病み病みぴんくめろめろピース

COCOmi

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今日はいつもと打って変わって周りがワイワイガヤガヤと盛り上がっている。
なんせ、文化祭が始まったのだ。
高校生活では一大イベント。俺もここでは大盛り上がりで行きたいところではあったが……。

「よろしく」
「あ、はい……」

突然渡されたケーキ。俺はテーブルの上にある皿に盛られた小さなチョコレートの粒を摘むと、パラパラ…とケーキの上にまいた。

「あの…できたけど……」
「え?……あ、そこ置いといて。給仕の人とりにくると思うから…」
「あ……はい……あ、あと、これ…」

声が聞こえてないのか、俺の話を最後まで聞かずにどっかへ行ってしまうクラスメイト。

最後まで人の話聞けよッ!!!!

そう今にも叫び出したいところを今回は珍しくグッと抑え、俺はまた定位置に戻った。


そう、文化祭。

華やかなムードで周りは色めき立ってるらしいが、俺はクソクソ萎え萎えモードだった。

というのも、文化祭だぞ。めんどくさいことしかない。

ヒコたんは給仕係でどっか行ってしまうし、生徒しかいなかった校舎は保護者やら他校生やら何やらで人はいっぱいいてめちゃくちゃうるさいし、クラスメイトは出店の「メイド喫茶」の売上を出す為になんか一致団結!みたいな雰囲気醸し出してて乗り気じゃない俺は完全に蚊帳の外にされてるし、うざっ。


(クソクソクソ。つまねえんだよ。帰りてえ。マジ帰りてえ)

ストレス度爆上がり。午前中はずっとクラス出店の手伝いにさせられている。
今にも逃走したいところだが、ケーキが無言でどんどん目の前に並んでいき、無言で仕事をほったらかして逃げられる雰囲気ではない。

俺は結局、仕事をこなさなければならず、目の前のケーキにまた皿から取ったチョコレート小粒を乗せ、給仕が取りに来るという近くのテーブルに置いた。




……ちなみにさ、これ、なんの仕事をしているかわかる?
俺はもちろん給仕をやらないから、裏方に回って調理担当にさせられてるんだけどさ。俺があまりにもクラスメイトに嫌われてて、そして俺がとてつもなくクラスメイトを嫌ってたせいで、調理係のやつに料理の作り方すら教えてもらえなかった。
でも、さすがに俺一人だけサボらすわけにもいかないから、俺は最後の仕上げの「ケーキの上にチョコレートを乗せる」っていう係を命じられたのだ。

ふと周りを見渡せば、ケーキ担当のクラスメイトたちが各々ケーキを作っている。ケーキも種類が豊富らしく、俺が担当しているのはチョコケーキだが、チーズケーキやショートケーキ、なにやら他にもわんさかあるらしい、メニューすら俺教えてもらってないけど。

ふと、ショートケーキを作ってるクラスメイトがいちごをさっと掴んでケーキの上に乗せ、テーブルの上に置いた。ケーキが目の前でひとつ完成する。


………これさ、俺いらなくね?
チョコレートのせるの、ケーキ作ってたやつがついでにのせればよくね?工程に俺を挟む必要ある?

本当に、俺に割り当てる仕事がなかったんだろう。
他の仕事はチーム制だが、俺の仕事だけは一人で端っこに追いやられている。なんだこれ、正直しんどい。

ガチで、ほぼ必要ない仕事を割り振られてる俺は「だったら早く帰らせろよ」と白目を剥きながら、淡々とケーキの上にチョコレートを乗せていた。


ケーキを15個ぐらい完成させた頃だろうか?

急に目の前が暗くなったと思うと、肩を勢いよく叩かれた。

「裕里じゃないか!あんなに嫌がってたのに、ちゃんと仕事してるなんてえらいな!」
「ひ、ヒコたん!」

三角巾がぐちゃぐちゃになるほど、頭をガシガシと撫でられる。き、今日パワー強いね、機嫌がいいのかな?

俺はひとまずヒコたんに思う存分撫でてもらうと、三角巾を直しながらヒコたんの方へ向き直った。

「え"っ」

しかし、ヒコたんの姿を見た瞬間、俺は思わずギョッとした。

短髪でいつもの元気な笑顔を見せるヒコたんだが着てる服はフリフリのメイド服で、スカートの丈が思いっきり短い。服裾も半袖だからバチンバチンの上腕二頭筋が見えてるし、足もサッカー足の極太筋肉足が丸見えである。しかも剃ってないすね毛丸出しの脚がとてもじゃないが見てられない。

ワーーーーッ!ひどい!せめて毛だけは剃って!?!?!

もう仰天することしかできなくて目をまん丸に開けてヒコたんを見ていると、ヒコたんはこちらの顔を見てどうだ?似合うか?と笑ってくる。
いや、筋肉マッチョメイド喫茶ってコンセプトならワンチャンいけたかもしれないね…。

コスプレになぜか相変わらずノリノリなヒコたんという悲惨な様子に一瞬宇宙猫になりかけている俺。そこに、突然クラスメイトたちが騒ぎ立ててコチラに集まってきた。

「ちょっと雅彦!まだ終わってないよ!!」
「しかも、その服伊藤の服!雅彦のはこっち!!」
「雅彦発見した!!除毛班、至急来て!!!」
「あれ?これで完成じゃないのか?」

?という顔をして辺りを見回すヒコたん。
それとは反対に切羽詰まった顔をしたクラスメイトたちが一斉にヒコたんを取り囲み、そのまま担ぎ上げるとエッサホイッサとヒコたんを奥の方へ連れて行って消えて行ってしまった。

残された俺はシーンと静まり返るその場に立ち尽くした。

い、一体何だったんだ……。
多分あの様子だとヒコたんが未完成のまま?飛び出してきちゃったんだろう…。ヒコたんも大概おちゃめさんである、ハハハ。






……まあなんやかんやあったわけだが、あの事件一行、このように俺たちの関係は一切変わらずにいた。

それは、ヒコたんが変わらなかったからである。

あの日、結局駿喜と渋々登校した俺だったが、ヒコたんは相変わらずの呑気さと包容力で「仲良くなれてよかったな!」と微笑んだだけだったのだ。

そうやってヒコたんが変わらない一方で、駿喜はあれから調子付いたようにちょくちょく俺に絡んで来るようになった。しかも、なんだか「イジリ」がよりうざくなった気がするのだ。

ことあるごとに教室に現れるし、トイレに行こうと廊下へ出たら着いて来られるし、ついこの前は突然尻を触られた。

ほんっっっっっっっっっっっとに、ウザイ!!!

嫌いだし、やめろって言ってんのに、むしろそれを楽しんでよりちょっかいかけられてる気がする!
なんなの!?貶される方が好きなドMなわけ!?しかも最後セクハラじゃん!?やばくね!?こんなんになるんだったら、前の関係の方がまだマシだったわ!!

こんなに明らかに駿喜の態度が変わっているのに、それを仲良くなったで一掃したヒコたんもヒコたんである。


(…ヒコたん、俺のことちゃんと見てくれてる?)


俺はこの現状にもう、ため息を吐くほかなかった。




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