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第六章 ピリオドの打ち方
助け船を出したのは考えもしなかった二人
しおりを挟む女性社員にも避けられるようになると、会社にいる間は文字通り針の筵と化していく。 私は日に日に疲弊していった。 眠れなくてふらつく体に鞭打ち出社し、思う様に仕事が捗らず先輩方から叱咤されることが続く。
(私は何をしているのか?ここには無用な人間なのでわ?嗚呼、辛い……辞めたい……いっそ何処かへ行ってしまいたい……人として崩壊してしまう、駄目になってしまう……いつ辞表を書こう?でも悔しすぎるよ……このままじゃ逃げるのと同じじゃ?……)
彼女達と直面したのは、私がそんな堂々めぐりをしていた時だった。
いつもと同様、項垂れ退勤しようとしていた私は、『ダブルY』に呼び止められ、捕われるように洗面所に連れていかれたのだ。
私は何を言われるのか恐ろしくて直立不動。 不良に絡まれ放課後、裏庭に呼び出された情けない生徒ってこんな感じなのだろう、なんて自傷し笑う余裕などその時は無かった。
『アンタ、恐怖に引き攣らせた顔をしていたわよ。笑笑』と後になって二人に聞かされた。
「噂話を聞いてるけどアンタ。本当の処はどうなのよ?言いたい事あるんじゃないの?」
「かなりイタイこと言われてるけど? 貴女を知ってるって人には“ あれはデマだ”って証言する子もいるのよ?」
「男ばっかりに言わせてるんじゃ駄目よ!私達が聞いてあげるから。いいから、全部言ってみなさい。」
二人の問い掛けが意外なニュアンスを保っていて、彼との別れに至るこれ迄の事を、澱むことなく私は話した。
鏡に写っている自分の口元を、不思議な気持ちで眺めていたのを覚えている。
ひと通りの事を聞いて、二人の出した意見は同じだった。
「社内恋愛の尻拭いは男がするもの!」
「私達に任せなさい。必ずアイツをトバしてやるからねぇー」
吊し上げの為に呼ばれたのでは無かった事に、漸くして気付く。 堰をきった様に涙は零れ出した。
このところ流し慣れていたものとは違い、その雫のひとつひとつは熱くて心地良かった。
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――後書きデス――
『ダブルY』。。。再登場です(^_^;)
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