【完結】婚活に疲れた救急医まだ見ぬ未来の嫁ちゃんを求めて異世界へ行く

川原源明

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放浪の旅の始まり

第48話 レビン村のなりたち

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 テントやらを設置し終えるころには、日が暮れ始めていた。

 ミィナをはじめ集落に住んでいる獣人達が自分たちに関心をもったらしくちょいちょい話しかけてきた。

 気さくでいい人たちだなぁとか思いながら相手をしていた。

 住民たちと話していると歓迎会の準備が終わったらしく。

「誠明とユキちゃん準備が出来たから広場においでよ」
「ほい」「キュィ~♪」

 ミィナの後について行くと中央に大きな焚き火が炊かれ周囲に様々な肉料理が並んでいた。

「誠明、ユキちゃん!ようこそレビン村へ!この村の名物マウントディアの肉料理さ、じゃあカンパーイ!」
「「「カンパーイ」」」

 そういや、ガラドゥの町でディア系の魔物とか言っていたな、今の所一度も遭遇してないけど。

 ユキはいつの間にかミィナや他の女性陣の所に移動して何やらおしゃべりしている様子だった。

 自分は村の男衆と自分が元居た世界の話や、自分が持ち込んできたお酒を振舞ながら交流を楽しんだ。

 しばらくすると、

「よぉ、楽しんでるか?」

 後ろから声かけられたので振り向くと、そこには昼間に虫垂炎の手術をした男がいた。

「えぇ楽しんでますよ。ここの肉料理美味しいですね」
「だろう?この村の自慢だからな、そういや自己紹介してなかったな俺はロッジってんだよろしくな」
「えぇ、自分は伊東誠明です。よろしくおねがいします」
「あぁ、ところでお前さんはなんでこの道を通ってんだ?海岸沿いの大通りを回れば良かろうに」

 ん~正直に話すべきかな?

「教会から逃げてるんですよ」
「あぁ、さっきの手術とか知識のせいか」

 瞬時に察してくれたことに驚いた。

「わかるんです?」
「まぁな、お前さんが横に建てた見慣れない布の家や人体の知識とかを考えれば必然と迷い人だってのがわかる」
「はぁなるほど」
「昔ここも流行り病に襲われたとき聖女様が来てな、その時のも見慣れぬものを持ち込んでいたからな、それで病の対策を教えてくれたんだとよ、ヤギの乳のバターやチーズもその時聖女様から作り方を教えてもらったんだとよ」

 ガラドゥの酒場でも聖女が寄った話をしていたな。

「どんな人だったんです?」
「さぁな、俺が生まれる前の話だからな親父なら知ってるかもしれんが……」

 そんな話をしていると、ミィナとユキが駆け寄ってきた。

「長!ユキちゃんが魔物から獣人になるお話聞きたいんだって!」
「その話か~俺は詳しくないからな、親父なら何か知ってるだろうが……」

 親父なら知ってるだろうがってなんで?

「ロッジさんのお父さんなら知ってるってどういうことです?」
「長のお父さんはこの村の第1村人なんだよ~、それに元はブラックベアって魔物だったんだって」

 まさかの獣人化した本人だったとは。

「自分も知りたいですね」
「ん~ここから10日ほど歩くと、山の尾根の集落に着くからそこで親父に聞いてくれ」
「長~馴れ初めとか話してあげたら~?ユキちゃん興味あるみたいだよ」
「まぁそれ位なら、もう何年前なんだろうな、カラドゥ北の森で親父がブラックベアの子どもだった頃におふくろと出会ったんだとよ、当時親とはぐれたところをマウントディアに襲われ怪我をしてて動けなくなっていた時、子どもだったおふくろに見つけてもらい手当をしてもらったんだと」
「ブラックベアってクマの魔物ですよね?クマの子どもを手当てしたんですか?」
「あぁ、おふくろ曰く魔物とはいえ辛そうに鳴くブラックベアの子を見捨てる事ができなかったんだと」
「誠明、あんたも同じじゃん、ユキちゃんから聞いてるよ怪我して動けないところ助けてもらったって」

 そう言えばそうでした。
 でも狐とクマじゃ違くない?自分だったら手当するか不明なんだけど……、だってクマだよ!?

