔をしていた。
その母と体に来るひしひしとした痛みが、今までの出来事が全て夢ではなかったと悟った。
そっとなぜかうなじに手を触れさせた。
「まこと、運命の番、いたのね」
そう母がゆっくりと呟いた。
母の顔を横向きに寝ながらみつめる。
「うん、おじいさまの部屋に来る前に、出会った」
「そう」
沈黙が降りる。僕は何だか自分が嫌な奴になったような気持ちになった。
運命の番を失くしたせいちゃん。期待していた祖父の目までも失い、挙げ句の果てには僕との番への話を受け取った。
一方僕は運命の番に出会い、せいちゃんとの番になれる権利をもらい、どうしてここでただ黙っているんだろう。
「まことは好きな道を行けばいいわ」
母さんがそう、言った。
「小さい頃からただせいちゃんだけを見つめて追いかけてきたのもあなたの道だし、一生過ごしても会えるかわからない運命の番と出会えたのも、まこと、あなたの道なのよ」
母がそう微笑む。
僕は母の少し老いた顔を見つめた。
僕が見つめていると、母は何か横に置いた紙を手に取り、僕へ渡す。
「これね、あなたの部屋にあったの。まことがこんな絵が上手いはずもないから、きっとあの銀色の髪の子の絵ね。よくどんな子は知らないけど、こんな綺麗な絵を描ける子はきっと素敵な子ね」
僕は裏紙に書かれた絵を見た。
それは僕が好きな部屋から見える庭の景色だった。似ているようで似ていないというのが正直な見たときの感想だったが、彼の目で見た風景がこの絵に広がっていると思うと、少し彼の心に触れたような気持ちになった。
色鉛筆がないからボールペンで殴り書きされたイラスト。でも何か繊細なタッチが彼の優しさを感じさせ、色がついた絵はどんなものなんだろうと感じた。
「ふふ、きっといい画家さんになるわね。
…まこと、あなたが選んだ道なら私たちはどんなものでも応援するし、助けるわ。それはせいちゃんも思っていることよ。
私たちはあなたの家族なんだからどんなことでも頼りなさい」
母はそう微笑むとやんわり僕の頭を撫でた。
僕は本当に恵まれている。
こんな僕にどうしてそんな価値を置いてくれるのかわからなかったけど、今はただ、母のその言葉が嬉しかった。
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