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第7章 帝国内戦

第79話 犠牲者の無い戦争に!

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「エステルが……?」
「えぇ、精霊経由だと思われるので本当の事かと……」
「そう……」

 言葉を失っているようだが、そこまで驚いている様子でもなかった。

「もしかして思い当たる節があったりするのかな?」
「えぇ、学生時代の事なんだけど、あの子が入学して1年ほどしたときに、目が赤く光ってる事があったんですよね」

 それを聞いて思い出したのは、グムンド辺境伯の所に囚われていたエルフの事だ、彼女も真っ暗闇の中で目が赤く光っていた。

「目が赤く光ってるのって悪魔なの?」
「違いますよ、悪魔憑きの初期症状ですよ、何らかの負の感情が爆発したときに現れるんですよ」

 すると、あの時のエルフは、横に居たエルフの死が引き金だったのだろう。

 あの時もふもふ感が無くなったって事は恐らくユキが何らかの対処をしたという事だろう。

「そうなんだ」
「えぇ、あれから何も対処しなかったんですね……」
「自覚とかはあるんですかね?」
「頭の中に声が響くと言われていますね」
「どんな?」
「そうですね、具体的な事はわかりませんが、力が欲しいか?とかそう言った内容が多いそうですよ」
「それを拒まず受け入れたら……」
「えぇ、悪魔憑きになり自分自身が食われて行くそうです。最後は悪魔に体を乗っ取られると言われていますね」
「そうなんだ」

 シーファが純粋な悪魔になっていると言っていたから、乗っ取られているという事なのだろう。

 問題は、この内戦の引き金を引いた悪魔の目的はいったいなんだ?

 この内戦を引き起こす事なのか?

「難しい顔してどうしたんですか?」
「いえ、今回の内戦の引き金を引いているのはエステルって子に入った悪魔だと聞いているのですが、悪魔の目的ってなんなんだろうと」
「それは戦争を切っ掛けに人々の負の感情を高める事じゃないかな?」
「仲間を増やすため?」
「じゃない?すぐに思いつくのはそれなんですよね」

 アリサの言う事も尤もだろう、自分の夫が、親が戦で死んだとなれば憎しみや悲しみの感情が湧いても不思議じゃない、それが募っていけばあちらこちらで悪魔が生まれても不思議じゃない。

 となると、この内戦犠牲者のない戦をするべきだろう……、問題はどうやって?

 一番の課題は、帝都からここに向かっている部隊の対処だが、川を堰き止めたりしたら確実に犠牲者が出る。

 となると、悪魔に魅了されている人々の目を覚まさせることになるだろう……、どうやって……?

「ねぇ、アリサ」
「うん?」
「悪魔の持っている能力が、異性に効果がある魅了なんだけど、どうやったら魅了って解けるかな?」
「ん~一般的に強い衝撃と言われていますね、他にも光魔法のクリアランスって魔法ね、後は薬品にも何かあると思うけど……」

 強い衝撃に光魔法、薬品か……、光魔法と言う部分で、全属性使えるファーファの事が頭をよぎった。

「アリサ、悪いんだけど光魔法の使い手を知らない?」
「もしかして、クリアランスで何とかするんですか?」
「簡単な手なら!」
「ん~光魔法というと、師匠と勇者位でしょうか?」
「師匠って、ファーファ卿の事だよね?」
「あれ?話しましたっけ?」
「アリサからは聞いたことないけど、ファーファ卿の姉シーファから聞いた」
「なるほど、そうです後は勇者位になりますね」

 勇者か、シーファとの約束を果たさなきゃならないからな……、

「ファーファ卿との面談って叶うかな?」
「ん~どうなんでしょうか?戦時中だし師匠の所はいくつもの貴族家を相手にしているので今は難しいんじゃないでしょうか?」

 となると、リンシェルに勇者のギルドカードとか手配書を借りて名前と顔を憶えて変身する方が早そうな気がした。

「帝都から来ている兵って、あとどれくらいでここにきますかね?」
「そうですね、4~6日位じゃないでしょうか?」

 時間はある。とりあえず鳥になって帝都を目指そう。

「わかった、ありがとう!」
「いえいえ、それでどこに行くんです?川を堰き止めに行く気じゃないですよね」
「そうだね、先に帝都に行ってくる!」
「またあのドラゴンになるんですか?」

 アリサのすぐ後ろにマリナが居るのにもかかわらず、内緒の事を口にした。

「アリサ……」
「ん?あぁ大丈夫です彼女は知ってますから」
「話したんですか?」
「えぇ、彼女は口が堅いですから大丈夫です」

 まぁ確かにマリナは口数は少ない方だと思っているけども。

「そうですか、あの姿は目立つので、鳥になって行こうかと」
「へぇ~!見て見たいです!」
「良いですけど、どこか人気のない所に……」
「それならこっちです!」

 そう言うと、アリサは歩き始め、その後にマリナと自分がついて行く形になった。
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