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第三章 架け橋との出会い
就業後の女子更衣室にて_
しおりを挟む「んで、何が不満だってぇ? 本格的に結ばれた訳でしょう?」
真ん丸な目を一層丸くした安川さんが問い掛けてくる。
透と付き合い始めてなかなか進展しないことを、本人以上に焦れていた二人に“アノコト”には触れず一応、展開はあったと報告はしていた。
あれからデートは重ねていたし、そういう場所へも連れてゆかれるのだけれど、彼が最後まで求めて来ないことへの戸惑いを、私達の他は出払った更衣室で溢していた。
「だからですね……それ以上しないってことはどうなのだろう、と……」
「それってノロケ? 大切にされてるって話でしょ」
「そうよ!毎週1回は会ってるのでしょ?ウチのなんか『何をイマサラ』ってさぁ、月一回会えば良いほうよ? 会ったって飲んで食ってで終わり。チューも無いわ」
吉冨さんが口を尖らせ腕組みをして言う。
「だって……試されてる感じで」
「まあね、悶々とする気持ちも分からなくもない。だったら“おねだり”するとかさ、いっそ襲えばいいんじゃないの?」
「あれ~♪ お代官様お助けを~♪」
(ねだるか襲う、そのどちらも許されそうにない雰囲気なのですが)
帯を引っ張られ、回される真似してハシャいでいる二人に苦笑しまう。
二人は最も仲の良い気の置けない友であり、頼りにしている大先輩方である。
総務の安川薫さんは内部の事情通。
成人した子供さん二人を持つシングルマザーで、複数のK-POPグループの追っかけが最大の楽しみという、オンナ力のあるフランス人形のように可愛い女性。
企画部の次長をしている吉冨恭子さんは、業務各所に意見が言える人。
大変美人で何をするでも卒がなく、又くだけた話題に事欠かない愉しい女性。
親しくなる以前に重役の誰かと付き合っている噂を聞いているが、敢えて私は尋ねないことにしている。
二人ともアラフォーを卒業してはいるが、スタイルも抜群で綺麗なお姉様方。
自分達の結婚に否定的なのには家庭的事情もあると言うが、どことなく男性を絶対視しない様にしていると感じる。
何はともあれ私の恋を一番応援してくれている二人。
(この二人がイチオシした男が透なんだものね)
そして社内の誰もに一目置かれて、『ダブルY』と怖れられている存在でもある。
そんな二人と親交を持つようになったのは、上司と上手く別れられなくて転職しようかと悩んだ出来事がきっかけであった。
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――後書つぶやき――
更衣室や部室って、特有のニオイ有りますよね。
女子更衣室のこれは毎日変わっているように思うのですが、男子更衣室ってどうなんだろう?
応援ありがとうございます!
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