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願いを叶える薬

第70話 船長

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 買い物から戻ると、副船長のマリベルが甲板でのんびり寛いでいた。

「すいません戻りました」
「戻ったか早かったね」

 そうなのか?もう日も落ちてるし遅くなったと思っていたが。

「一応120人30日分を買ってきました。どこに置いておけば?」
「アイテムボックスに余裕があるならそのまま持っててくれ」

 アイテムボックスに余裕があるかどうかは分からない。そもそも上限なんてあるのかな?と思っているくらいだ。

「はぁ、わかりました。あとで厨房に案内してくれます?中を見てみたいので」
「あぁ後でな、さっそく船長に挨拶しにいこうか、一応乗せてもいいと許可はもらってるよ」
「そうなんですね」
「じゃあ行こうか」

 そういうと甲板後方にある部屋に来た。メイン甲板からだと3階部分になるのかな?

「マイアー医者が帰って来たんで連れてきたぞ」

 と大きな声で一言告げるとマリベルが扉をあけ中に入って行った。

 ノックとかいらんのかな?中から返事来てない気がするが?なんて思いながら後に続いた。

 部屋に入ると20代前半位の金髪のストレートが綺麗な美人がいた。

「誠明、こちらロンベル商会副会頭のマイアだ、マイアこっちがさっき話した医者の誠明」
「これから帝国まで、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いしますね」

 喋り方も柔らかい感じで優しそうな人だ。

「そういや、誠明が診た6人だが皆元気に夕食を食べに出て行ったぞ」

 もう元気になったならよかったかな。

「それであんたの部屋だが、厨房裏と6人が居た部屋どっちがいい?」
「ん~明るい方がうれしいです」

 正直6人が居た部屋は広くても暗かったし。

「んじゃ厨房裏の部屋だな。船の先端部分だからちょっと狭いが大丈夫だろう、マイアこいつを連れてってからでいいか?」
「えぇ、そのころには何人か戻ってくるでしょうし」

 んどこか行くのかな?

「どこか行くんです?」
「酒場だよ、見張りするやつが居なくなったら問題だろ?だから交代で船を降りてんだよ」

 なるほど。

「なら、ドワーフ達が好んだ異世界の酒飲んでみます?」
「ほぉ、異世界の酒ってあんた迷い人か」
「そうですね」
「なるほど、それで栄養とか言う知識もあるのか、だそうだマイアどうする?」
「ん~そうですね~それでしたらお酒だけじゃなく、あなたが居た世界のおつまみもお願いしていいです?」
「えぇそれ位でしたら」

 ユキのネズミ討伐の褒美もあげなきゃいけないしちょうどよかった。

 その後3人で厨房のあるところへ向かった。

 甲板前方に1階分の段差がありその中が食堂と厨房だった。

 食堂は30~40人程が入れるそこそこの広さを誇っていた。

 そして肝心の厨房だが、なんというか……汚い……使ったら使いっぱなし状態だった。

「えっと……?」
「まぁさっきも言ったが樽からそれぞれ取って食べるようになってたからな……、だれも厨房に入らなくなってな……、片付けるやつが居ないんだ……」
「そうですね、私もあまり掃除とかは得意ではなくて……」

 これは酷いネズミとかが繁殖しそう……。むしろ厨房で料理することが出来なくなったから樽から直接取って食べてるのでは……?

「えっと片付けてからでいいですかね?さすがにこの環境で食べるのは……」
「まぁそれ位なら……なぁ?」
「そうですね……、他に誰かいましたっけ?」
「いや……」

 どうやら船長のマイアと副船長のマリベルしか今は居ないらしい。マイアは援軍を頼もうと思ったのだろうなと思った。

「ちゃっちゃとかたずけましょ」

 片付けてて思った。

 海上だと水も貴重な資源だという事に。持ち込んだ無限に使える天然水を使い厨房のシンクやらコンロやら壁やら全部を綺麗にした。

 途中で水婦たちが手伝ってくれたことで3時間程掃除をしてようやく満足のいくレベルの綺麗な厨房と食堂になった。ネズミが全く居なかったのはたぶん買い出しに行く前にユキが掃除してくれていたからだろう。じゃなければネズミにとっては天国の様な場所だったはずだ。

「はぁ疲れた~匂いも大分ましになったな」

 まぁ生ごみ臭で酷かったからな……。

「そうですね……」

 マイアもマリベルも片付けでお疲れの様子だった。

 ふと思った。最初に浄化使えばもっと楽に片づけられたのでは?と。

「浄化」

 思い出したついでに、仕上げ浄化をすると。

「浄化使えるなら最初に使ってくれよ!」
「いや~浄化があるのを忘れてて……」
「忘れないで!最初に使ってればもっと早く終わったと思うよ!」

 まぁそれは自分も同感だ。

「まぁおそくなったので簡単なつまみを作りますね」
「誰のせいだ……」

 自分のせいじゃないと思う、汚れたままにしていた人が悪いと思う。

 ユキの御褒美用のビーフジャーキを皿に並べ、持ち込んだ食材を使ってピリ辛蒸し鶏やウィンナーなんかをだした。

「すごくいい匂いがするな」
「そうですか?」
「あぁ、これなんかおいしそうだ、早く酒を!」

 マリベルがすぐにでも食べたそうなので、ビールやチュウハイ、焼酎に日本酒といろいろ並べてみた。

「どれでもどうぞ」
「どれにするかな~」

 とご機嫌なマリベル。

「私は甘いのが良いですがありますか?」
「んじゃチューハイですかね、ここをこうやってやると開くので」

 缶チューハイを1本マイアに渡し、自分も手に取った缶ビールをつかい開け方を教えた。それを見ていたマリベルも缶ビール手にして“プシュ”と難なく開け一気に飲んでいた。

「ぷっはーいいねーこれエールと似た感じだな~」
「良い飲みっぷりですね~」
「そうか~?」

 初めて飲むであろう物を一気飲みとか警戒してないのかななんて思っていた。

 一方マイアはマリベルと違いちょこちょこと飲むタイプのようで少し飲んではおつまみをつまんでいた。

 その後2人のリクエストに答え追加でおつまみを出しながら自分も久々のお酒を楽しんだ。

 そして翌朝チュリフを出航した。
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