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放浪の旅の始まり
第42話 異端審問官
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カイルの胃摘出手術から2週間たったある日の事
午前中の診療中に診療所入り口の扉がバタン!と大きな音を立てて開いた。
「兄ちゃん!兄ちゃんいるか!?」
この声は孤児院の子だな?
「すいません、アンさんちょっと行ってきていいですか?」
「良いよ行っておいで」
診察室から廊下に出ると、思っていた通り孤児院にいる男の子が居た。
「急にどうした何かあった?」
「兄ちゃん!これを!院長先生から兄ちゃんに急ぎこれを渡せって」
そう手渡されたのは封筒にも入っていない1枚の羊皮紙だった。そしてそこには“マバダザに異端審問官が向かっています。急ぎ逃げなさい”と書かれていた。
ついに来たか。
「ありがとう、院長先生にも伝言ありがとうと伝えてくれる?」
「うん!兄ちゃんも気を付けろよ!」
それだけ言うと男の子は診療所を出ていった。
この街に向かっていると書かれているあたり、まだ到着していないが時間の問題とみて間違いないだろう。午前中の診察だけ終わらせたら急ぎ逃げる準備をしなければ。
受付前の待合で待っている人達から。
「大丈夫?」
等心配してくれる声を聞いた。
「事情は後で話しますよ」
とだけ伝えた。急ぎ診察室に向かい、常連のアンさんに話をした。
「大丈夫だったかい?」
「ん~あまり大丈夫じゃないかもです。孤児院の院長先生から異端審問官が来たから逃げなさいと」
「そうかい、となるとこの国を出るのかい?」
「そうなりますね、なので1年分の薬をお渡しします」
「そんなに?」
「えぇ、いつ戻ってこれるかわかりませんし……」
「そうかい、なら受け取ろうかねぇマジックバックあるからいくらでも詰めるけど、お代はいつものしか持ってきてないよ?」
「お代は今日の分だけで大丈夫です」
「そうかい本当にすまないねぇ」
「いえいえ」
そう伝え、リウマチの進行を遅らせる軟膏と痛み止めを大量に渡し、この世界でも作れるリウマチの進行を遅らせる薬のレシピを渡した。
「先生これは薬のレシピかい?」
「えぇ、薬が切れた後、薬を作れる人にその薬を作ってもらえるように依頼してください、それが自分に出来る精いっぱいの事だと思うので」
「先生、公開されている物を除いて、製薬のレシピは秘伝中の秘伝と言われていますよ。そんなに簡単に他人に渡してはダメですよ」
「そう言われても緊急時ですから……」
「そうさね、分かった誰にも見せず自分で作るとするよ、先生今までありがとうね」
「いえいえ、アンさんもお元気で」
そう言うといつもの大銀貨1枚をだして診察室を後にしていった。
その後も常連さんには当面の間の薬と製薬レシピを渡すとアンさんと同じような事を言われながら午前中の診療を終わらせた。
自宅にある物、診療所エリアにあるもの、そしてドワーフ達が集まる場所にあるものすべてアイテムボックスにしまえるものはしまい、外にでて診療所の建物をアイテムボックスにいれ、建物を受け取った時にジルさんから貰った魔石を出すと、建物が建っていた位置にある穴が魔石から出てきた土砂によって完全に塞がった。
道を歩いている人達は凄く驚いていたが、今は周囲を気にしている場合ではない。
「ユキ、自分の姿を変えるか消してくれる?」
「キュッキュ!」
自分の姿が変わったり消えたりしているのが分からないが、ユキが肯定したのを見ると多分やってくれているはずだ。
さて次はどうするか、ザックかジルの所に一言言いに行くべきだろう。
鍛冶ギルドか、建築ギルドかザック宅だな……。一番近いのは建築ギルドだな。
