【完結】婚活に疲れた救急医まだ見ぬ未来の嫁ちゃんを求めて異世界へ行く

川原源明

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人の姿になったユキ

最終話 エピローグ

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 ユキと一つになった翌日の夜、いつもの2階の飲み会フロアで、国王クロンやザック、ジル、ナンニャさん達ドワーフのみんなが見守る中、自分とユキは正式に夫婦になった。

 一番印象的だったのが、ザックが一人娘を嫁に出したかのように涙を流していたことだった。他のみんなは笑顔だったのにもかかわらずザックだけが大号泣だった。

 翌年にはユキが白狐獣人の男の子と、さらに翌年には自分と同じ黒髪黒目の女の子を出産した。

 職場の病院の方も、内科医としてライさんを迎えた。自分は手術がある日は病院にいるが、ない日は、ユキと共に学校に行き後進の育成に携わった。

 ロアナとモアナの姉妹だが、光と闇の精霊と一緒に、レントゲン、MRI検査が出来るようになった。水の精霊とは、尿検査や血液検査出来るようになる等、精霊と共に行う事で、医学が著しく発展した。

 その結果として大陸中に最先端医療が受ける事が出来ると知れ渡り、大陸内外と遠くからわざわざ受診しに来る人達が増え、王都クロットだけではなく、ドワイライフ国内が賑わいを見せた。

 ザックは弟子たちと共に、様々な医療器具や、人工血管等の様々な道具作成を行うことになり、日々忙しく過ごしている。

 ナンニャはユキと一緒に子どもの面倒を見てくれていて育児を手助けしてくれている。

 クロン王とジルさんは、国内に訪れる人が多くなったことにより日々忙しくしているようだが、夜の集まりには毎回参加している。



◇◇◇◇◇◇

10年後のとある日の休日

「誠明~」「ぱぱ~」

 ユキと娘のチヅルが2人そろって自分が寝ている布団の上にダイブしてくる。

「もうちょっとだけ寝かせて……」

 正直、国内外からの患者が大幅に増えて手術の無い日が珍しい位になっている。後任もある程度育ってきているので簡単な手術は立ち会い程度にはなってきたが、昨日は2件の手術後に大動脈解離の急患が来て急遽人工血管置換手術を行ったせいで夜遅くまで仕事をしていた。

「布団で休んでいる時間がもったいないよ!お出かけしようお出かけ!ザックとハクは先に森に行っちゃったよ!」

 息子のハクはザックに弟子入りして色々な医療道具・武器作成をしている。時々泊りがけで魔物狩に行っているのを知っている。祖父と孫の様な関係になっていた。

 今日はザックも休みだからという事ですでにザックの所に出かけて後で2人と合流する事になっている。

「パパいくよ!起きて」

 そう言って娘のチヅルに駆け布団を取られた。

 ぬくぬくの安らぎの時間が終わってしまった。

 残念に思いながら身支度をして3人でザック達がすでに言っている王都の近くにある森に出かけた。

 森の中にある開けた場所に来ると、既にザックとハクが狩を始めていて近くには仕留めた獲物が置かれていた。

「あ~もう2人とも始めてる~」

 ハクはユキのスキルをそのまま受け継ぎ、チヅルは自分のスキルの絶対健康以外をそのまま受け継いでいた為、ユキ、ザック、ハクは戦闘要員だが、自分とチヅルは非戦闘要員(解体係)だ。

 ユキが自分ら非戦闘要員の護衛を務め、自分とチヅルで解体をしていく。

 チヅルもすでに何度かやっている為8歳なのに十分な解体技術を持っている。父親として将来外科医になってくれればなんて思っているが、進路は本人の意思に任せたいとも思っている。

「ほれハクそっち行ったぞ」
「わかった!」

 ハクは自作の武器を使いながら魔物を仕留めた。

 ユキは息子を見ながら、

「ハクやるじゃん」
「っふん」

 当然とばかりの反応で返していた。

 ザック曰く、早く鍛冶師兼冒険者として1人前になりたがっているという事は聞いている。獣人だから独立心がどの人種よりも高いと聞いていた。ユキはそうだったけ?と思ったのは内緒だ。

