タブー的幻想録

ももいろ珊瑚

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第九章 肉欲と呼ぶもの

ラブホという器に似合う女

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 ホテル街に差し掛かってマユミが停まったので、僕も歩くのを止めた。

とおるの部屋に行かないの?ここから近いのでしょ……ラブホ代が勿体なく無いかな?」

 (行くのを止めたんじゃ無いのか?残念だ)

「そんな事気にしなくていいよ。部屋は散らかってるから誰も来て貰えないんだ」
「だって、哲哉てつやさん。行ったこと有るって言ってたよ?夜景が綺麗に見える高層マンションだ、って。部屋も広くてきちんとしてて綺麗だったって言ってたし。どうしてマユミは入らせてもらえないの?」

 (哲哉め、余計な事を話して回りやがって)

「男と女性は違うだろ?そりゃあ奴の部屋より汚くしてる人間の方が少ないだろうな。ああなんだ、此処は嫌なんだ。なら止めにしようよ」
「ううん、そんなことは無いのよ。マユミ、何処でしたって構わな~い♪あっ、あの……とおるさんとなら何処へでもついてっていいよ、っていう意味だから……こんな所マユミはあんまり来た事が無いしぃ。ね?変にとらないでね、それでだから、ね?」
「そうなんだ。あんまり、ね」

 (それってこんな場所を含めて始終、男とヤってるってことだろ?人間は焦って吐露してしまうと、尚更言わなくても良い事まで白状してしまうものだ)

「マユミ酔ったみたい、変なこと言ってる?怒ったぁ?ねぇ、とおる

 (なんで呼び捨てにするんだこの女、馴れ馴れしい、嘗めていやがる)

「いや。なんも思ってないよ、帰るんでしょ?ならどうでもよい事じゃない?」
「そんなこと言わないで!折角ここまで来て何もなしに帰ったなんて……あの子達に言えないもん」

 (やっぱり腐った花だ、お前を含め皆)


 僕の腕を引っ張り、勢いマユミが目の前のホテルの入り口向かい歩を進める。 酔っ払い共がこちらを見遣り、何かしら冷やかしているが聞こえているのかいないのか、マユミは脇目も振らず前に進む。 そのさまは、通い馴れた店の暖簾のれんを潜る常連客を思わせる。

 (はぁ……面倒臭い)

 僕は頭の中でだるく溜め息をついた。

 (早急に済ませられたなら今夜のうちに帰られるか。あと二時間もないが……先ずはこのニオイどうにかさせるか)

 入口から一番手前の部屋のボタンを押した。

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