「話をつづけるぞ、おふくろは親父を町の近くの洞穴に隠しておふくろは毎日のように餌になる物もって行ったりけがの手当てをしてたんだそうだ、ただな数年たつと親父の身体も大きくなり洞穴で隠し通すのが辛くなってな、その時おふくろが決断した答えがカラドゥの町を離れて親父と共に生活をしようって思ったんだよ。当時このあたりは今みたいな道をなくてな人が来るような所じゃなかったんだ、人が来ないって事でおふくろはカラドゥの町を出て親父と共にこの先の集落に住み始めたんだよ」

 人目を避けての生活か、過酷そうだな。

「だがな、2人の生活もそんなに長く続かず、おふくろを捜索していた捜索隊に見つかるんだ、見つかったおふくろは親父を殺さないように懇願したそうだ、結果として町の中にブラックベアはさすがに無理だって事で、おふくろの家族は、この地での生活を苦にしない獣人達に見張りを依頼したんだと、それがこの村の出来た経緯だな、ユキが知りたがってる馴れ初めはそんなとこだ満足か?」
「キュッキュ!」
「じゃあもしかしてさっき言ってた尾根の集落はロッジさんのお父さんとお母さんが住む為の家で、ここは見張りで来た獣人達の住居だったってことですか?」
「そう言う事だ、親父がどういう経緯で獣人になったかは知らん、本人も何で獣人になったのか分からないみたいだったからな」
「ヤギとかは当初から?」
「あぁ、元々このあたりにヤギが居たらしい、羊のほうはここに来た奴が持ち込んで増えた結果だが」
「食には困らなかったんですね」
「まぁな、マウントディアなんてそこら中に居るからな、ただ昨日今日と連日見かけないとか珍しいが」
「そういえばそうですね~私もカラドゥの町に行って戻ってくる間1度も魔物に出くわさなかったし」
「そいつは妙だな、なにがあったんだ?」

 あ、思い当たる節がある。
 
 カラドゥの町を出るときに結界魔法を唱えている、きった覚えもないからもしかしたら?

「カラドゥの町出るときに結界魔法を使ったんですけどもしかしたらそれですかね?」
「それだろうな、結界切ってくれないか?俺たちが飢えちまう」
「うっす……」

 結界魔法を切るイメージをした。

「おまえさん、光魔法の使い手か、手術中も浄化唱えてたな」
「ですね」
「そうか、結界魔法は術者本人が魔物から認識されれば効果あるが、認識されなかったら効果ないらしいからな気を付けろよ」

 使い方を知らないからイメージだけで使っていたが、知っている人がいた。

「そうなんですか?」
「あぁ、聖女様がそんな事を言ってたらしいからな」

 ん~認識されずに襲われる事ってどんなときだろう?なんて思っていた。

 ロッジの手術から1週間経過観察と思っていたが、術後3日目には吻合した部位が綺麗につながっていたりと驚いたが、予定していた1週間を獣人達と家畜の世話をしたりマウントディア狩に同行させてもらったりと楽しい1週間を過ごした。

 ザックに作ってもらった剣は役に立つことはなかった。

 周囲に促され2m近いマウントディアの前に立ったが腰は引けて結局他の人に任せてしまった。魔物狩は向かないと改めて思いながら、他の人が狩ったマウントディアの解体を素早く済ませていた。

 一方のユキはというと、ミィナをはじめとする獣人達に色々なアドバイスを貰いながら幻影魔法を使い狩りをしていた。大岩に突進させ戦闘不能にしたり、同士討ちをさせたりと誰も手を出さずとも単独で数頭討伐したり、夜はミィナ達女性陣と遅くまで交流したりしていた。

 そんなこんなんな1週間が過ぎロッジの経過も良好だったため集落を出発する日になった。
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