 戦闘技術なんて自分もユキも持っていないし、ユキは人になってからちょいちょい狩しているけどザック曰くC級かB級らしい、自分もユキもやりたいようにやらせる方針なので、ザックに判断を任せている。

「パパ終わった!」
「お~!」

 綺麗に解体を済ませたチヅルの頭を撫でてやる。

「ふっへへへ」

 チヅルは照れながら抱き着いてくる。

 チヅルはユキに似て結構甘えん坊だ、自宅で寛いでいるとき膝の上に乗って来る事が多い、時々ユキと自分の膝の上争奪戦を繰り広げている。

「そろそろ良いだろう。解体の練習でもしてこい」
「はいっ」

 ザックに言われハクもこっちに来た。

 オークやホーンラビットにブラックウルフ合計10数匹、すでに大半を自分とチヅルで解体を済ませているが、残り2匹の獲物の解体はハクの練習用、解体の仕方を教えるのは自分の仕事だ。

「大丈夫か?」
「あぁ」

 ハクはチヅルと違って細かい事は苦手意識があるようで、解体も結構雑な所があり、ちょいちょいザックに怒られている。

「にいちゃん、それ以上深く入れると臓器まで切れちゃうよ!」
「うっせ」

 チヅルの注意もむなしく、ハクは内臓を傷つけた。

「あ~あ」
「うるさいな~」

 内臓破ったら後処理にひと手間加わるからな、実際やらないでほしいが、

「ハク、感触を確かめながらやりな」
「あぁ」

 自分とチヅルは触診があるから簡単だが、触診がないハクは結構苦戦している。

 解体ナイフを取り出しハクに見本を見せる。

「魔物によって臓器までの厚みが違うから、突き抜けた感があったら少し引っ込めて引きな」
「ん~そういうがなぁ、解体屋にまかせればいいんじゃね?」

 確かの冒険者ギルドには解体専門のカウンターがある。どうしてもだめならそっちでもいいと思うが、教えてほしいと言って来たのはハク自身だ。

「ハクよ、お前さんなら出来るようになる。誠明の言うこと聞いて精進せよ」
「はい!努力します!」

 ザックの言う事は本当にちゃんと聞くな。

「誠明よいつものいいか?」
「あぁ、はい」

 アイテムボックスから缶ビールを1本取り出しザックに渡した。

「すまんな」

 缶ビールを渡すとすぐに開けて一気に飲み干していた。

「いえいえ、いつもありがとうございます」
「いやなに、孫が出来たみたいで楽しいからなかまわんよ、手土産はこんなもんで良かろう、そろそろ村にいくか」

 確かに手土産としては十分だろう、ハクの解体が終わるのを待ち、村へ向かって出発した。

 夕方、目的地のとある村の入口が見えてきた。

「ウガウガ」

 村の入口でオウガ族の青年が出迎えてくれた。
 この村は魔物だが、人と共存を選んだ魔物達の集落になっている。ユキと結婚してしばらくした後に言語理解を持ったオウガと出会いユキがコミュニケーションをとった事がきっかけで交流が始まった。今では国に保護された村になっている。

「「こんばんは~」」

 自分とチヅルは挨拶をしたが、ユキとハクは幻影を使って相手と交流しているらしい、自分には見えないし聞こえない。

「ウガウガ」

 オウガの青年は笑顔で答え、村の中に入るようにジェスチャーで伝えてきた。

「行こう!行こう!今日は美味しいお魚が入ってるんだって~」

 オウガの青年から聞いたのだろう、ユキが内容を教えてくれた。

「ほぉそれは楽しみだ、刺し身が食べたいのぉ」
「いっぱい用意してあるみたいだからあるんじゃない?」
「そっかそっか、誠明よ今夜は刺身に合う日本酒で頼む」
「了解」

