【完結】婚活に疲れた救急医まだ見ぬ未来の嫁ちゃんを求めて異世界へ行く

川原源明

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診療所開設!

第27話 姫様の病

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 王と王妃、そして鎧を着こんだ2人の男女の兵の後をついて謁見の間をでた。

「誠明よ、その白い狐はどうしたのだ?」
「この世界に来た時の最初の患者ですね、近くに親と思しき亡骸があったんですが、身よりも無さそうでしたし一緒に過ごしています」
「そうか、白い狐は神使とも呼ばれている。大事にせよ」
「神使ですか?」
「さよう、主は迷い人だったな、初代と白狐の話は知っているか?」
「今日城に来る前にシェリーさんから聞きました」
「そうか、当時白き狐のおかげでこの国は生まれた。だから我々は白い狐を神使とよんでいるんだ」

 ん~ユキが神の使いねぇ……、とてもそうは思えない、普通の賢い白い狐としか……。

「キュ?」

 自分がユキに関して考えていると、抱っこしているユキが見上げるように自分の顔を見ながら首をかしげていた。

「そうなんですね」
「あぁ、ところで主は何の目的があってこの世界に来た?」

 それを話さなきゃいけないの?
 まだ見ぬ嫁ちゃんを見つけるために!と言わないと駄目なのか?

「秘密事項ってことでもいいですか?悪い事ではないし、あまりにも個人的な事なので……」
「そうか、構わぬ無理して聞く気はない」
「ところで、あなたとシェリーはただの知り合いなのかしら?」

 王妃から質問がきた。

「謁見でシェリーさんが言っていた通りです。昨日アイアンフォースの人が診療所に来た事がきっかけで会いました」
「そうでしたか、あなた彼女いるの?」

 !?

「いえ、居ないですね」
「そう」

 それだけ言うと、その後誰かがしゃべる事もなく、とある部屋に案内された。

「ここだ」

 王はそれだけ言うと、扉を開け中に入って行った。

 王と王妃に続きシェリーが続いたが、鎧を着た男女は入口を守るように左右に立った。

「えっと……?」
「私らに構わず入っていいよ」

 これまで無口だった鎧を着た男が教えてくれた。

 よく分からなかったが、鎧男の言葉を信じ、部屋に入った。

 謁見の間よりはちょっと装飾品が置かれ。天蓋カーテン付きベッドの上には1人の女性が横になり、その横には自分と同い年位のメイドがリンゴの皮をむいていた。

 王と王妃の姿に気づくとメイドが立ち上がり、頭を下げていた。

「よい、そのまま進めてくれ」
「はい」

 メイドが再び座りリンゴの皮をむき始めた。

 王はベッドの横まで来ると。

「誠明よ、娘をみてくれんか?」
「はぁ」

 ユキを床に下ろし、ベッドで寝ている女の子は手足が布団の中の為、頬に触れた時に顔が暖かく汗をかいているのが分かった。

 たしか、謁見の時に“疲労感や食欲が無くなったりするのは菌の仕業か?”と聞いていた。

 疲労感、寝汗、発熱ね、この時点で可能性が出てくるのは、風邪等も考えられるが、それなら自分をここまで呼ばないだろう、深刻な病で先の症状と考えると、ウィルス性の何かや白血病が思い当たった。

 触診を発動させ、血液をチェックすると、普通の人より明らかなレベルで未熟な白血球から成熟した白血球が多かった。

 この時点で白血病の可能性が高い、次にチェックするのは遺伝子だ、異常な遺伝子が形成されているかどうかだ、この世界に来て初めての遺伝子検査だ、遺伝子検査の結果、異常形成された遺伝子が見つかった。

 この結果から、慢性骨髄性白血病病で間違いないだろう。

 姫様の状態をみると、慢性骨髄性白血病の病期の慢性期、移行期、急性期の3段階のうち、移行期から急性期に移りそうな状態だった。

 あまり時間が残されていないな、さてどうするか、骨髄性白血病、いくつか治療法があるが取れる選択肢が少ない。

 化学療法するにしても、白血病細胞の分裂停止か殺すための薬剤が思いつかないし、そんな薬剤を持ち込んでいない。

 免疫療法、患者本人の免疫を活性化して白血病細胞と戦う方法だが、これも正直厳しいだろう。

 造血幹細胞移植、正直これが取れる手段だと思ってはいるが、抗がん剤や放射線で白血病細胞を殺してから本人またはドナーからの正常な造血幹細胞移植をする必要がある。幸い骨髄のタイプは一般的なもののようだからドナー探しには苦労しないだろうが、問題は抗がん剤に変わる薬品と放射線の存在だ、この世界に在る薬草で思い浮かばなかった。放射線なんてそんなもので治療できる設備がない。

 完全に詰んだ気がした。

 ただ一つ、希望があるとしたら浄化魔法だ、あれで白血病細胞だけを浄化できれば、造血幹細胞移植で治せる。

「原因はまだわからんのか?」
「何の病気かはわかりましたが……」
「ほう!?」

 王は原因が何の病気か分かったと伝えると、表情が明るくなった。

「慢性骨髄性白血病という病気です。体内に異常な白血球が増えているんです」
「ふむ……」

 まぁ何ぞやだよね。謁見の間でだした顕微鏡を取り出した。

「もしやまた?」
「えぇ、今度は菌というよりは細胞ですけどね」

 スライドガラスを取り出し、自分の指先を噛み出血させ、スライドガラスに血を擦り付けた。

 スライドガラスを設置し、調整しながら顕微鏡を覗いてみると、沢山の赤く丸い赤血球、ちょっと黒い部分のある白血球、点にしか見えない血小板が見えた。

「覗いてもらって良いです?」
「あぁ」
「赤くて丸い奴が赤血球と呼ばれるものです。視界の中に黒い奴ありますよね?」
「あぁ、あるな」
「それが白血球と呼ばれるやつなんです。本来身体を守るために悪さをする菌なんかを退治してくれる存在なんですが、その白血球が生まれる過程で異常をきたしてしまう事があるんです。その異常をきたした白血球が増える病気の事なんですが」
「ほう、治せるのか?」
「ん~治療法の話をしますが、まず異常をきたしている白血球を減らし、正常な造血幹細胞を、どなたかから移植すればいいんですが、今の時点だと異常な白血球を減らす手段がないんですよ」
「そうか……、娘はこのまま死を待つしかないのか……」

 自分の話を聞いていた王妃が泣き崩れ、王もうなだれた。

「1つだけ、可能性がある手段があるのですが……」
「可能性とはなんだ?」
「異常な白血球を浄化魔法で消し去る方法です。自分自身浄化魔法を使って特定の細胞や菌を消す練習をしているのですが、なかなかうまく行かなくて……」
「そうか、聖女の奇跡の話か……」
「聖女の奇跡か知りませんが、聖女が使っていた浄化が出来れば可能性があるかもしれません」
「ふむ、エリクサーの素材を探し続けるよりは……、そちらの方が希望があるのか……」

 本当にエリクサーとやらは万能薬なんだろうか?

 もしそうなら抗がん剤と思った時に思い浮かぶはずなのに……。何か特別な条件があるのか?

 何かもやもやしていると。

「王様、聖女様の手記を彼に見せては?」

 王妃の側に居たシェリーが王に向けて言った。

 聖女様の手記ってなに?と思っていると。

「そうか、何かの手掛かりになるやもしれんな、おい」
「はい、ただいま」

 先ほどリンゴの皮をむいていたメイドが立ち上がり、部屋を出て行った。
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