急ぎジルが居るであろう建築ギルドに向かった。途中すれ違う人々を見る限りどうも自分の姿が消えているらしく何度もぶつかりそうになった。
建築ギルドの戸を開けると、顔見知りのドワーフ達ばかりが居た。
中に居た人皆が、戸が開いたのに誰も居ない事に不思議に思っている様子だった。
「ユキ、幻影解除」
「キュッキュ!」
ユキが幻影解除してくれたと思われるタイミングで近くにいたドワーフの子が話しかけてきた。
「あれ兄ちゃんとユキちゃんじゃないか、こんな時間にどうした?親方にようか?」
「うん、急ぎでジルさんにつないでほしい!」
「わかったちょっと待ってってくれ」
そう言うと奥へ駆けこんでいった。そしてすぐさま戻って来た。
「こっち来てくれ、親方があってくれると」
「あぁ」
案内してくれるドワーフの後について行くと一つの部屋に通された。
「昼間っからここに来るとか珍しいな、何かあったのか?」
部屋に入るなりジルさんがそう聞いてきた。
「孤児院の院長から異端審問官がこの街に向かっているから逃げろと」
「なるほど、診療所は片づけたか?」
「えぇ、穴も塞ぎました」
「ならよい、おまえさんはザック宅に迎え、ワシはザックの所に行ってくる」
それだけ言うと、ジルさんは消えるように部屋を出て言った。
結局ザック宅に行くのかと思いながら向かうと、すでにザックがいた。
「入れ事情は聞いている」
あれ?おかしい、ジルが建築ギルドから鍛冶ギルドにいって事情を説明してザックがここにいる……、もしかしてジルさんのスキルが関係しているのかな?
久々のザック宅に入ると。
「こっちだ」
案内してくれたのは窓のない部屋だった。
「これからわしらも異端審問官の位置や狙いを探るからしばらくここに居てくれ、廊下に出てもいいが決して明かりを灯すなよ」
「わかりました」
その後、廊下のカーテンから漏れる外の明かりをみていると、夕方、夜となったのにもかかわらずザックが戻ってくる気配がなかった。
仕方なく案内された窓のない部屋にベッドを出しユキと共に眠りについた。
午前中の診療中に診療所入り口の扉がバタン!と大きな音を立てて開いた。
「兄ちゃん!兄ちゃんいるか!?」
この声は孤児院の子だな?
「すいません、アンさんちょっと行ってきていいですか?」
「良いよ行っておいで」
診察室から廊下に出ると、思っていた通り孤児院にいる男の子が居た。
「急にどうした何かあった?」
「兄ちゃん!これを!院長先生から兄ちゃんに急ぎこれを渡せって」
そう手渡されたのは封筒にも入っていない1枚の羊皮紙だった。そしてそこには“マバダザに異端審問官が向かっています。急ぎ逃げなさい”と書かれていた。
ついに来たか。
「ありがとう、院長先生にも伝言ありがとうと伝えてくれる?」
「うん!兄ちゃんも気を付けろよ!」
それだけ言うと男の子は診療所を出ていった。
この街に向かっていると書かれているあたり、まだ到着していないが時間の問題とみて間違いないだろう。午前中の診察だけ終わらせたら急ぎ逃げる準備をしなければ。
受付前の待合で待っている人達から。
「大丈夫?」
等心配してくれる声を聞いた。
「事情は後で話しますよ」
とだけ伝えた。急ぎ診察室に向かい、常連のアンさんに話をした。
「大丈夫だったかい?」
「ん~あまり大丈夫じゃないかもです。孤児院の院長先生から異端審問官が来たから逃げなさいと」
「そうかい、となるとこの国を出るのかい?」
「そうなりますね、なので1年分の薬をお渡しします」
「そんなに?」
「えぇ、いつ戻ってこれるかわかりませんし……」
「そうかい、なら受け取ろうかねぇマジックバックあるからいくらでも詰めるけど、お代はいつものしか持ってきてないよ?」
「お代は今日の分だけで大丈夫です」
「そうかい本当にすまないねぇ」
「いえいえ」