 自分も楽しみだ、久々の刺身だ。

 その後、宿泊予定の温泉宿に移動し、オウガ族だけではなくオーク族やゴブリン族らの人型の魔物だけではなくウルフ系等の獣系の魔物も数匹村の中で見かけた。

「なんか増えてません?」
「増えてるな」
「さっきの兄ちゃんが~この前10匹位のブラッドウルフが来たんですよって言ってた」

 自分とザックが話していると、ハクが状況を教えてくれた。

「ほぉ」
「手土産多めでよかったですね……」
「だな、この村ももう少し大きくせんといかんな、手狭になってきておる」
「ですね、いくら温泉と海が売りでもね」
「帰ったら王に報告だな」
「そうですね」

 そんな話をしつつ宿に到着した。

 夕食まではまだ時間があるようで、宿の人から温泉を勧められ先に温泉を堪能する事になった。

 オークの女将さんの案内で温泉へ移動すると、貸し切り温泉らしかった。

「あれ?ここでいいんです?」

 と尋ねると、オークの女将は言葉が通じてるのか笑顔で頷いていた。

「案内ありがとうございます」

 深々とお辞儀をしてオークの女将は去っていった。

 脱衣場で服を脱ぎ、浴場に行くと海が見える露天風呂だった。

 早く湯につかりたいという気持ちを抑えつつ軽く湯を浴び、身体を洗ってから中に入ると。

「へぇ~絶景~」

 本当に絶景だった。

 沖合を走行する帆船、水平線と遥か遠くに陸地が見えた。

「いい景色だよね~」

 背後からユキの声が聞こえ、振り返るとそこにユキがいた。

「あれ?ハクとかチーは?」
「ザックと一緒にお風呂いってるよ~、ザックとチーちゃんがたまには2人でのんびりしてきなってさ」

 ザックは分かる。そう言う気づかいするのは前からだったから、チヅルも?

「チーもなの?」
「うん~うちの方が誠明の事好きだっての知ってるからね」

 娘と張り合うってどうなのと思ったが、ザックとチヅルの心遣いに感謝した。

 ユキも体を洗ってから、浸かっている自分の横にきた。

「久々だね~2人でこんなにゆっくりできるの」

 まぁ確かに2人が生まれてからはあまりゆっくりできてないと思う。

「そうだね」
「ね~誠明」
「ん?」
「うち幸せだよ~誠明と一緒になれて、ハクとチーと一緒に過ごせて」
「うんそれは自分もだ」

 ユキと結婚できた事もそうだけど子どもたちが生まれた事で日本に居た時以上に毎日が充実している。

「シーザーがね、誠明がどんな選択肢をとっても、うちと一緒になる運命だったんだっていってた」

 だれだっけ?

「シーザーって?」
「エンシェントドラゴンの人」
「あぁ」

 そんな名前だったっけか?

「え、もしかして最初自分がユキを見捨てるって選択肢とっても?」
「え~見捨てる事あったの?」

 いや多分見捨てるって選択肢は絶対にとらないと思うが、この世界に来るときの年齢とかそのあたりでってことかな?

「まぁ見捨てるって選択肢はなかったかな」
「びっくりした~」
「もしかしてだけどさ、自分がこの世界に来ることになった理由って、ユキと出会う事と、この世界の破滅から逃れるためだったのかな?」
「そうだよ、誠明がこの世界に呼ばれた理由はこの世界でペストが蔓延して滅ぶ未来を変えるために呼ばれたんだよって言ってた」
「そっか」

 ようやくこの世界に呼ばれた理由が分かった。

 創造神ユスチア様に“ユスチナ様から自分に対してやってほしい事とかあるんですか?”と聞いたときに“特にないですよ、好きに生活して私の世界を楽しんでもらえれば”と返された。

 あの時既に自分がペスト対応する事が決まってたのだろうか?

 まぁ、マバダザに居るときにペストが蔓延していたら否応なくペストの対応はしていたと思うが、こずえさんはコレラから守る為、自分はペストから守る為、次この世界に来る迷い人も何かから守る為に呼ばれるのかな?

 今度は自分たちで乗り越えられるように対策していこう。

 きっとそれも自分のなすべきことなのだろうから。
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