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第二章 扉をひらく鍵穴を探して
彼と一緒に見る、あの扉の内側
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『文中には残酷な表現、際どい言葉も使用しており、R18指定とさせて頂いております。18歳未満の方、好まれない方の閲覧は御遠慮くださる様お願い致します。』
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店を出て、私の車に移動し本を一緒に見る事にした。
お勘定を済ませる時、先程の店員が残念そうに彼に視線を送っている。 その手に触れぬ様、彼は紙幣と小銭を落として「釣りは無いから」と乾いた声で応じる。
これは彼の常套句と決まった行動。
付き合い始めた当初はこれが気になって仕方なくて。 直すよう注意していたのだけれど、それが彼の私に対する心遣いなんだと、そのうち感じる様になった。
逆に、私の居ないところではどうなんだろう? などと考えたりもしたのだが、今日はその疑問も湧かない。 だって彼は私に帰属しているのだから。 今が揺るがないのだから他所であっても揺るぐことは無い。 そしてこの今に私は満足している。
私って現金過ぎるだろうか?
少し車を走らせて、住宅街にある公園のコインパーキングに停めた。
ここなら人も余り来ないし怪しまれない、と彼が言ったからだ。
例の紙袋を開くと写真集と読み物が何冊か入っていて、どれも厚い。
話が載っている方は家で読んで欲しいと言われ、表紙を見ただけに終った。
別のタイトルだけ書かれた白表紙を開くと、いきなり女性が男性の口に液体を流し込む写真があった。
衝撃的で身体に電流が走った気がした。
この全頁にわたって、黒や赤の皮革製かビニール素材のボンテージ姿の無表情な女達が、鷹揚たる態度で何かしら行使し、顔バレさせない為なのか口と鼻だけ開いた黒い覆面を被せられ、身に纏うのは黒いビキニパンツのみという男達が無条件に従う画像であった。
首輪と手枷をされている男と、その背に腰掛け、鎖を引っ張り鞭打つ女。
胸をハイヒールで踏みつけられたまま、もう片方の足首を舐めている男。
仰向けに寝た男の顔の上に、勝ち誇るように跨がって座る女。
思い切り伸ばした舌で床を舐める男の背に、後ろから女が朱色の蝋燭を高く掲げ、背筋や尻に垂らしている、etc.
どれも覆面で隠しているにも関わらず男の喜びが感じ取れた。
写したカメラマンの腕が良いのか? 写されている登場人物が上手いのか? そのどちらでもなく、それが至極当然な現実なのがこの世界なのか?
アピールせんとするのは果たして、男性へなのか女性へなのか? それさえも分かっていない段階に私はあるのは確定的だ。
「まだこれは大人しい部類なんだけど。彩香様が気に入るスタイルが有ればいいな……」
呟いた彼の潤み妖しく光る。
「それは、気に入れば試してみろ、と言ってるのね?」
瞳に吸い込まれるが如く私は、本の中程にあった一枚を真似、彼の上瞼にやさしく舌を差し込んだ――――
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――後書きとして――
恋人とエッチな本を見たことありますか?
ビデオじゃなくてです。
あんまり有ることじゃ無いですよね?
況して、その様な書籍を贈られるなんて、ね。
作者は……
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店を出て、私の車に移動し本を一緒に見る事にした。
お勘定を済ませる時、先程の店員が残念そうに彼に視線を送っている。 その手に触れぬ様、彼は紙幣と小銭を落として「釣りは無いから」と乾いた声で応じる。
これは彼の常套句と決まった行動。
付き合い始めた当初はこれが気になって仕方なくて。 直すよう注意していたのだけれど、それが彼の私に対する心遣いなんだと、そのうち感じる様になった。
逆に、私の居ないところではどうなんだろう? などと考えたりもしたのだが、今日はその疑問も湧かない。 だって彼は私に帰属しているのだから。 今が揺るがないのだから他所であっても揺るぐことは無い。 そしてこの今に私は満足している。
私って現金過ぎるだろうか?
少し車を走らせて、住宅街にある公園のコインパーキングに停めた。
ここなら人も余り来ないし怪しまれない、と彼が言ったからだ。
例の紙袋を開くと写真集と読み物が何冊か入っていて、どれも厚い。
話が載っている方は家で読んで欲しいと言われ、表紙を見ただけに終った。
別のタイトルだけ書かれた白表紙を開くと、いきなり女性が男性の口に液体を流し込む写真があった。
衝撃的で身体に電流が走った気がした。
この全頁にわたって、黒や赤の皮革製かビニール素材のボンテージ姿の無表情な女達が、鷹揚たる態度で何かしら行使し、顔バレさせない為なのか口と鼻だけ開いた黒い覆面を被せられ、身に纏うのは黒いビキニパンツのみという男達が無条件に従う画像であった。
首輪と手枷をされている男と、その背に腰掛け、鎖を引っ張り鞭打つ女。
胸をハイヒールで踏みつけられたまま、もう片方の足首を舐めている男。
仰向けに寝た男の顔の上に、勝ち誇るように跨がって座る女。
思い切り伸ばした舌で床を舐める男の背に、後ろから女が朱色の蝋燭を高く掲げ、背筋や尻に垂らしている、etc.
どれも覆面で隠しているにも関わらず男の喜びが感じ取れた。
写したカメラマンの腕が良いのか? 写されている登場人物が上手いのか? そのどちらでもなく、それが至極当然な現実なのがこの世界なのか?
アピールせんとするのは果たして、男性へなのか女性へなのか? それさえも分かっていない段階に私はあるのは確定的だ。
「まだこれは大人しい部類なんだけど。彩香様が気に入るスタイルが有ればいいな……」
呟いた彼の潤み妖しく光る。
「それは、気に入れば試してみろ、と言ってるのね?」
瞳に吸い込まれるが如く私は、本の中程にあった一枚を真似、彼の上瞼にやさしく舌を差し込んだ――――
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――後書きとして――
恋人とエッチな本を見たことありますか?
ビデオじゃなくてです。
あんまり有ることじゃ無いですよね?
況して、その様な書籍を贈られるなんて、ね。
作者は……
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