そう伝え、リウマチの進行を遅らせる軟膏と痛み止めを大量に渡し、この世界でも作れるリウマチの進行を遅らせる薬のレシピを渡した。
「先生これは薬のレシピかい?」
「えぇ、薬が切れた後、薬を作れる人にその薬を作ってもらえるように依頼してください、それが自分に出来る精いっぱいの事だと思うので」
「先生、公開されている物を除いて、製薬のレシピは秘伝中の秘伝と言われていますよ。そんなに簡単に他人に渡してはダメですよ」
「そう言われても緊急時ですから……」
「そうさね、分かった誰にも見せず自分で作るとするよ、先生今までありがとうね」
「いえいえ、アンさんもお元気で」
そう言うといつもの大銀貨1枚をだして診察室を後にしていった。
その後も常連さんには当面の間の薬と製薬レシピを渡すとアンさんと同じような事を言われながら午前中の診療を終わらせた。
自宅にある物、診療所エリアにあるもの、そしてドワーフ達が集まる場所にあるものすべてアイテムボックスにしまえるものはしまい、外にでて診療所の建物をアイテムボックスにいれ、建物を受け取った時にジルさんから貰った魔石を出すと、建物が建っていた位置にある穴が魔石から出てきた土砂によって完全に塞がった。
道を歩いている人達は凄く驚いていたが、今は周囲を気にしている場合ではない。
「ユキ、自分の姿を変えるか消してくれる?」
「キュッキュ!」
自分の姿が変わったり消えたりしているのが分からないが、ユキが肯定したのを見ると多分やってくれているはずだ。
さて次はどうするか、ザックかジルの所に一言言いに行くべきだろう。
鍛冶ギルドか、建築ギルドかザック宅だな……。一番近いのは建築ギルドだな。
急ぎジルが居るであろう建築ギルドに向かった。途中すれ違う人々を見る限りどうも自分の姿が消えているらしく何度もぶつかりそうになった。
建築ギルドの戸を開けると、顔見知りのドワーフ達ばかりが居た。
中に居た人皆が、戸が開いたのに誰も居ない事に不思議に思っている様子だった。
「ユキ、幻影解除」
「キュッキュ!」
ユキが幻影解除してくれたと思われるタイミングで近くにいたドワーフの子が話しかけてきた。
「あれ兄ちゃんとユキちゃんじゃないか、こんな時間にどうした?親方にようか?」
「うん、急ぎでジルさんにつないでほしい!」
「わかったちょっと待ってってくれ」
そう言うと奥へ駆けこんでいった。そしてすぐさま戻って来た。
「こっち来てくれ、親方があってくれると」
「あぁ」
案内してくれるドワーフの後について行くと一つの部屋に通された。
「昼間っからここに来るとか珍しいな、何かあったのか?」
部屋に入るなりジルさんがそう聞いてきた。
「孤児院の院長から異端審問官がこの街に向かっているから逃げろと」
「なるほど、診療所は片づけたか?」
「えぇ、穴も塞ぎました」
「ならよい、おまえさんはザック宅に迎え、ワシはザックの所に行ってくる」
それだけ言うと、ジルさんは消えるように部屋を出て言った。
結局ザック宅に行くのかと思いながら向かうと、すでにザックがいた。
「入れ事情は聞いている」
あれ?おかしい、ジルが建築ギルドから鍛冶ギルドにいって事情を説明してザックがここにいる……、もしかしてジルさんのスキルが関係しているのかな?
久々のザック宅に入ると。
「こっちだ」
案内してくれたのは窓のない部屋だった。
「これからわしらも異端審問官の位置や狙いを探るからしばらくここに居てくれ、廊下に出てもいいが決して明かりを灯すなよ」
「わかりました」
その後、廊下のカーテンから漏れる外の明かりをみていると、夕方、夜となったのにもかかわらずザックが戻ってくる気配がなかった。
仕方なく案内された窓のない部屋にベッドを出しユキと共に眠りについた。
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